〔フクシマ・NEWS〕 ブルームバーグ 谷口富裕 IAEA前事務局次長(安全担当)にも注目
「天野 IAEA」を批判した12月8日付のブルームバーグの記事は、天野事務局長が2009年の就任以来、原子炉安全対策予算の5倍以上の額を核テロや核非拡散対策に使って来たことを指摘し、「天野IAEA」の原発安全の軽視ぶりを浮き彫りにしているが、天野事務局長にIAEAの運営をいわばバトンタッチしたIAEAの前事務局次長(安全担当)、谷口富裕氏(元通産官僚、現・東工大特任教授)についても厳しい視線を投げかけている。
→ http://www.bloomberg.com/news/2011-12-08/un-s-atomic-regulator-funds-terror-fight-while-fukushima-response-starved.html
(谷口氏の写真は、ブルームバーグ記事にリンクが貼られた、IAEAの人物紹介ページより → http://www.iaea.or.at/About/dg/taniguchi_bio.html )
これは拙著、『世界が見た福島原発災害』(緑風出版)でも取り上げたことだが、ブルームバーグはこの記事で、以下のようなウィキリークスが暴露した、ウイーン発の米国務省機密電(2009年12月、デイビーズIAEA大使発)を紹介している。
「(IAEAの)安全部局は(新たな)献身的なマネージャーとより強いリーダーを必要としている。過去10年間にわたり、安全部局はタニグチ次長の弱いマネジメントとリーダーシップのスキルにより、途方もない損害を被って来た」(注1)
そのうえで、ブルームバーグは、こう報じている。
「これらの米国務省機密電は、IAEAの前事務局次長、トミヒロ・タニグチの信頼性にも疑問を投げかけている。タニグチは、いまフクシマの惨禍を導いたものとして非難されている、日本の原発規制体制づくりに寄与した人物だ」(注2)
米政府のIAEA大使(代表)がワシントンの国務省あて機密電で、IAEAの原発安全担当最高責任者として、いわば「失格」のレッテルを張った男が、日本の原発(非)規制体制をつくり、フクシマの事故を招く一翼を担ったと、ブルームバーグは批判しているわけだ。
ブルームバーグはさらに、谷口氏が2005年12月に行なった演説を引用さえしている。
「ツナミ、洪水、ハリケーン、地震は世界の多くの地域を襲って来ました。そしてあらゆる原子力施設が称賛すべき対応を取って来たのです。極端な自然条件に対しても安全を確保する設計と運転特質は(原発の)安全を危険に陥れることはなでしょう」(注3)
フクシマが起きた今となっては、苦笑することもできない、愚劣で能天気な「空手形」的言明ではある。
ブルームバーグは、米国務省機密電についての谷口氏の弁明――「私は世界中の安全システムの向上のため、多大な寄与をしてきた(I made contributions to significantly improving safety systems around the world.)」――を載せているが、これは今後の日本政府の事故調、あるいは日本国会の事故調のフクシマ事故原因究明活動の中で厳しく検証されねばならない言明ではある。
本ブログ既報のように、米国の調査報道ジャーナリスト、グレッグ・パラスト氏はその新著、『ハゲタカのピクニック』の中で、IAEAの「火災抑制システム」の安全基準が「何者」かによって「改竄」され、おかげでフクシマの事故が悪化したことを暴露している。
→ http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2011/12/post-262e.html
その「何者か」とは誰なのか? フクシマの惨禍の原因にかかわる問題である以上、これまた政府・国会事故調が明らかにすべきことである。
(注1)ブルームバーグの記事原文(関係個所)は、以下の通り。
“The department of safety and security needs a dedicated manager and a stronger leader,” U.S. IAEA Ambassador Glyn Davies wrote in December 2009 in a cable released by Wikileaks, the anti-secrecy website. “For the past 10 years, the department has suffered tremendously because of Deputy Director General Taniguchi’s weak management and leadership skills.”
(注2)同。
They also questioned the credentials of Tomihiro Taniguchi, the IAEA’s former head of safety who helped create the regulatory regime in Japan, which is being blamed for failings that led to the Fukushima disaster.
(注3)同。
“Tsunamis, floods, hurricanes and earthquakes have affected many parts of the world and nuclear installations everywhere responded admirably,” Taniguchi said in a December 2005 speech. “The design and operational features ensured that extreme natural conditions would not jeopardize safety.”
Posted by 大沼安史 at 09:35 午前 | Permalink