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2014-01-11

〔コラム 机の上の空〕 日本の<名前を言ってはいけない男 (He-Who-Must-Not-Be-Named) >は、駐英・林大使をシドロモドーロにさせた……

  
 梶村太一郎さんが、その最新のブログで、「駐英中国大使のハリーポッターになぞらえた靖国批判の挑発にまんまと載せられて、まるで落語の横町長屋の熊八の口喧嘩程度の反論をして欧米メディアの笑い者さんが批判している日本の駐英大使」と書いた、大使その人は、林景一氏である。
 ◎ ⇒ http://tkajimura.blogspot.jp/2014/01/blog-post_8.html

 そこでいう「駐英中国大使のハリーポッターになぞらえた靖国批判の挑発」とは、 

  本ブログ既報 = <「軍国主義が日本のヴォルデモート卿(闇の魔法使い)であるなら、靖国神社はホークラックス(分霊箱)だ」 / 駐英中国大使(Liu Xiaoming氏)が英紙、デイリー・テレグラフに、「ハリポタ」のたとえで安倍首相批判文を寄稿、「中国は英国とともに、あの戦争〔太平洋戦争〕に勝利した!――侵略の過去を直視しない日本は世界平和の重大な脅威である」★ ハリポタが9条に守られた平和主義なら、安倍首相はたしかに、「美しい国」のヴォルデモートである> 

 ――で紹介した、Liu 大使の英紙・テレグラフへの寄稿文である。
 ◎ ⇒ http://tkajimura.blogspot.jp/2014/01/blog-post_8.html

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 林大使は、これに(おそらくは東京=外務省=安倍政権からの指示に従い)こんな反論を同紙にした。

 ……「東アジアは岐路にあり、中国の前には2本の道がある」とし、一つは対話の道で、他方は「軍拡競争と緊張激化という悪を解き放つことで、ヴォルデモートの役回りを演じる」と指摘して中国の自制を促した。

…… East Asia is now at a crossroads. There are two paths open to China. One is to seek dialogue, and abide by the rule of law. The other is to play the role of Voldemort in the region by letting loose the evil of an arms race and escalation of tensions, although Japan will not escalate the situation from its side.
 
 ◎ ハフィントン・ポスト <「中国こそヴォルデモート卿」ハリーポッターの悪役にたとえられて日本の駐英大使が反論 > ⇒ http://www.huffingtonpost.jp/2014/01/07/japan-china-harry-potter_n_4553007.html
 ◎ 林大使のテレグラフ寄稿文 5日付け <China risks becoming Asia’s Voldemort> ⇒ http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/asia/japan/10552351/China-risks-becoming-Asias-Voldemort.html

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 梶村さんは、中国の大使に「まんまと載せられた」と書いていたが、その通りだ。

 やりゃなきゃよかったものを――相手が仕掛けた、「ハリポタという土俵」に載せられてしまったのだ。

 反論するにせよ、「ヴォルデモート」抜きの反論を返せばよかったのに。

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 その結果、どんな事態が起きたか?

 結局、BBCの番組に、引っ張り出されてしまったのである。

 8日のBBC、夜の看板番組、「“Newsnight”」のスタジオに引っ張り出されてしまった!

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 この番組は、意見を異にする当事者にタイマンで討論してもらうのが売りだそうだが、日中両大使のタイマン直接対決はなぜか事前に「回避」され、スタジオ内にセットをふたつ用意し、番組ホストのジェレミー・パックスマンさんが、まず林大使に個別インタビューし、そのあと続けて、席を移して、中国大使にインタビューする、異例の形になった。

 その様子は、以下の番組ビデオを見れば、分かる。
  ⇒ http://www.youtube.com/watch?v=sbLaPRh71Tc

 で、日中両大使の「間接対決」は…………、以下のニューヨーク・タイムズの記事でも分かるように、(安倍政権にとっては)残念な結果に終わった(ようだ)。
  ⇒ http://sinosphere.blogs.nytimes.com/2014/01/09/latest-china-japan-spat-whos-voldemort/

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 何より、番組ホストのパックスマンさんの、林大使に対するツッコミがきつかった。

 Paxman――「平和の男(Raxは平和の意。ラテン語)」、パックスマンさんはなんとこう切り込んだのである。

 「たとえば人をヴォルデモートとたとえるような、こどもっぽい非難で、物事が良くなると思っているのですか?」と。
  “Do you think it helps things to use childish abuse, comparing people to Voldemort for example?”

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 これに対して林大使は、用意してきたメモに目をやってから、こう言ったのである。

 「いま私は、<名前を言ってはいけないあの人 (He-Who-Must-Not-Be-Named) >(のたとえ)を持ち出そうとは思わない。私は中国大使の何の根拠もない非難に応えたまでだ」

 “I don’t want to resort to He-Who-Must-Not-Be-Named, but I only responded to the Chinese ambassador’s groundless, baseless accusation,” Mr. Hayashi replied.

 林大使としてはユーモアを交えたつもりだろうが、<He-Who-Must-Not-Be-Named>とは、「ヴォルデモート」そのもののこと。

 つまり、林大使は、BBCの視聴者の前で、「ヴォルデモート」に再び言及し、中国=「ヴォルデモート」批判を繰り返してしまったのである。

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 わたしは(しかし……)林大使の受け答えを聞いているうちに、大使が、なんだか気の毒にもなった。

 大使が安倍政権がどれだけ平和を大切にしている男か説明しようにも、安倍首相の言動がそれと反対のことばかりしているのだから、説得力に欠くのはやむを得ない。

 で…………パックスマンさんに、「(安倍首相は)憲法を改正しようとしているそうだが、ほんとうですか?」と切り込まれて、ヴォルデモートならぬ、シドロモドーロ状態にならざるを得なかったときなど、思わず、目を覆いたくなった!

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 林大使も内心、あの愚かな(?)ボス =(宮仕えの身としては)<名前を言ってはいけない男(He-Who-Must-Not-Be-Named) >のおかげで、正月早々、どうしてこんな目に遭わされなくちゃならないんだ、と泣きたい気持ちになっていたのではないか?

 そして…………BBCのこの番組を見た世界の視聴者は、必死になって言い訳する、日本のこの、出先外交官を憐れみながら、背後に、どんな日本の<He-Who-Must-Not-Be-Named>が潜んでいるか、きっと考えたに違いない。

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 その男の名は――日本の<He-Who-Must-Not-Be-Named>の名は、すでにもう、「歴史修正主義者」として――「特定秘密保護法」を強行成立させた、言論の自由=デモクラシーの基礎の破壊者として、世界に知れ渡っている!  

 その男が何と言おうと(思おうと)、日本は、梶村さんに言うように「駐英中国大使のハリーポッターになぞらえた靖国批判の挑発にまんまと載せられ」、ロンドンを舞台とした、新年早々の日中外交戦に、一敗地にまみれたのである。

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 実際のところ、中国が「ヴォルデモート」であるかどうか、など、この際、どうでもいいことだ。

 問題はわたしたちの国、日本である。

 日本が「新・軍国主義=ヴォルデモート化の道」を絶対に歩まないことを、明確に、国際社会に示す――

 日本が「9条の国」であることを明確に示す――
 
 ロンドンでの敗北から、私たちが学ぶべき教訓は――これである。

Posted by 大沼安史 at 07:38 午後 |

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