〔フクシマ・新聞コラム〕 毎日新聞 余禄「原発事故調査委の中間報告」
チェルノブイリ原発事故の主席調査官をつとめたソ連科学アカデミーのバレリ・レガソフは、ウィーンでの国際会議で事故の原因が運転員のミスと規則違反にあると断言した。だが彼は2年後、1本の録音テープを残して自宅で自殺をとげる
▲「事故について私は明確な結論を下した。それは何年も続いてきたわが国の経済政策の貧困がこの事故を引き起こしたことである」。テープには悲痛な肉声が録音されていたのだ。巨大事故をめぐる調査は国家体制の根幹に巣くう構造的病弊に突き当たることがある
▲さて福島第1原発事故の原因究明などにあたってきた政府の事故調査・検証委員会がまとめた中間報告である。そこには自らの作り出した安全神話に自らが縛られ、過酷事故の想定やそれにもとづく対策を怠ってきた東京電力と国の積年の宿弊が浮かび上がってくる
▲報告は炉心溶融を防ぐ冷却装置を作動させられなかった東京電力のミスを指摘したが、そもそも全電源の喪失が想定外だったがゆえの混乱である。後手に回った住民避難や放射線防護対策でも、深刻な危機の想定と取り組んでこなかった政府の手抜かりが批判された
▲「プロクルステスの寝台」とは、寝台の大きさに合わせて旅人の足を切ったり引き伸ばしたりした古代ギリシャの強盗の話である。原発を襲う巨大津波の想定も原子力の業界では相手にされなかったいきさつを聞けば、この業界には安全の足を切る寝台もあったらしい
▲ならばそのリスク軽視はなぜまかり通ったのか。起こったことの精密な解明とともに、「失敗」の構造的根源を照らし出してほしい来夏の最終報告だ。
Posted by 大沼安史 at 08:44 午前 | Permalink

















