〔死の灰NEWS〕 制限いつまで 悩む現場 福島の小中学校の屋外活動 緩和・解除は一部
東京電力福島第一原発事故で、中・浜通りの11市町村の小中学校で一律の屋外活動制限が続いている。校庭の表土入れ替えで放射線量が比較的低減し、平成24年度から制限の緩和や解除を検討する市町村もあるが、ごく一部だ。屋外活動が本格化する春を前に、子どもや競技関係者から解除を求める声が上がる一方、保護者の不安は依然、根強い。教育関係者は子どもの安全と体力・競技力向上のはざまで対応に頭を抱える。
■根拠がほしい
郡山市は昨年4月下旬、暫定基準値を超えていた薫小を除く小中学校85校で授業での屋外活動を1時間、部活動を2時間以内とする措置を決めた。当時の文部科学省の暫定基準値や小中学校長会の意見などを踏まえ、独自に基準を定めた。
その後、全ての市立学校で校庭の表土除去を進め、線量が比較的低く、表土除去の対象外とした市西部の湖南小・湖南中を除く小中学校で作業を終えた。地表の放射線量はおおむね毎時0.2マイクロシーベルト程度に下がった。
市教委の担当者は放射線量が毎時1マイクロシーベルトを大幅に下回っていることなどを踏まえ、制限の見直しが必要と考えている。ただ、「現在の放射線量が本当に大丈夫なのか判断が難しい。確実に安全といえる根拠がほしい」と苦悩する。
県北地方などに比べ、比較的放射線量が低い平田村でも制限措置が続いている。
村教委は平成23年度当初から小学校全4校と中学校全2校で、屋外活動を制限している。村教委は「線量が比較的低くても一部の保護者が不安を持っている。24年度も制限するかどうかは、これまで蓄積してきた学校の空間放射線量のデータを踏まえ、判断したい」と慎重だ。
■納得いく形で
福島市教委は2学期が始まった昨年9月1日に屋外活動を正常化するよう各校に通知した。しかし、放射線の影響に対する保護者の不安から、多くの小中学校は各校独自の判断で屋外活動制限を継続している。
比較的放射線量の低い市内西部にある水保小でも、体育の授業を中心に屋外活動を1日2、3時間程度に制限している。佐藤秀雄校長は「屋外活動は保護者の理解を得なければならない」と悩ましげに話す。
郡山市の郡山三中の野球部は昨年の中体連東北大会でベスト8に入った強豪だ。限られた時間を有効に活用するため屋内競技と体育館を譲り合い、校舎の廊下でトレーニングする時もあった。
放射線量の低い会津地方などへの遠征が多くなり、保護者の負担が増えた。佐藤秀治校長は「制限による影響は大きいが、屋外活動の本格的な再開は生徒、保護者が納得いく形にしなければならない」と指摘する。
■複雑な思い
本宮市の自営業男性(41)の小学4年の息子は、市内のサッカースポーツ少年団に所属している。原発事故以降、長時間の屋外練習はできなくなり、最大で2時間ほどで切り上げている。体育館を利用して足りない分の練習はしているが、男性は「本来であれば、屋外で伸び伸び練習させてあげたい。ただ、健康のことを考慮すると無理はさせられない」と複雑な思いを口にした。
「練習は時計を気にしながらしている。レベルアップのために練習試合を1日2試合はしたい…」。屋外活動の制限が続く郡山市で野球部に所属する中学二年の男子生徒(14)は不満を漏らす。
中学一年の娘がいる市内の会社員女性(39)も「(昨年)校舎を走る子どもたちの姿はかわいそうだった。夏場は長くするなど季節に合った制限でもいいのでは」と提案する。
一方、市内の学校に通う小学5年の娘と中学3年の息子を持つ父親(43)は「放射線量が下がったからといって、長時間の活動はどうなのか」と健康への不安は消えない。
■同じ条件で
県内のスポーツ関係者は、屋外活動制限が長引いていることによる競技力への影響を心配する。
県中体連会長を務める伊東豊郡山六中校長は「本県勢の成績が各種大会で大幅に落ち込んだということはないが、できれば、みんなと同じ条件で練習させたい」と胸の内を明かした。「広い練習場所を必要とする屋外競技にとって場所の確保が必要不可欠だ」と訴える。
しかし、郡山市内は郡山総合体育館や安積総合学習センターなどの大型施設が被災したこともあり、各学校や競技団体は練習場所の確保に苦心している。市体協の吉田岳夫会長は「屋内外の競技を問わず影響が出ている。制限が長引けば、競技力、体力が低下する恐れもある」と懸念する。
■背景
文部科学省は子どもの被ばく量を減らすため、昨年4月に生活パターンを屋外8時間と想定し、年間20ミリシーベルト(毎時3.8マイクロシーベルト)を校庭・園庭での屋外活動制限の暫定基準値とした。同8月に暫定基準値を見直し、年間1ミリシーベルト以下にすると改め、校庭の放射線量として毎時1マイクロシーベルトを目安とした。県によると、毎時1マイクロシーベルト以上あった県内の公立の幼稚園、小中高校、特別支援学校の計318校・園は全て表土除去などの除染を完了している。公立の毎時1マイクロシーベルト未満の学校と、私立の幼稚園、小中高校でも八割程度が終えている。
Posted by 大沼安史 at 04:41 午後 | Permalink

















