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2014-07-02

〔集団自衛権・閣議決定〕 ◆ 朝日新聞が<ニューヨーク・タイムズ電子版は「日本は重要な一歩を踏み出した」と歓迎>と報道! ★ 原文記事に該当箇所、見当たらず!?

 ★ 朝日新聞は2日付けの夕刊(12面)で以下のように報じた。(太字&赤字強調は大沼) ◎ ⇒(朝日新聞デジタル) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140702-00000037-asahi-pol

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 ニューヨーク・タイムズ電子版は「日本は重要な一歩を踏み出した」と歓迎

 「長い平和主義国家では想像もできなかった大規模で高度な軍事力が使えるようになる」と指摘。

 「日本の安全保障のルネサンス。注目すべきはほとんど議論を呼ばずに平和憲法の解釈を変えたことだ」という専門家のコメントを紹介した。

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 ニューヨーク・タイムズが「歓迎」した!?

 タイムズの電子版で、まずそれらしき社説を探した。

 「歓迎」とは、同紙の評価である。新聞が新聞として評価を下すのは、その「社説」である。

 社説にあるかと思ったら、なかった。

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 「アジア・太平洋」ニュースとして、それらしき記事がひとつあった。

 Japan Announces a Military Shift to Thwart China

 (1日付け)⇒ http://www.nytimes.com/2014/07/02/world/asia/japan-moves-to-permit-greater-use-of-its-military.html?_r=0

 東京支局長のマーチン・ファクラー氏とワシントン支局のデイヴィッド・サンガー記者の連名の記事――解説記事でもなく、あくまで客観報道のストレートニュースである。

 そのどこに「ニューヨーク・タイムズが歓迎」と書かれているか?

 ない!

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 朝日の記事には、<「日本は重要な一歩を踏み出した」と歓迎>とも書いてある。

 「歓迎」はなくても、「日本は重要な一歩を踏み出した」というくだりくらい、原文記事にあるはずだと見込んで、またも目を凝らした。

 それも、ない。

  ★ 記事のなかで welcome は1回出て来る。それは、「オバマ政権は火曜日に歓迎すると言った」という部分のみで、ニューヨーク・タイムズが歓迎しているわけではない。記事はこの「オバマ政権は歓迎すると言った」のあとに、アベの動きは大統領への挑戦を提起するものだ」と書き、韓国との同盟関係、中国の緊張管理の面で、安倍政権がオバマ頭痛のタネになっていることを指摘している。

   The Obama administration said Tuesday that it welcomed Japan’s action, adding that it would aid the country’s armed forces to “do more within the framework of our alliance.” But the Abe government’s move also posed challenges for the president. His administration has struggled to patch up differences between Japan and South Korea, which is also bitter over Japan’s imperialist history, and managing the tensions with China may now prove more difficult than ever before.

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 それにしてもこれは一体、どうしたわけか。

 タイムズ電子版には、朝日の記者だけが読める特別な記事があるのだろうか?

 念のため<「長い平和主義国家では想像もできなかった大規模で高度な軍事力が使えるようになる」と指摘>に対応する原文があるかどうかたしかめたら、あった!

 The decision by the government of Prime Minister Shinzo Abe will permit Japan to use its large and technologically advanced armed forces in ways that would have been unthinkable even a decade ago when they were limited to defending the country.

 
 <「日本の安全保障のルネサンス。注目すべきはほとんど議論を呼ばずに平和憲法の解釈を変えたことだ」という専門家のコメントを紹介した。>についても、似通った米国の学者のコメントがたしかに載っている。

 “Japan is experiencing a security renaissance,” said Andrew L. Oros, director of international studies at Washington College in Chestertown, Md. “What is remarkable is not that things are changing, but that they are changing with so little fanfare.”

 ここでの問題は朝日の記事の日本語訳のこの部分――「注目すべきはほとんど議論を呼ばずに平和憲法の解釈を変えたことだ」である。

 原文は「ファンファーレなしに(that they are changing with so little fanfare.)」。

 ファンファーレは、「議論」ではなく、「祝福の鳴りもの」の意味だ。

 憲法解釈変更という国家的な出来ごとが、沈黙のうちに――こっそり進んだことへの驚きの表現である。

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 安倍政権の乱暴な「閣議決定」を、国際世論に大きな影響力のある、天下のニューヨーク・タイムズ紙が「歓迎した」という、この書きっぷり。

 意図的な誤訳報道としか考えられない。

Posted by 大沼安史 at 05:52 午後 |