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2016-04-28

〔チェルノブイリ30年 フクシマ5年〕◆ 『チェルノブイリの祈り』を書いたベラルーシのノーベル賞受賞作家、ベトラーナ・アレクシエービッチさんは、チェルノ4号機爆発の直後、被曝被災地に入った。原発火災のオレンジの炎は数マイル先からも見えた。混沌、軍用トラック……カラシニコフを持った兵士は、叫んだ。「何を撃ったらいいんだ」――。「戦争」さえ勝ち抜けるはずのソ連の体制は「被曝」に立ち向かうことができなかった。人間は、被曝する用意ができていない!

 ◆ そして彼女は――(まるで宣告するかのように)英紙ガーディアンの記者に向かって、(ほとんど唐突に)こう語っている。

 「文明はわたしたちに、あと20~30年の余生を与えてくれています。これに対しても、わたしたち準備ができていません。残りの生を生きる哲学を、わたしたちは持ち合わせていません。わたしたちが最終的に暗黒のなかに消え去る前の」

  “Civilisation has given us an extra 20-30 years of life. We’re rather unprepared for this. We don’t have a philosophy of later life, before our final disappearance into darkness,” she says.

◆ あと「20~30年の余生」……。

 これは「フクイチ核惨事」を同時進行で(被曝)経験中のわたしたちについても、言えることかも知れない。

 「核事故」とは、それほどまでに苛酷なものであり、苛烈なものであるのだ。

 「戦争」には「戦後」があるが、「核惨事」のあとに「事故後」は無いのかもしれない。

 わたしたちには残り「20~30年」を生き、(願わくは)生きのびる可能性を切り拓いてゆく、あたらしい「哲学」が、あたらしい常識が不可欠である…………。

 ベトラーナ・アレクシエービッチさんは(ほんとうはズバリ)そう言いたかったに違いない。

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 ★ ベトラーナ・アレクシエービッチさんが「チェルノブイリ30年」を前に、ベルリンで、英紙ガーディアンのインタビューに答えた。

 チェルノブイリの放射能も、フクイチ同様、臭いもなければ、触ることもできないものだった。

 放射能による被曝は「物理」。いくら訓練された兵士でも、「物理」を射殺することはできなかった。

 被曝に人間は立ち向かう準備さえなかった。

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 ★ アレクシエービッチさんのインタビューで読んで、原発事故は人間の対処能力をはるかに超えたものであることを、あらためて思い知らされた。

 戦争を戦える態勢にあった旧ソ連でさえ、たった1つの原子炉に負けたのだ。

 「原発災害」とは「戦禍」を超えるものであることが、チェルノブイリで、フクシマで証明された。

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 ★ ベラルーシ南部で育ったベトラーナ・アレクシエービッチさんの幼馴染、15人のうち、すでに10人が癌で亡くなっているそうだ。

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 ★ ベトラーナ・アレクシエービッチさんは、こうも語った。

 「わたしの両親が住んでいた村に行けば、結婚し子どもを産みたいと思っている若い女性たちに会うことができるでしょう。22歳……でも、もう遅いのです。彼女たちはみな、不妊手術を受けさせられたからです」

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 ★ いま、彼女が取り組んでいるのは2冊の本。1冊は「愛」、もう1冊は「老いる」ことをテーマにしているそうだ。(彼女はそう答えたあとに、上記の「20~30年の余生」発言をしている)

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 ★ 彼女にとって「人びとの声を書き残す」とは何か?

 こう答えている。

 「彫刻のロダンは石と格闘したように、わたしは時間と格闘しています。人生が置き去りにしたものを取り上げ、清め、そこからアートを取り出しているのです」

 「時間」との格闘とは、人間経験の保全の試みと言えるかも知れない。

 わたしたち日本人もまた、フクイチをめぐる人間経験を集め、清め、作品につくりあげる努力を重ねなければならないだろう。

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 ★ インタビューの終わりに――別れ際、ガーディアンの記者は、ベラルーシの独裁者、ルカシェンコに会う機会があったら、どんな話をしますか?――とベトラーナ・アレクシエービッチさんに尋ねた。

 彼女の答えはこうだった。

 「(自分の国だけでなく)ヨーロッパに目を向けなさい。社会に対して自由を与えるべきです。さもないと、この国は終わってしまいます」

 「世界に目を向けよ、自由を保障せよ、さもなくば、終わる」

 これは安倍首相に対して、言い聞かせなければならないことでもある。

 
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 〔★は大沼〕 ◎ 英紙ガーディアン Svetlana Alexievich: ‘Ten to 15 of my childhood friends from Minsk died of cancer. Chernobyl kills’
  (15日付け ルーク・ハーディング記者) ⇒ http://www.theguardian.com/books/2016/apr/15/books-interview-svetlana-alexievich-nobel-laureate-2015-chernobyl-30th-anniversary

 ・ Alexievich arrived at Chernobyl immediately after the explosion, on 26 April 1986, brought down reactor number four. The plant was on fire, its orange glow visible for miles. “It was a crazy situation,” she says. She discovered a “traditional Soviet system” geared up for war and unable to react to what had happened. “There was chaos, military trucks, soldiers running around with Kalashnikovs saying: ‘What do I shoot?’. You can’t shoot physics, or at radiation.”

 ・ You couldn’t see radiation with your eyes. You couldn’t smell it. It was intangible,” she says. “Humanity was unprepared for this.”

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 ・ So what now? Alexievich says she is trying “something new”. She is currently writing two books: one is about love, in which men and women recount their personal stories of life and romance; the other is about growing old. “Civilisation has given us an extra 20-30 years of life. We’re rather unprepared for this. We don’t have a philosophy of later life, before our final disappearance into darkness,” she says.

 ・  Rodin was once asked: ‘How do you make your sculptures?’ He answered: ‘I wrestle with stone.’ It’s the same with me. I wrestle with time. I take the waste that life leaves behind. I start cleansing it. I make art out of it.”

 ・ Alexievich has to go. Before she departs I ask her what she might say to Lukashenko, were they ever to meet? “I would tell him we have to look to Europe. He has to give freedom to society. Otherwise we’re doomed.” She is too much of a pragmatist to imagine her request would ever be acted on. “Of course, he won’t agree because he’s a dictator. That would mean he’d have to resign. Dictators never go of their own accord.”

Posted by 大沼安史 at 11:32 午前 |