〔フクシマ・メモ〕なおも燻ぶる 読売新聞の「フクイチ セシウム137 36万テラ・ベクレル(ヨウ素換算)放出」スクープ!
読売新聞(デイリー・ヨミウリ)の23日付け、「フクイチ セシウム137 36万テラ・ベクレル(ヨウ素換算)放出」スクープ報道が、なお世界に波紋を広げている。
和文 → http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=59122 (注1)
英文→ http://www.yomiuri.co.jp/dy/national/T120523005514.htm
米国の有力な反原発メディア、ENEニュースが、この「セシウム137・36万テラBq」のヨミウリ報道を引用、これを、「チェルノブイリのセシウム137放出の4.5倍もの量」と伝えたことで、世界中に一気に知れ渡った。
→ http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2012/05/post-65bb.html
(この4・5倍の根拠としてENEニュースは、昨年9月13日付けの英文朝日の報道を挙げている。それによると、チェルノブイリのセシウム137放出は、8万5000テラBq)
このヨミウリ報道はフクイチの総放出量を「76万テラベクレル」とする報道だったが、翌日の24日、東電が総放出量を90万テラBqとする「発表」を行ない、結果的に「誤報」となってしまった。
いま、「誤報」とカッコつきで書いたことにはわけがある。
読売新聞の電子版で、この記事が25日になっても訂正・削除されていないこともあるが、東電のこれまでの「前科」の数々を考えると、そうかんたんに、東電の「訂正」発表を信じる気にはなれないからだ。
東電発表の「90万テラ」のうち、セシウム137がどれだけかというと、「約10万テラ」。ヨミウリ報道の3・6分の1だ。
36万テラと10万テラの差――。
これについて、フランスのネット・メディアは、「東電は真実を語っているのだろうか? それとも読売の誤報?」と困惑を隠せないでいる。
→ http://fukushima.over-blog.fr/
このフランスのネット・メディアも報じているように、日本の各機関の放出量推定はマチマチというかバラバラ。
それだけでも信頼できないのに、こんどはこのありさま。
世界の不信感をさらに増幅させる結果になってしまった。
しかし、ここでひとつ確認しておかねばらないことは、東電が発表したセシウム137「約10万テラ」にせよ、実は膨大なものである、ということである。
チェルノブイリをフクシマは、セシウム137の放出量で、17.7%も上回る計算。
逆に、ヨミウリ報道が、セシウム137について、正しいとすれば、東電は総放出量を「90万テラ」の膨らませて眩惑させながら、セシウム放出量をごまかす、巧妙な隠蔽工作に走ったことになる……。
疑い深いわたしとしては、ヨミウリ・スクープの、セシウム137部分における、思わぬ世界的な反響に慌てた東電がトリックに出たような気がするのだが、いかがなものか?
ここは読売記者の、意地の第二弾・暴露スクープに期待することにしよう。
(注1)「原発事故の放射性物質、保安院試算の1・6倍」
東京電力は、福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の放出量(ヨウ素換算)について、経済産業省原子力安全・保安院が2月に公表した最新試算値の1・6倍にあたる76万テラ・ベクレル(テラは1兆)に上るとの推計を初めてまとめた。
来月取りまとめる社内事故調査委員会の最終報告書に盛り込む見通しで、福島県など地元自治体への説明を始めた。
放出量の推計は、炉心の損傷具合から計算する方法と、大気や海水の放射性物質の濃度から逆算する方法で数値に差があり、保安院は昨年6月に77万テラ・ベクレル、今年2月に48万テラ・ベクレル、原子力安全委員会は昨年8月に57万テラ・ベクレルとする試算値を公表した。
東電は二つの方法を組み合わせ、条件を変えながら計算を繰り返し、ヨウ素131が40万テラ・ベクレル、セシウム137が36万テラ・ベクレル(ヨウ素換算)とする試算をまとめた。
チェルノブイリ原発事故での放出量は520万テラ・ベクレルだった。(2012年5月23日 読売新聞)
Posted by 大沼安史 at 04:50 午後 | Permalink