〔いんさいど世界〕 中3いじめ自死……「遺書」と「リーフレット」
「中学3年生」といえば、日本の基礎教育の「完成年度」である。この最終学年で、小・中「9年」間の「義務教育」が完了。年明け3月の卒業式では「日の丸」を仰ぎ、「君が代」を歌って、輝かしい未来に向けて巣立って行く(…………ことになっている)
日本の文科省による「統制・管理教育」の「学年」は――4月にはじまり、3月に終わる「学年」は、こうして毎年、過ぎて行く。
全国一斉、一糸乱れぬ、画一的な、整然たる姿で……。
川崎市の「学年」も、こうして過ぎて行く(…………はずだった)。
何事もなく(いや、何事も表面化せず)平穏無事に…………過ぎて行く(はずだった)。
ひとりの男子生徒が死ぬまでは…………。
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一学期の後半の6月7日、市立中学の中3男子が自宅で自殺した。
「友人のいじめを救えなった」と、手書きの遺書を残していた。
神奈川新聞(電子版)⇒ http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1006100005/
友人も、自分も、いじめに遭っていた。
遺書には、自身の生い立ちを振り返る内容や、両親への感謝の気持ちなども書かれていた。
それから3ヵ月が過ぎた、今月(9月)4日、その学校の調査委員会が、「いじめ自殺」の調査報告書をまとめた。
報告書は――同級生や保護者からの指摘を受けてもいじめを見抜けず、報告体制にも問題があった教員側の対応などを含めて「学校全体がいじめ状態にあった」――と結論づけた。
神奈川新聞 ⇒ http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1009040035/
「学校全体がいじめ状態にあった」……そういう「学校全体のいじめ状態」の中で、中3の男子が自殺した。
友人を救えなかったことを悔いながら…………。
これを受け、川崎市の教育委員会は翌々日の6日、「市立の小中学校、高校、特別支援学校の合計172校の校長らを集めた臨時合同校長会議を開いた」。
神奈川新聞 ⇒ http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1009060045/
今後、1ヵ月を「児童生徒指導点検強化月間」と「位置づけ」、「教育相談」や「教職員研修」などを「実施」し、「いじめ問題の適切な対応方法などを示したリーフレットを全教職員に配布」して、「再発防止」に向けた取り組みを進める――そうだ。
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川崎市の教育委員会は恥を知るがよい。
「学校全体をいじめ状態」にし、一人の男子を死に追いやった、君たち、教育委員会の指導監督責任は、どうなったのだ?
「リーフレット」を配る?……
そこに君たちは、またも「人命の尊さを思い……」などといった、空疎な文字を――それも「活字」で並べ立てるつもりなのか?
そうして「再発防止」に向けた取り組みの中で、「学年」をやり過ごしてしまうつもりなのか?
「友人を救えなかった」男子が命を絶ったのは、学校の運営者である君たち教育委員会の責任である。
君たちがこれからも「教育者」を名乗り続けるのであれば、「友人を救えなかった」男子を「救えなかった」――いや、「救わなかった」責任を、真正面から引き受けるところから始めるべきだろう。
今後1ヵ月間にわたって「点検強化」すべきは、君たちのモラルであり、君たちの教育者としての姿勢である。
問題は「再発防止」ではない。問題は、それを起こしてしまった、ことだ。取り返しのつかないことを起こしてしまったことだ。
中3の手書きの「遺書」は、君たち教育者=教育官僚に対する、若い命の最期に綴った、抗議のメッセージをあることも、忘れてはいけない。
その子が苦しみながら生き続け、ついに離脱して行った「学年」の「生き地獄」を管理・運営して来たのは、君たちなのだから。