〔夕陽村舎日記〕 ◆ 「オリオン・スルー」……?
わたしは45歳で新聞社を中途退社するまで、記者だった。
辞めてからも記者を自称し、20年以上、続けて来た。
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記者とは? ジャーナリストとは何か?
記者を他称・自称してきた、わたしとは何か?
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きょう、かかりつけの漢方医の待合室で、思わず膝を打った。
待ち時間に、米国のジャーナリスト、ビル・モイヤーズさんが、神話学者のジョーゼフ・キャンベルさんにインタビューした本(The Power of Myth)読んでいたら、そこに「記者・ジャーナリスト」の定義が書かれていた。
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ビル・モイヤーズさん 「で、そこに、自分が理解していないこと(things who doesn't understand )を説明するライセンスを持ったジャーナリストが出てくるわけですね」
ジョーゼフ・キャンベルさん 「ライセンスだけじゃないんだよ。ジャーナリストは、人びとのなかで(in public)自分を教育する義務を持たされているんだ」(12ページ)
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自分が「理解していないこと」でも、知った以上は、聞き込んだ以上は、それがどういうものであるか、(自分でわかろうとしながら)人びとにちゃんと伝える社会的な役割。
義務、ライセンス(社会的な免許)の持ち主。
それが記者、ジャーナリストだというのだ。
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なるほどと思った。
理解は最終的に、社会の人びとがすればいい。
そのために、聞き込んだことを、目撃したこと、読み齧ったことを、いわばナマのかたちで過不足なく、ウソ偽りなく、社会に伝える。
それが記者、ジャーナリストの務めであると。
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こうなると、「わたしは安倍首相の思っていることを理解しています」なんて顔の「NHKの政治部記者」なんて輩は、「記者」名乗る資格なし――ということになる。
つまり、「一億総活躍」なんてキャッチフレーズを聞いて、一発で理解できます、だなんて、「記者失格」の証でしかないわけだ。
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では、自分でも理解できないことを、どう伝えるか?
それには「自分はソレをわからない」ということから出発するしかないだろう。
世の中には自分の理解の範囲を超えたことがいっぱいあるのだ。
分からないことに着目し、問題の姿を切り取って、社会に伝えて行く。
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かんたんなことだ。
でも難しいことだ。
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たとえば、わたしについて言えば、つい最近、ある人から伝えられた「オリオン・スルー」という謎めいた言葉を、わたしはいま、まったく理解できないでいる。
オリオン? オリオン星座? スルー? 一掃? 完了?
それが、この日本に巣食う邪悪な者どもを一掃することであり、それが目下、進行中である、と実は(そこまでは)聞かされているのだが、いまのわたしにはまったく理解できない。
理解できないが、しかし、それでも、そういうことだそうです、と人びとに伝えるのが、(わたしが記者であるとすれば)わたしの役目になる。
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邪悪な者どもを一掃し、地球上から追放する「オリオン・スルー」、ただいま進行中!
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これをこのブログで、このブログを読んでくだっている数少ない読者のみなさんに伝えることで、わたしは記者として、仕事をひとつ終えたわけだ。
「オリオン・スルー」。
いま、何が起きているのか?
Posted by 大沼安史 at 12:20 午前 | Permalink