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2020-02-12

【フクイチ核惨事/未来浄土へ】(創作)「福島原発石棺・山地化プロジェクト――または馬猫山の話」

 海沿いのこの山に、「双熊(ゆう)山地」という正式名称がついたのは、今から150年前のことです。

 人工の山です。標高200メートル。双葉町から大熊町にかけての太平洋岸沿いに、この山は築かれました。

 そんな経過もあって「双熊山地」という、ちょっと発音しにくすいし読みにくい名前になったそうですが、ふつうは「原発山」と呼ばれています。

 そう、そこは昔、東電福島第一原発があったところ。跡地を埋め立てて築いた山です。

 沖縄の辺野古の海を埋め立てる予定の土砂も回ってきました。

 西側には、その山のすそ野を縫って、北(双葉町方向)と南側(大熊町方向)に、Y字形に枝別れした人工の川が流れていて、これも「双熊運河」と命名されました。
 史上空前の核惨事の現場に地下水が流れ込まないようにつくられたう回路です。

 ふつうに「原発川」と呼ばれています。

 しかし「双熊山地」、そして「双熊運河」には、あまり知られていないのですが、「馬猫山」とか「馬猫川」という別称があります。

 そして山のふもと、運河の分かれ目には、「馬猫大明神」という小さな祠が。ときどき、旅行者や地元の人が花を手向けて手を合わせています。

 でも、どうして福島第一原発を巨大石棺化し、土砂で覆って山と成し、迂回運河をつくって放射能汚染水の太平洋汚染を食いとめた世紀のプロジェクトに、馬と猫が関係しているのでしょう?

 その奇妙な取り合わせのいわれは何か?

 これは今やヤマザクラの新名所ともなっている「双熊山地」――いや、馬猫山築山をめぐる、脱原発にいのちをかけた人々の、その人群れのなかに生きた一組の老夫婦の、知られざる物語です。(続く)

Posted by 大沼安史 at 10:19 午前 |