〔東京新聞〕 岐路に立つ原子力 いばらきの決断 <4> 100万人の避難対策
福島第一原発事故の政府の事故調査・検証委員会が昨年末にまとめた中間報告は、同原発から五キロ離れた事故対応拠点の「オフサイトセンター」が機能しなかったことや、国の避難指示が避難対象区域の自治体すべてに届かなかったことなどを問題点に挙げた。
オフサイトセンターは、国や地元自治体、東電などの担当者が集まって原子炉の状態などの情報を収集し、避難指示などを検討するはずだった。しかし、通信機能はまひし、非常用電源も地震で故障した。放射線を考慮した構造になっておらず、使えなかった。
本県ではどうか。東海第二原発(東海村)から約十一キロのひたちなか市にあるオフサイトセンターは、震災で外部電源を失い、非常用電源は不具合が生じて約二十時間停電した。放射線量を低減する機能も備えていなかった。
福島の事故を踏まえ、国の原子力安全委員会専門部会は昨年十一月、原発から八~十キロ圏だった防災対策の重点地域(EPZ)を三十キロ圏に拡大することを決めた。三十キロ圏を「緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)」、内側の五キロ圏を事故後、直ちに避難する「予防的防護措置を準備する区域(PAZ)」とした。
東海第二原発の場合、三十キロ圏の住民は約九十四万人。圏内に含まれる水戸市や高萩市、笠間市など十四市町村全体の人口は約百六万人で、全国の原発で最多。これだけの多くの人を迅速にどこにどうやって避難させるのか。
県は地域防災計画改定に向け、学識者ら外部委員でつくる原子力災害対策検討部会が課題を抽出した。PAZ内から迅速に避難する方法や、UPZ内の全域避難で避難所をどこに置くのか。バスなど搬送車両の確保、自家用車避難によって生じる渋滞対策をどうするのか。まだ、国から具体的な指針が示されていないとはいえ、課題は山積みだ。UPZ内に含まれるオフサイトセンターの代替施設となる県災害対策本部が設置される県庁も、同原発から約二十キロの距離だ。
梅本通孝・筑波大システム情報系講師(都市・地域防災)は「百万人が避難するとなれば、避難先を県だけで何とかするのは無理。原発がある他県も含め、日本全体で受け入れ態勢をどうするのか、全国共通の枠組みを整理しておくべきではないか」と指摘する。
震災後、東海村や大洗町など周辺自治体には、西日本の自治体と避難を含めた防災協定を結ぶ動きがある。
東海村の村上達也村長は「(EPZを三十キロ圏に)広げたのは初期の対応としてはいいだろう。しかし、百万人を守る、地域を防御するとなったら不可能だ。そんなところに原発を置くのは、とてつもない能天気な話だ」と国の対応を断じる。 (北爪三記)
<地域防災計画> 災害対策基本法に基づき、都道府県と市町村がそれぞれ策定する災害対策の総合的な計画。国の防災基本計画を基に作り、必要に応じて修正する。県の計画には「震災」「原子力災害」「風水害等」の各対策編がある。原子力災害対策については、防災基本計画のほか、国の原子力安全委員会が定める原子力防災指針を基にする。
Posted by 大沼安史 at 04:45 午後 | Permalink

















