〔フクシマ・河北新報〕 脱原発の選択-エネルギー先進国ドイツ(下)実践/住宅工夫、節電に尽力
<世界から見学者>
フランスとスイスの国境に近いドイツ南西部のフライブルク市には、世界が注目する省エネのモデル地域がある。
約5300人が暮らすヴォーバン地区。1990年の東西ドイツ統一後、フランス軍から返還された元駐留地だ。約38ヘクタールの地区内には屋上を緑化した集合住宅や、太陽光パネルを設置した一戸建て住宅などが目立つ。
「ここでは電力会社に依存せず、住宅ごとに発電して光熱費を抑えている家庭が多い。日本からも研究者や行政関係者が見学に来ている」。地元で視察ガイドを務めるアンドレアス・デレスケさんは言う。
ドイツ政府は2010年、環境対策を進めるためエネルギー大綱を策定。電力に変換する前の化石燃料など1次エネルギーの消費量を08年比で20年に20%、50年に50%削減するとした。
<10年で元取れる>
この省エネの重要性が、ことしの「脱原発」政策の決定でより高まった。
フライブルク市内には大綱に基づく省エネ対策を進める上で期待される住宅がある。ヴォーバン地区を中心に一戸建てや集合住宅約200棟がある高断熱の「パッシブハウス」だ。ガイドのデレスケさんも集合住宅タイプで暮らす。
自宅は南向きで大窓が三重ガラス。室内には高性能の空調装置を備える。建物地下には天然ガスを燃料にするコージェネレーション(熱電併給)施設があり、発電した電気と発生する熱を全20戸で共同利用し、電力会社から受ける電力量を抑える。
広さ90平方メートルのデレスケさん宅の暖房費は年間約90ユーロ。日本円で約9000円の安さだ。
デレスケさんは「コージェネ施設などは10年余で元が取れる。量産すれば、原発に代わる電力を確保することもできる」と強調する。
寒冷なドイツでは家庭の年間消費電力の約7割を、暖房需要が占めるとされる。暖房の効率化は脱原発社会に欠かせない。政府は建築物の省エネ支援に年間15億ユーロ(約1500億円)規模の助成を続ける方針を打ち出し、パッシブハウスは国内に広がり始めている。
<市民も責任負う>
首都ベルリンでは07年、集合住宅としては市内初のパッシブハウスが「ベルリンの壁」跡地をまたぐ形で完成。7階建てに19戸54人が暮らす。
住民でもあるクリストフ・ダイメルさんは建築家として設計に携わった。構造が特殊なことなどから「本格普及には専門の建築家育成や投資を促す制度が必要」と指摘しながらも、「条件が整えば今後は多くの住宅がパッシブハウスになるだろう」と予想する。
ドイツが決めた22年までの「脱原発」は、風力など再生可能エネルギーの発電拡大とともに電力消費の抑制が前提になっている。
「責任は政府だけでなく、市民も背負っている。一人一人が意識を高めて行動すれば、脱原発は実現できるだろう」。ヴォーバン地区で省エネ生活を実践するデレスケさんは語る。2011年12月24日
Posted by 大沼安史 at 11:31 午前 | Permalink

















