〔大江健三郎さんは、護憲集会で、首相を、<安倍>と呼び捨て、<彼がアメリカ両院で話したことはウソだと思う>と言った!〕★ 安倍首相のウソは、たとえば、世界的なレベルでの戦争へのコミットである「積極的平和主義」(という日本語造語)を、米議会演説では、"Proactive contribution to peace based on the principle of international cooperation" と――「国際協力原則に基づく平和への率先貢献」と、真逆に言ったことである!
〔★は大沼〕
★ アベ首相は結局、「積極的平和主義」を、たとえば“positive pacifism”、あるいは“proactive pacifism”とは――つまり「平和主義(pacifism)」とは言わなかったのだ。
言えなかったのだ。
だから、米議会演説では、"Proactive contribution to peace based on the principle of international cooperation" と――国際協力原則に基づく平和への率先貢献」と言ったのだ。
この部分、政府発表の演説日本語訳では、こうなっている。
・ いまや私たちが掲げるバナーは、「国際協調主義にもとづく、積極的平和主義」という旗です。
繰り返しましょう、「国際協調主義にもとづく、積極的平和主義」こそは、日本の将来を導く旗印となります。
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★ 英語演説では「平和への貢献」といっておきながら、国民(国内向け)には、米議会演説で、持論の「(国際協調主義にもとづく)積極的平和主義」を語った!――と強弁する、安倍首相!
日本国民には常日頃、言いまくっているデマゴギー造語(つまり「平和主義」という言葉)を米議会では言わず、にもかかわらず、日本国民向けには「言った」という安倍首相!
これは米議会、そして日本国民に対する「2重のウソ」、ダブルの二枚舌である。
安倍首相は英語演説は、聞いているこちらが恥ずかしくなるほど、「舌の回らない」ものだったが、歴史的な「法螺(ホラ)吹き」に、連日の美食で鍛えられた「舌」も、さすがについて行けなかったのだろう。
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★ 安倍演説をたんねんに読んで行くと、羊頭狗肉というか、新発売された商品のCMのような嘘の毒気にあてられてしまうが、アベノスピーチからは、原発事故も、アンダーコントロールも、放射能汚染も、被曝も、侵略も、謝罪も、慰安婦も――都合の悪いすべてが消されていたことも気になる。
ダブル2枚舌の口先についたサルグツワの方は、しっかり機能していたわけだ。
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★ アベノスピーチの政府発表の「日本語(訳)」で、ほかにひとつ気になることがある。
以下のくだりを読んでいただきたい。
・ 1990年代初め、日本の自衛隊は、ペルシャ湾で機雷の掃海に当たりました。後、インド洋では、テロリストや武器の流れを断つ洋上作戦を、10年にわたって支援しました。
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わたしは、太字で強調した「後、インド洋では、……」の、この「後(あと)」という表現が気になるのだ。
この軽い若者言葉(口語=会話言葉)を、恥ずかしげもなく使う、その幼児性が――お気楽さが――その気味の悪い「あざとさ」が、ひっかかるのだ。
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★ 世界的な経済紙、英紙フィナンシャル・タイムズによると、安倍首相が米議会演説で、「日本の強力な農業ロビー」との戦いをにおわせながら使ったという、あの「量子論的飛躍」にしても、パチンコ屋の新機導入PRの宣伝文句のようだった。
アベというこの男には、一刻も早く、日本列島の地上から、大気圏外へ――宇宙の果てへ、飛び出して行ってもらいたいと思った人も多かったことだろう。
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★ 文章家の大江健三郎さんが、「アベ」を呼び捨てにしたくなるのも、「ウソを言った」と怒ったのも、当然である。
「アベ」はウソつきの政治屋であって、平和憲法を順守する義務を負った、この国の「首相」(の器)ではない。
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〔★は大沼〕◎ スポーツ報知 : 大江健三郎氏、安倍首相呼び捨て批判 「彼が話したことはウソだと思う」
(3日付け)⇒ http://www.hochi.co.jp/topics/20150503-OHT1T50146.html
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・ 横浜市の臨港パークで行われた「5・3憲法集会」では、ノーベル文学賞作家の大江健三郎氏(80)らが参加。
大江氏は安倍晋三首相を7度も呼び捨てにして「彼がアメリカ両院で話したことはウソだと思う」などと批判した。
・ 大江氏は「理不尽で景気のいい話ではないが」と切り出し、安倍首相が4月29日に米連邦議会の上下両院合同会議で行った演説について「日本が集団自衛権を用いて、世界で起こる戦争に対して軍事的な抵抗をすると、安倍ははっきり言った。しかも、そのためにいくつも法律を作ると言った。
しかし、安倍は国会で議員たちにはっきり説明していない。国民の賛同も得ていない」などと批判した。スピーチが熱を帯び「安倍首相」から「安倍」と呼び捨てになっていた。
続けて「安倍の考え方は世界的な宣伝として成功している。日本でも成功しつつあると思う」と指摘。80歳の大江氏は「こういう大きな集会で話すのは最後になると思うが、私は平和と命の尊厳を基本に日本国憲法を守り、生かします。集団的自衛権の行使に反対し、戦争のためのすべての法制度に反対します」と信条を訴えた。
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◎ 安倍首相・米議会演説
・(英語演説) ⇒
http://www.mofa.go.jp/na/na1/us/page4e_000241.html
・(日本語訳) ⇒
http://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/page4_001149.html
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◆ 参考 : 産経ニュース : 「すべて安倍のせい」と護憲派が横浜でスパーク 大江健三郎氏「米演説は露骨なウソ」 香山リカ氏「憲法使い切ってない…」
(3日付け)⇒ http://www.sankei.com/politics/news/150503/plt1505030023-n2.html
・ 次いでスピーチした大江氏は、安倍首相が4月29日に米上下両院合同会議で行った演説に対し「あまりにも露骨な嘘。だが(日米両国で)はっきりとした拒否の言葉が述べられることはなく、それをどうひっくり返すかが大きな問題だ」と断じ、会場からは大きな拍手が起こった。安倍首相が夏までの安全保障関連法案の成立に決意を示したことにも「安倍は日本の国会で(そのことについて)はっきり述べて、われわれ日本人の賛同を得たことはない」と強調した。
大江氏はさらに、この日配布されたパンフレットに書いてある「私たちは、『平和』と『いのちの尊厳』を基本に、日本国憲法を守り、生かします 集団的自営権の行使に反対し、戦争のためのすべての法制度に反対します」というメッセージを自身の考え方の根本にあると紹介。「自分がこれだけ大勢のみなさんの前で語るのはこれが最後」と語った。
憲法学者の樋口陽一東大名誉教授は、盟友だった俳優、菅原文太さんの「政治には2つの役割がある。ひとつは国民を飢えさせないこと。もうひとつ、絶対に戦争をしないこと」という“遺言”を引き合いに出し、「今の政治は憲法が目指してきた方向と何から何まで正反対の方向に日本を引っ張ろうとしている。憲法を壊し、自由闊達な言論を貶め、彼ら政治勢力自身の先輩政治家が作り上げてきたはずの戦後史そのものをないがしろにしている」と糾弾した。
Posted by 大沼安史 at 08:18 午後 | Permalink