〔フクイチ核惨事 炉心溶融はなぜ回避されなかったか?〕◆ 東電、「徴候ベース手順書(初期の事故対応を定めた)」だけでなく、事故が深刻化したあとの対応を定めた「シビアアクシデント手順書(AMG)」も「ないがしろ」にしていた可能性! ―― 「吉田調書」で「(AMGを見たとか、参考にしたことは)まったくないです」と吉田所長が明言! 「対策本部」が「参照した」との記述も「政府・東電事故調」報告になし! ★ 東電、「手順書ダブルないがしろ」の疑い!
★ 雑誌『世界』の最新号(2月)で、フクイチ核惨事をめぐる驚くべき「新事実」が浮上した。
社会技術システム安全研究所主宰の田辺文也さんが、『世界』連載中の≪解題「吉田調書」≫(「第8回」)で、明らかにした。
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★ 2月号の記述は、東電がフクイチ現場でも本店の対策本部でも「シビアアクシデント手順書(AMG)」を「ないがしろ」にした事実関係の導入部にとどまり、具体的な問題点は次号(3月号)以降に持ち越されているが、それでも、こに明記された原因分析結果は、政府・国会事故調の解析のお粗末さを示してあまりある、衝撃的なものだ。
田辺さんの記述のいくつか、紹介しよう。
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◆ 東京電力は、初期の事故対応における手順書逸脱だけではなく、事態が深刻化した後の対応を定めた手順書(シビアアクシデント手順書)もないがしろにしていたことが、「吉田調書」からも読み取ることができる。炉心溶融に至った深刻な事態を前にしても、得意勝手なアドリブで事故対応に当たっていたことになる。
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◆ (田辺さんの精査・考究の)端緒となったのは福島第一原発の吉田昌男郎所長が、吉田調書で語っていた証言だった。……
全交流電源が喪失した時点でこれはシビアアクシデント事象に該当し得ると判断しておりますので、いちいちこういうような手順書間の移行の議論というのは、私の頭の中では飛んでいますね。
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◆ (吉田調書の「シビアアクシデント手順書(AMG)」に関する部分)
質問者 ……これ(AMG)を開いてちょっと見たとか、参考にしたということ は。
吉田所長 ありませんね。
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◆ この証言からわかるのは、炉心損傷後の状況において、対策本部が、手順書AMGを参照して必要な対応を指示するという基本的な役割を認識していかかったということだ。
では、対策本部の構成員がAMGを参照したかというと、それについての言及はない。政府や東電の事故報告書になかでも記述がない。AMGは参照されなかった可能性が高い。
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◆ ……東電はシビアアクシデント手順書もないがしろにして、そのうえでベント操作を行った可能性が出てきた。
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〔★は大沼〕 ★ 田辺さんによれば、東電はまず「徴候べース手順書」を「ないがしろ」にしたことで、「高圧で原子炉に注水する系統が機能している間に時機を得て低圧で原子炉に注水できる系統を起動し、その後原子炉を減圧することで原子炉注水を継続する」ことに失敗、「事故の深刻化を招いた」。
そして、今回、新たに、事故が深刻化したあとの対応を定めた「シビアアクシデント手順書(AMG)」も「ないがしろ」にしていた可能性が浮上!
手順書ダブルないがしろ!
東電は自ら「安全神話」というウソに紛れ、「原発」を甘く見て、いざ事故が起きたとき、「手順書」を参照するという基本動作も忘れていたことになる!
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★ そういえば(わたしは)、事故後、東京で会った経産省の元官僚が、悔しそうに、こう語ったことを覚えている。
「マニュアル通りにやっていればこんなことにならなかった」と(だけ)。
元官僚は田辺さんが指摘したことを言わんとしていたのかも知れない。
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◎ 参考 本ブログ既報 2015-11-29 / 〔フクイチ核惨事 キノコ雲爆発を起こした「MOX3号機」の炉心溶融は、東電が「事故時運転操作手引書(徴候ベース)」の指示にしたがっていれば、回避されていた可能性が高い〕◆ それも回避のチャンスは1回きりではなく、2度も! (◆ 2号機ではなんと3度も!) 田辺文也・社会技術システム安全研究所所長(工学博士)が突き止め、雑誌『世界』で発表! / 「東電……事故対応の(……)徴候ベース手順書の役割を理解していなかったことがうかがえる」と厳しく批判! 「役者が台本を無視し、アドリブを連発して、舞台を台無しに」
⇒ http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2015/11/post-fbca.html
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◎ 同 2015-12-18 〔フクイチ核惨事 2号機「逃し弁」問題〕◆ 東電が、なぜかいまごろ「分析」結果を発表 ―― 2号機のメルトダウンを「逃し弁」の部品劣化問題に矮小化するとともに、2号機・炉心損傷開始を「3・15午前1時以降」まで先送り??? 田辺文也さんの解析では、2号機でも「徴候ベース手順書」に従い対応していれば、炉心溶融回避の可能性! ★ 東電は対応ミスを「逃し弁」のせいにしている? 国会は第二事故調を設置し、徹底検証を行なうべきだ!
⇒ http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2015/12/post-3d74.html
Posted by 大沼安史 at 04:14 午後 | Permalink