〔フクシマ・NEWS〕 「日本原子力発電」元役員 北村俊郎さん(66)の悔恨
ひとりの「原発推進者」が、東京電力福島第1原発事故で家を追われた。敦賀原発(福井県)などを稼働している「日本原子力発電」(原電、本社・東京都)元役員で、原発事業に長年関わってきた北村俊郎さん(66)だ。今秋「原発推進者の無念」(平凡社新書)を出版した。寒風の吹く福島へ、その「無念」を聞きに向かった。【江畑佳明記者】
◇原子力は行き詰まると思った。まさか大規模汚染とは。
◇「事故の可能性1/10000」。今考えれば確率論は誤り。
◇電源喪失の可能性排除し、現場で確認しなかった。
北村さんは現在、同県須賀川市の借り上げ住宅で暮らしている。JR須賀川駅に乗用車で迎えに来てくれた北村さんと、郡山市にある大型イベントホール「ビッグパレットふくしま」を訪れた。
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目の当たりにしたのは、それだけではない。メンテナンスを請け負っている下請け、孫請けの多重構造。大手電力会社や原子炉メーカーの閉鎖的な体質……。「トイレのないマンション」と例えられるように、使用済み核燃料は蓄積される一方。その再利用を狙った高速増殖炉「もんじゅ」は、度重なる事故で軌道に乗らない。「電力の安定供給」という錦の御旗(みはた)の下で、いくつもの懸案が先送りされていた。「負の側面」が気になり、業界誌に原稿を書いては、警鐘を鳴らした。「原発事業はいつか行き詰まると考えていた。でも、まさか、放射能汚染が大規模に広がる事態は予想していなかった」
原発の安全性を、住民集会で説明したこともある。「事故発生の確率は1万分の1と極めて低い」と解説すると、ある住民が「それは明日起こる可能性もあるということですよね」と指摘した。返す言葉がなかった。「今考えると、あの確率論は誤りだった」
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結果論かもしれないが、地震大国で海岸線の長い日本で、大地震や大津波で原発が破損する可能性は、素人でも想像できる。専門家はなぜ、思いが至らなかったのか。
「それはね」と、ひと呼吸置いて答えた。
「『世界に冠たる無停電の実績がある日本で、長時間の電源喪失は考えにくい』と統計だけで判断し、そういう発想を排除したからです。現場に足を運び、『本当に電源回復できるか』などを確認していない。そこに最大の問題がある」。また、チェルノブイリ事故の教訓も「政府や電力会社は『炉のタイプが違う』という線引きをしてしまった」と指摘する。事故の可能性を少なく見積もった結果、日常の避難訓練は簡素化され、住民も危機感を持たなかった。
厳しく批判するその視線は、どこか寂しげだった。
……
長年携わった原発によって、現在の生活と老後の未来予想図が奪われる--。何と皮肉な現実だろうか。
「それでも」と北村さんの声が大きくなった。「私は原発を推進した者として、また被災した立場として、自分の経験を発信し続けるべきだと思っています。その責任がある」
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北村俊郎著 『原発推進者の無念』(平凡社新書) → http://www.bk1.jp/product/03468774
Posted by 大沼安史 at 10:30 午前 | Permalink

















