〔国会事故調・菅直人前首相〕ウォールストリート・ジャーナル 「原発事故対応の誤り、既得権益ある専門家のせい-菅前首相が証言」
日本語版 → http://jp.wsj.com/Japan/Politics/node_450532
英語版 Japan Ex-Premier Blames Advisers for Disaster Mistakes
→ http://jp.wsj.com/Japan/Politics/node_450532/(language)/eng-US
◇ 日本語版 「原発事故対応の誤り、既得権益ある専門家のせい-菅前首相が証言」
→ http://jp.wsj.com/Japan/Politics/node_450532
【東京】菅直人前首相は28日、昨年3月の東日本大震災に伴い発生した福島第1原発事故への対応の誤りは、原発温存に既得権益のある専門家からの不適切な助言にあるとの立場を明らかにした。日本では、事故の原因は何か、誰に責任があるかをめぐり議論が続いている。
菅氏は、国会の事故調査委員会で参考人として出席し、大震災と津波に伴い制御できないほどの原発事故の発生を許した政策環境は、事故当時の政府とそのトップであった同氏自身に最終的な責任があると謝罪した。しかし同時に、政府の原子力規制当局や原発事業者である東京電力の専門家が事故後に不十分な助言しかしなかったと批判した。
菅氏は国会の事故調の参考人として証言した最も重要な人物の一人だ。事故調は原発事故の原因を調査するため昨年12月に設置された。菅氏に先立ち、過去数週間で、枝野幸男前官房長官(現経産相)、海江田万里前経済産業相が証言している。
事故調は来月、最終報告書を取りまとめる予定。事故調は、特定の個人ないし組織を非難するのではなく、原因を特定し、そこから教訓を引き出すことを目標にしている。事故調の結論は、政府委託を受けた他の事故調査パネルとともに、現在全面的に休止している原発の再稼働の是非や日本は将来、原発にどの程度依存すべきかをめぐる国民的な議論に影響する可能性がある。
当時の菅政権は原発周辺から住民を避難させるのに手間取り、事故原発の状況に関する情報をなかなか公表しなかったなどと批判されている。また放射性物質の被ばくに関する安全な水準について国民の理解を誤らせたとも批判されている。
例えば東電と政府は、福島第1原発の6つの原子炉のうち3つでメルトダウン(炉心溶融)が起きたことを事故から2カ月たつまで認めなかった。これに対し、外部の専門家たちは早くも東日本大震災当日の3月11日、原子炉が損傷した可能性があると警告していた。
菅氏は証言で、法律の下では、東電、原子力安全・保安院、原子力安全委員会の専門家が原子炉の状況に関する正しい評価を下す責任を担うことになっていると指摘した。同氏は、これら安全規制当局や業界の専門家が原子力推進に向けて長年活動していたにもかかわらず、そのアドバイスを自分が余りに無批判に聞いていたと反省の弁を述べた。
菅政権は昨年4月、年間被ばく量が20ミリシーベルト未満である限り、福島県の学校を再開できるとのガイドラインの決定を下した。しかし現在では、この基準は小さな子どもにとって極端に高いとみなされている。このガイドラインは8月に撤回され、これをはるかに下回る基準が導入された。
菅氏は20ミリシーベルトの上限を設定したことに絡み、決定を下す際、常に原子力安全委員会と相談していたと述べた。
菅氏は官邸で情報がほとんど上がってこないと感じていたと述べ、原子力安全・保安院は何が起こり得るか、どのような予防措置を取る必要があるかについて、何も助言しなかったと語った。
事故調によれば、米政府は危機の間、官邸に米国の専門家を常駐させることを申し入れたが、菅政権はこれを固辞した。菅氏はこの点について、その申し入れを知らなかったが、日本政府としては官邸に外国の専門家を受け入れられなかっただろうと語った。
Posted by 大沼安史 at 01:13 午後 | Permalink