〔河北新報〕 社説 「除染工程表/目標値、帰還時期を早く示せ」(28日)
福島第1原発事故で避難を強いられた住民や自治体関係者を苦しめているのは、先行きが見えないことだろう。その不安を和らげることができたとは、とても言えそうにない。
福島県内の避難指示区域で国が進める除染作業の工程表を、環境省が発表した。年間被ばく線量が50ミリシーベルト以下の地域を優先し、2014年3月末までに住宅や公共施設、道路、農地などの除染を終えるとしている。
しかし、どこまで放射線量を下げるのかという具体的な目標値や、住民らが最も知りたかったであろう帰還時期については明らかにされていない。
一方、年50ミリシーベルト超の地域については、除染のモデル事業を実施した上で「対応の方向性を検討する」としただけで、具体的な計画を示せなかった。帰還できるレベルまで線量を下げることの難しさが浮き彫りになったとも言える。
「世界でも例のない試みで、極めて大きな壁を乗り越えなくてはいけない」。細野豪志環境相はこう強調した。
困難に立ち向かうために大切なのは、避難している人々が将来への展望をどれだけ見いだせるかだ。政府は、除染の可能性などについての丁寧な説明と、帰還時期を含む詳細な工程表作りを急がなくてはならない。
政府は「警戒区域」と「計画的避難区域」を国が直接除染する除染特別地域に指定しているが、3月末をめどに三つの区域に再編する方針。
年20ミリシーベルト以下の「避難指示解除準備区域」、20ミリシーベルト超で50ミリシーベルト以下の「居住制限区域」、50ミリシーベルト超の「帰還困難区域」だ。工程表は、この新たな3区分に合わせてまとめられた。
避難指示解除準備区域は線量によって三つに分割し、今年末~14年3月までに除染を完了。居住制限区域でも14年3月までに終えることが明示された。
しかし、これらは帰還時期を保証するものではない。さらに、汚染土などの仮置き場や中間貯蔵施設の設置、私有地を除染する際の所有者の同意、作業員の確保など課題は山積する。作業が遅れる可能性もあろう。
環境省の推計では、国が直接除染する区域の対象世帯数は約6万。除染に先立って損壊状況の調査が必要な家屋が多い。放射性物質濃度のモニタリング調査地点も約50万カ所に上る。
どれだけの作業量が発生するかは正確に予想できないのが実情だ。作業員は数千人規模になるとみられるが、その確保や健康管理は容易ではあるまい。
除染に当たっては、土地や建物の所有者の了解を得た上で汚染状況などを詳しく調査し、除染方法を決定しなくてはならない。すんなり同意が得られるかどうかも問題になる。
帰還困難区域から避難した人の中には、再び住むことを半ば絶望視する人もいる。モデル事業の結果を検証しなければ予測するのは難しいだろうが、誰もがある程度は将来の見通しを得られるよう、政府にはきめ細かな情報提供をしてもらいたい。
Posted by 大沼安史 at 06:46 午後 | Permalink

















