〔フクイチ核惨事 2号機「逃し弁」問題〕◆ 東電が、なぜかいまごろ「分析」結果を発表 ―― 2号機のメルトダウンを「逃し弁」の部品劣化問題に矮小化するとともに、2号機・炉心損傷開始を「3・15午前1時以降」まで先送り??? 田辺文也さんの解析では、2号機でも「徴候ベース手順書」に従い対応していれば、炉心溶融回避の可能性! ★ 東電は対応ミスを「逃し弁」のせいにしている? 国会は第二事故調を設置し、徹底検証を行なうべきだ!
★ サムネイル写真は、福島第一5号機の格納容器内の「逃がし弁」(鮮明な写真は、下記・東京新聞の(朝日でななく)記事リンクをクリック)
〔★は大沼〕 ◎ 朝日新聞 事故時、最重要の弁動かず 2号機、高温・高圧で 福島第一原発
(17日付け)⇒ http://digital.asahi.com/articles/DA3S12121882.html?rm=150
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上記、朝日に記事によると、東電の分析結果は、こうだ!
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▼ (3月)15日午前0時過ぎから、8個ある逃がし安全弁を順次開けようとした。
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▼ 減圧できず(14日深夜以降、格納容器の圧力が高くなりすぎて弁を開ける力が不足。高温が続いたことで弁の気密性を保つシール材という部品が劣化し、窒素ガスが途中で漏れた可能性も)
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▼ しかし同午前1時ごろになって〔★なぜか〕一つの弁を(開く)操作をした際に減圧
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★ 東電はどうやら――「逃し弁」が「高温や高圧のために作動しなくなっていた可能性が高い」と主張、「原子炉の圧力を下げられなかったことで、原子炉への注水がうまくいかず、事態を深刻化させた可能性がある」とすることで、2号機メルトダウンを「逃し弁」の「不作動」のせいにしたいようだ。
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しかし、「社会技術システム安全研究所」を主宰する田辺文也さんのフクイチ事故解析(雑誌『世界』(12月号、≪解題 「吉田調書」 ないがしろにされた手順書(2) 戦略なき事故対応の結末≫ )によれば、2号機における低圧注水への切り替えのチャンスは3回あり、東電はそのチャンスをすべて生かせなかったという。
非常時の「徴候ベース手順書」に従った対応をとらなかったから、メルトダウンは起きてしまった、と。
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たとえば、「3月13日夕方」――。
その日、13日、午前7時半段階で格納容器圧力kPa〔g〕が計測されていた。
そのとき「徴候ベース手順書」を参照していれば、「急速減圧」の手順に移行しなさいとのガイド(指示)を知ったはずだ。
消防車消防ポンプが起動可能となり、「急速減圧」手順が要求する代替低圧注水系が使用可能になったのは、同日夕方。
このとき、「格納容器圧力高の徴候に基づき、徴候ベース手順中の『格納容器制御(格納容器圧力高)の項の手順をガイドとして対応していれば、2号機は炉心冷却を確保できて炉心溶融を回避できた可能性が高い」』――と田辺さんは指摘する。
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東電の発表によると、「14日深夜」までは「逃がし弁」は生きていた(東電は「作動」という言葉を使っている)のだから、田辺さんの言う通り、この「3月13日夕方」に、徴候ベース手順書通りの対応していれば、2号機メルトダウンは回避できた可能性は高い。
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東電の発表にある「15日午前0時すぎから、8個ある逃がし安全弁を順次開けようとしたが、減圧できなかった。午前1時ごろになって一つの弁を操作した際に減圧した」というのも――おかしな話だ。
8個のうちの1個(おそらくは8個目?)は開いたような言い方だが、「逃し弁」(少なくとも1個)は、その時点でも機能していたことになる。
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田辺文也さんの事故分析では、2号機は「14日17時〔午後5時頃には炉心が露出し始め、主蒸気を逃がし安全弁を開く操作による急激な減圧沸騰で原子炉の大量の水が蒸発し、18時(午後6時)22分以降には完全に露出状態となり、消防車による注水が始まる前に炉心損傷が始まっていたと考えられる」としている。
田辺さんの分析ではつまり、「14日午後5~6時の段階」で――すでに炉心が露出し始めた段階で、「逃し弁」を開けたことから原子炉の大量の水が減圧沸騰で蒸発してしまったことが炉心損傷を引き越した(メルトダウン開始)としている。
これに対して、東電の分析は「15日午前1時ごろ」としており、最大8時間の開きがある。
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東電には「逃し弁」問題にかこつけ、2号機炉心損傷開始を「15日午前1時以降にまで引っ張らなければならない、何か特別な理由」があるのだろうか?
米空母「ロナルド・レーガン」洋上被曝訴訟で、被曝のタイミング問題が焦点にでもなっているのだろうか?
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フクイチ核惨事は東電のご都合・自社分析にまかせてはならない大問題だ。
この徹底検証と総括なしに、他原発の再稼働は許されない。
国会は第二次事故調を設置し、事実関係の究明に乗り出すべきである。
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◎ 参考 東京新聞 福島2号機事故 悪化の一因 逃がし弁の作動装置が溶ける?
(17日夕刊)⇒ http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201512/CK2015121702000232.html
・ 東京電力は十七日、福島第一原発事故の際、2号機で原子炉圧力容器内の蒸気を抜いて圧力を下げる「逃がし安全弁」と呼ばれる弁を作動させるための装置の部品が、高熱で溶けていた可能性があると発表した。「原子炉の圧力を下げる作業が難航し、注水が遅れた要因の一つとなった可能性もある」としている。
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2号機では事故四日目の二〇一一年三月十四日、事故発生直後から原子炉に注水を続けてきた冷却装置が停止、消防車による代替注水を試みたが、原子炉圧力が高く水が入らなかった。
東電は圧力容器の蒸気を抜くため仮設バッテリーを使って八個ある逃がし安全弁を開く操作をしたが難航。
操作するうち、弁が開いて注水が可能になった。
これまで弁が開かなかった理由は未解明とされていたが、東電は、電磁弁のシール材が溶け窒素ガスが漏れ、逃がし安全弁が作動しなかった可能性があるとしている。
再稼働を目指す柏崎刈羽原発(新潟県)では長時間の使用に耐えられるシール材に交換する方針という。
Posted by 大沼安史 at 05:51 午後 | Permalink