今朝、驚くべき報道があった。
安倍政権が「 官民ファンドで留学(を)支援」する検討を始めたのだという。
報道によれば、「まず政府と企業がそれぞれお金を出し合ってファンドをつくり、大学生の留学希望を受け付ける。米国に留学する場合、学費や生活費などで年間300万円ほど必要になるため、200万円ほどを無利子の奨学金などで貸す」
政府と企業が拠金してファンドをつくる? 「年間の留学費用の3分の2を無利子で貸して支援する」?
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で、対象は?
報道では「海外への留学を希望する大学生全員に対し」と出ている。
えっ、希望者全員に、年間300万円×(たぶん)4年=1200万円を無利子で貸し付ける?
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政府が税金を「ファンド」に注ぎこむ以上、分け隔てなく「希望者全員に」――というしかないのだろうが、民間の企業(おそらくは金に余裕のある大企業)が金を出す以上、結局は、拠金企業の子女(か、霞が関の役人の子女)に絞られる(あるいは優先する)はずだ。
疑いはじめるとキリはないが、つまりは「民の拠出」を隠れ蓑に、大企業が政府のエリートとともに仕組んだ、「税金ぼったくり、わが子の海外留学促進事業」策ではないのか?
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この「海外留学支援のための官民ファンド」、報道によると、安倍政権の「成長戦略」だそうだが、唐突な「発表」が気になる。
なぜ、いまの時点で、海外留学を拡大しなければならないのか?
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「フクイチ核惨事」2周年――。苛酷な被曝実態がしだいに明らかになり、4号機核燃プールの崩壊が日本の滅亡を告げることが誰の目にもハッキりしはじめたいま、考えられることは……ひとつ。
国内の被曝地獄から、官民エリートの子女を海外に避難させる――ただ、それだけ。それしかないだろう。
日本の官民エリートは、米国などの安全な大学を逃れて、エリートの血統を維持する「棄国子女」量産計画に乗り出しているのだ。
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日本の若者を海外に脱出させ、被曝から若いいのちを守ること、それ自体は正しいことだ。
しかし、それ以上に緊急に行なわなければならないことがひとつある。
それは福島などの被曝地からの、子どもたちの疎開である。
「被曝子女」が「放射能ゲットー」と化した被曝地から逃れ、安全な場所で学び、育つことを支援することである。
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官民で「海外留学ファンド」をつくり、そこでに(税)金を注ぎ込むというなら、まず「被曝子女・国内疎開留学ファンド」をつくり、そこへ拠金すべきである。
東電をはじめ、原子力ムラの大企業は、まず被曝地の子どもたちの救済のために、金を出すべきだ。
「安全神話」をふりまき、原発を推進してきた文科省・経産省などの「死の灰官庁」はせめてもの罪滅ぼしに、甲状腺に異状をきたした子どもたちの疎開・保養のために、税金を使うべきだ。
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「被曝子女」を救わず、「棄国子女」だけをたすけるだなんて、本末転倒、順序が逆だ。
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参考 ◎ 官民ファンドで留学支援 費用の3分の2を無利子貸与( 朝日新聞デジタル 27日付)
政府は、海外への留学を希望する大学生全員に対し、年間の留学費用の3分の2を無利子で貸して支援する「官民ファンド」を検討し始めた。2014年度にも留学支援をスタートしたいという。安倍政権が力を入れる「成長戦略」の一つで、日本からの留学生を増やし、世界で活躍できる人材を多く育てるねらいがある。
まず政府と企業がそれぞれお金を出し合ってファンドをつくり、大学生の留学希望を受け付ける。米国に留学する場合、学費や生活費などで年間300万円ほど必要になるため、200万円ほどを無利子の奨学金などで貸すという。
文部科学省によると、日本人の海外留学生はピークの04年には約8万3千人だったが、09年には約6万人まで減った。不況などで留学費用を出せなくなったり、学生が「内向き志向」になったりしているという。