〔国会事故調・菅直人前首相〕信濃毎日新聞・社説 「国会事故調 規制庁に生かさねば」
東京電力福島第1原発事故で政権中枢がとった行動は事態の改善につながったのか―。
国会に設けられた事故調査委員会に、当時首相だった菅直人氏が参考人として出席した。
菅氏は事故後の避難対策について、「不十分だった」と陳謝した。しかし、現場への介入だとして批判を受けた第1原発の視察や
、原発の所長への電話については、「判断に役立った」などと反論。一連の行動の是非は、明確にはならなかった。
あらためて浮き彫りになったのは、官邸のお寒い危機管理の実態である。混乱のなかで本来ならフル稼働しなければならない行政
組織が機能不全に陥り、首相に必要な情報が入らなかった、という。
なぜ危機管理システムは弱かったのか、しっかりと検証を進め、災害列島を守る力強い仕組みを早急に構築する必要がある。
国会事故調は第三者による調査機関で、科学者、弁護士、ジャーナリストら10人で構成する。国政調査権を持ち資料請求や証人
喚問要求もできるのが特徴だ。
菅氏は当時、経済産業相だった海江田万里氏、官房長官だった枝野幸男経産相に続いて出席した。
菅氏が強調したのは、原子炉の状況や対策について、東電や経産省の原子力安全・保安院、原子力安全委員会から情報が入らなか
ったことだ。首相として適切な判断ができなかったことは問題だ。
これが東電や保安院への不信感となり、個人的なつながりのある科学者らに助言を求めたり、細部にわたって事故対応を指示した
りする行動につながったようだ。
これまでの国会事故調では、海江田氏が官邸と東電などの情報共有について「伝言ゲームをしているような状況で、このままでは
いけないと思った」と発言している。意思疎通の欠如が混乱に拍車をかけたことが分かる。
枝野氏は、官房長官の職務である総合調整役と、政府のスポークスマンとしての二役には無理があった、と指摘した。緊急時の役
割分担が十分に考えられていなかったことになる。
ハード、ソフトの両面から問題点を徹底的に掘り下げなければならない。非常時は、現場に負担をかけることなく政権中枢が情報
を共有できるシステムづくりが必要だ。トップが最善の判断をするのに欠かせない。
国会事故調は6月をめどに報告書をまとめる。保安院や安全委員会などを再編して発足する原子力規制庁に生かさねばならない。
Posted by 大沼安史 at 01:16 午後 | Permalink