〔夕陽村舎日記〕◆ 『栄冠は君に輝く』
今朝、岡山・吉備中央町のケーブル放送で、役場からのお知らせ・緊急放送を聴くため、NHK・FM放送(?)にラジオチャンネルを合わせていたら、甲子園の主題歌ともいうべき、あの『栄光は君に輝く』が繰り返し、流れた。
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聴いているうち、じじいで涙もろい、ぼくの涙腺が湿って来た。
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誰もが知る、古関祐而さんの名曲である。
「野球」が「敵性競技」でなくなった戦後間もなく、再開された全国高校野球大会のためにつくられた歌だ。
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聴いているうちに、気づいた。
この曲には、「♪ さくら、さくら」があり、「♪ 君が代」があり、スメタナの「♪ わが祖国(モルダナ)」があり…………そして何より、古関さん自作の、あの「♪ 長崎の鐘」に結実して行くものがあると。
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この曲には、戦時中、「露営の歌」とか「暁に祈る」とか、反戦歌に等しい軍歌を書いていた、古関さんの――敗戦=解放後の思いのすべてが……、いや、大正の頃、独学で作曲を学び始めた古関さんの青春の全てが込められている、と。
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この甲子園の歌に、スメタナの「わが祖国」がある、と聴いたのは―― そこにスラブ的な響きがあると思ったのは、ぼくの耳の錯覚ではない。
錯覚ではない、と思う。
古関裕而さんの恩師は、ロシア革命前のペテルブルク音楽院で学んだ、仙台出身の金須嘉之進(きす・よしのしん)。
帰国後、ロシア正教の聖歌をつくるなど、スラブ的な音楽の流れを日本に伝えた人だ。
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それにしても、『栄冠は君に輝く』の、なんという若いの息吹のすがすがしさよ。若いいのちの溌剌さよ。
第88回夏の甲子園で、当時18歳の夏川りみさんが歌った、この歌唱の、この一途な素晴らしさよ。
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古関裕而さんは、福島市の出身である。
仙台の金須嘉之進のもとへ通って、自学した作曲技法を進化させた人だ。
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100周年の甲子園の夏も終わった。
福島でも仙台でも……フクイチ被曝地、核惨事5年目の夏がそろそろ終わる。
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そういう国においても、未来へ続く若者たちの命の輝きは、断固として守られなければならない。
栄冠を若者たちに輝かせるために、何をなすべきか――古関裕而さんはこの曲で、甲子園のこの行進曲で、希望への一筋の道を、指し示している。
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『栄冠は君に輝く』は勇気と希望の歌だ。
Posted by 大沼安史 at 08:59 午前 | Permalink