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2012年1月13日 (金)

夕月

 → http://www.youtube.com/watch?v=9VtSSmXCfxM&feature=related

 学生の頃――ということは、かれこれ40年以上も前のことだが、この「夕月」の譜面を見て、驚いたことを覚えている。

 歌い出しが半音だらけの歌なのだ。難しい、ゆらゆらした歌い出し。

 このビデオで黛ジュンさんが言っていたが、(だから)歌いだすたび「いまだにすっごい緊張する」のだそうだ。

 峡谷の向こうに、思いがけない線を――しかし、すっきりと描いて浮かび上がった、夕月のような歌い出し。

 どうしてこの歌が生まれたのか?

 実兄の三木たかしさんの作曲だが、私は三木たかしさんが妹、黛ジュンさんの歌いぶりをよくわかっていたから、この曲を書けたのだと思う。

 あの「天使の誘惑」を歌っ切った妹の声調をわかっていなければ、この曲の、最初から虚空にコブシを解き放つような……キラーパスを出すような歌い出しは書けない。

 このビデオで黛ジュンさんにインタビューしていた由紀さおりさんが、米国オレゴン州ポートランドの楽団、「ピンク・マティニ」をバックに、この「夕月」を歌って、高い評価を受けたことは、最近の音楽界の話題だが、→ http://www.youtube.com/watch?v=FB_9bDucsk8

 その由紀さんにしても、歌い出しは黛ジュンさんである。

 そういう声音で、そう歌うしかない歌――兄が妹のためにつくった、妹が歌える歌――それが「夕月」なのだ。

 私はかねがねこの歌が、ポップスの「般若心経」ではないか、と思っていたが、それも二河白道を突き進むような、この歌の歌い出しの、読経のような、ある種の宗教性によるものだろう。

 彼岸と此岸をむすぶような、「夕月」。
 それをつくって、いま世界からも高く評価される、ジュンさんの実兄、三木たかしさん――惜しい作曲家を亡くしたものだ。

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