〔東京新聞〕社説 「原子力規制組織 独立・緊急対応 両立を」/◇ この際、中途半端なものよりは、しっかりした組織をつくるべきだ。政府は法案審議を急いでいるようだが、新組織が原発再稼働のためであってはならない。
原子力規制を担う新組織づくりの法案が衆院で審議入りした。政府案に加え、自公両党も対案を提出している。政府から独立し、緊急時には迅速対応できる組織とは何か。議論を尽くしてほしい。
原子力を推進する組織と規制する組織が同居し、産学官の「原子力ムラ」が幅をきかせる現体制では東京電力福島第一原発事故は防げなかった。これが新たな規制組織が必要な最も大きな理由だ。
政府案では原子力安全・保安院を経済産業省から切り離して内閣府原子力安全委員会などと統合し、環境省の外局「原子力規制庁」を設置する。
新組織にとって最も重要なことは政府や電力会社、原子力ムラからの独立性の確保だ。政府案の規制庁は、環境相から規制の制定を受任し、長官は環境相が任命するなど、予算や人事に決定権を持つ環境相の関与が大きい。
この点、政府案より自公両党の対案の方に分がある。
自公案の「原子力規制委員会」は、公正取引委員会のように独立性が高い「三条委員会」だ。五人の委員は国会の同意が必要な人事で、政府案と違って規制は独自に制定する。規制庁は規制委の事務局という位置付けだ。
民主党は政府案にこだわらず、規制委方式を受け入れた。新組織を早期に発足させる狙いがあるにせよ、独立性の観点からは妥当な判断だ。ただ、原発事故発生時の指示権は誰が持てば、迅速に対応できるのかという問題が残る。
政府案では、緊急時の指示権は首相が持つのに対し、自公案では規制委が担う。規制委の意思決定は五人の合議制のため、自衛隊や自治体、電力会社への迅速な指示ができないという指摘もある。
独立性を担保しつつ、緊急時には迅速に対応できる新組織づくりに与野党が知恵を絞ってほしい。
国会の原発事故調査委員会は六月中に報告書をまとめる予定だ。原子力の規制にはどんな組織、指示系統がふさわしいか。報告書を参考に結論を出してもよい。
この際、中途半端なものよりは、しっかりした組織をつくるべきだ。
政府は法案審議を急いでいるようだが、新組織が原発再稼働のためであってはならない。
新組織には、保安院などから職員が移行するのだろうが、独立性の担保には出身官庁との関係を断ち切る新たなルールも必要だ。官僚自身の保身よりも国民の安全が重視されるべきは当然である。
Posted by 大沼安史 at 03:03 午後 | Permalink
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