〔被曝受難〕河北新報 双葉郡合併 首長、賛否分かれる 論議の先行きは不透明/◇ 井戸川克隆・双葉町長「とんでもない。町村ごとの課題がぼける」
福島県富岡町の遠藤勝也町長が福島第1原発事故で大半が避難区域となっている双葉郡8町村の合併に前向きな意向を示したことについて、河北新報社は29日、他の7町村長に意見を聞いた。「総論賛成」から「絶対反対」まで分かれ、合併論議の先行きは不透明だ。
遠藤富岡町長は28日の町民説明会で「双葉郡の人口は現在の半分以下になるだろう。郡を一つにした方がいい」と合併に肯定的な考えを示した。
双葉郡は原発事故で住民約7万2000人の99%近くが今も避難している。大半が避難区域で帰還の見通しが立っていない。
現在居住可能なのは放射線量の低い広野町と川内村。役場を避難先から戻し、住民に帰還を呼び掛けたが、戻ったのは広野が5400人中320人、川内が2800人中540人にとどまる。
渡辺利綱大熊町長、馬場有浪江町長、遠藤雄幸川内村長、松本允秀葛尾村長の4人はそうした現状を踏まえ、「将来的には合併は選択肢の一つだ」と富岡町長の発言に一定の理解を示す。
ただ、4人とも「軽々に判断できない」「各町村の足元を固めるのが先」と条件付きの賛成だ。
「とんでもない。町村ごとの課題がぼける」と反対姿勢を明確にするのは井戸川克隆双葉町長。山田基星広野町長も「一切考えていない。首長の一存でできるほど簡単ではない」と否定する。
松本幸英楢葉町長は「楢葉は放射線量が比較的低く戻れる状況にある。帰還が一番の優先課題だ」と話している。
◎双葉郡7町村長談話
<広野>除染や帰還が先
山田基星広野町長 いろいろな方向性を探る考えは分かるが、合併は今のところ考えていない。住民帰還や除染、学校再開など課題が多く、それどころでない。合併は首長の一存でできるほど簡単でなく、議会と連携しなければならない。
<楢葉>南北二つの形も
松本幸英楢葉町長 楢葉は放射線量が低くて戻れる状況にある。住民の帰還に向け、除染や賠償問題に取り組んでいる。現時点では合併は考えていない。第1原発が双葉郡の中央にあり、合併の形は北と南の二つに分かれるのではないか。
<川内>選択肢の一つに
遠藤雄幸川内村長 合併は近い将来の選択肢の一つ。復興予算を効率的に配分できる。ただ復興に向けて必要な古里への思いが弱まるのが心配。川内は双葉郡復興のための最前線になりたい。「仮の町」の拠点づくりに積極的に協力する。
<大熊>8町村で温度差
渡辺利綱大熊町長 人口減が予想され、将来的に合併は選択肢の一つ。ただ、今は各町村が足元を固める時。放射線量に違いがあり、復興計画もまちまちで双葉郡全体の構想を並行して進めるのは難しい。合併には8町村で温度差もあ
る。
<双葉>首長の責任放棄
井戸川克隆双葉町長 とんでもない。悲惨な避難生活を強いられている問題が解決していないのに首長として責任放棄になる。双葉郡が国に何を求めるか、ようやく協議が始まった段階。合併話を持ち出せば、町民に動揺を与えてしまう。
<浪江>論点整理が必要
馬場有浪江町長 人口の減少や産業構造がどうなるか分からない中、合併は一つの選択肢。だが、合併で自治体が変われば戻らない町民が増える恐れがあり、利点、欠点の論点を整理しないと軽々に判断できない。平時とは状況が違う。
<葛尾>まず賠償解決を
松本允秀葛尾村長 復旧、復興を単独町村で進めるのは難しく、合併は一つの選択肢だ。ただ避難区域再編や賠償問題に見通しがつかないと話し合う段階にならない。葛尾村は起伏に富み、合併自治体の拠点になるのは難しいのでないか。
Posted by 大沼安史 at 03:56 午後 | Permalink