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2011-12-02

〔フクシマ・ノート〕 運転マニュアルを墨塗りしたあげく、吉田所長の顔に泥を塗る(?)東電の大本営体質

 前線基地の免震棟で闘い続けた東電福島第一原発所長、吉田昌郎氏が病に倒れた。

 過労、心労、被曝。

 250日。

 「核火山」と化したフクイチと格闘する過酷な日々だったに違いない。

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 吉田氏の降板を知って、現場の作業員、「ハッピー」さんはツイッターにこう書いた。

 ・ みんなビックリとショックと残念がってた。これからの指揮に影響あるかも…。本店と喧嘩できる人だったのになぁ…。オイラもいつまでいるかわかんないけど一緒に戦った者の一人として悲しいです。
 → http://twitter.com/#!/Happy20790

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 本店と喧嘩できる骨のある人……。

 だから吉田氏は、1号機への海水注入を中断するよう本店に命じられた時、命令を実行しなかったのだ。

 ……指示を受けた吉田所長は「これから首相の命令で注水停止を命令するが、言うことを聞くな」という内容の前置きをし、注水停止を命令、作業員は命令に従わずに海水注入を続けたという。
 毎日新聞 → http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111130k0000e040016000c.html

 1号機への海水注入を止めていたら、核爆発が起きていたかも知れない。

 吉田所長が本店命令を無視してくれたおかげで、私たちはまだ、こうして生きていられる……。

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 NHKが、そんな吉田所長を「槍玉」にあげた。

  → http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111202/k10014352111000.html

 ニュースのリードは、こんな調子だ。

 「東京電力がみずから行った、福島第一原子力発電所の事故調査の中間報告で、事故発生日の夕方、1号機で唯一稼働できる非常用の冷却装置を、運転員の判断で停止したのに、所長らは、深夜まで、冷却装置が動いていると誤って認識していたことが分かりました。安全上重要な情報を共有できなかったことが、事故対応の遅れにつながった可能性があり、詳しい解明が求められます」

 ここでいう「所長らは」の所長とはいうまでもなく、吉田昌郎氏のことだ。

 NHKのニュースの記事の中ほどには、こうある。

 「ところが、事故対応の指揮を執っていた、当時の吉田昌郎所長ら幹部がいる免震棟や、東京電力本店では、深夜まで、冷却装置は動いていると誤った認識を持っていたことが、東京電力の事故調査の中間報告で分かりました」

 つまり、非常用の冷却装置(復水器)が動いているものと誤って認識していたのは、免震棟、および本店に詰めていた東電の幹部全員であり、吉田所長だけでなかった。

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 それなのに、NHKはどうして、ことさら「(吉田)所長らは」と報じたのだろう?

 まるで、現場の責任者である吉田所長に責任をかぶせるような……

 ネットでさっそく、「おお吉田所長がメルトダウンの原因?」(東海アマ管理人氏、ツイッターでのコメント)といった驚きと反発の声が上がったのも、当然のことである。

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 さて、NHKが報じた「東電の事故調査・中間報告」にある、「1号機で唯一稼働できる非常用の冷却装置を、運転員の判断で停止した」のは、すでに明らかな事実である。

 そして、それが停止されたままなっていたことが「事故対応の遅れにつながった可能性」があることも、すでに承知の事実である。

 では、運転員はなぜ非常用冷却装置を停止し、なぜ、それでよしとしていたのか?

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 米国の電気・電子テクロノジー専門誌、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers )が11月初め、その電子版サイト、「フクシマの24時間」と題する、詳細な「再現レポート」を掲げた。
 → http://spectrum.ieee.org/energy/nuclear/24-hours-at-fukushima/0

 そこに、以下のような重要な事実が指摘されている。

 それによると、運転員が非常用の冷却装置(IC=隔離時復水器・非常用復水器)のスイッチを切ったのは、急激な冷却で圧力容器の鋼鉄にストレスが加わることを避けるためで、運転マニュアル通りの操作だった。

 マニュアル通りのスイッチ・オフ……このこともまた(日本でも)すでに報じられ、よく知られていることだが、IEEEのレポートで注目すべきは、それに続く、以下のくだりだ。

 「……しかし、運転マニュアルは3・11の非常事態のために書かれたものではなかった」
 (……but the book wasn't written for the extraordinary events of 11 March.)

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 つまり、3・11当日、フクイチ(あるいは東電)には、非常用冷却装置の通常時運転マニュアルはあっても、(過度の冷却で圧力容器の鋼鉄にストレスが加わったとき、どう対応するか――そのまま冷却を続けるべきかどうかを定めた)事故時運転マニュアルは存在しなかったわけだ。

 責められるべきは、現場で苦闘していた運転員や吉田所長でなく、事故時のIC運転マニュアルを整備していなかった東電本店――東電・大本営の最高責任者たちではないか!

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 この点で私がもうひとつ、疑っていることがある。

 それはあの、事故時運転マニュアル・墨塗り問題に関することだ。

 東電本店の責任者たちは、事故時の運転マニュアルに非常用冷却装置の操作法(手順)を書きこんでいなかったことが発覚することを恐れ、墨で真っ黒に塗りつぶしたのではないのか?

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 今回のフクイチの史上空前の大事故は、「安全神話」の陰で対策を怠って来た東電、そして日本政府――すなわち、この国の「原発国体」の「大本営」ともいうべき「安全地帯」にいて、わが世の春を謳歌して来た最高責任者たちの全体が、超A級戦犯として、自らすすんで責めを負うべき大惨事である。

 太平洋戦争末期、東京の大本営が、硫黄島守備隊の栗林忠道中将の辞世の歌を勝手に改竄したのと同じような、現場を軽視し、あわよくば現場に責任を転嫁しようとする態度は、あってはならない。

 東電大本営は墨塗りや人の顔に泥を塗ることばかりしていないで、自らの罪を潔く告白し、歴史のさばきを受けねばならない。

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 それにしても、「安全神話」のラッパを吹きならし、この世界最大の地震国を「原発列島」にしたあげく、「フクシマ」という史上空前の巨大事故を起こしながら、放出した「死の灰」は「無主物」であるとうそぶき、責任をとらないばかりか、自分たちこそ「最高戦犯」であるにもかかわらず、検察・警察をさしおいて事故報告書なるものを捏ねあげ、「公共放送」の仮面をかぶった御用報道機関に「放送」させる、「原発国体・大本営」の、なんとも醜悪な傲慢さよ!

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 そういえば、戦時中、こんなことがあった。「天気予報」を軍事機密だといって放送を禁止し、台風が来てもNHKは国民にラジオで警告しなかった。

 あのSPEEDI隠蔽問題も、それと同じである。
 

Posted by 大沼安史 at 06:00 午後 |

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