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2011-07-25

〔フクシマ・ノート〕 風下の国

  東京新聞の山本勇二・論説委員が「ベラルーシの苦しみは続く」という、短く、それだけに鋭い、「フクシマ」のこれからをごまかすことなく明示するコラムを書いていた。⇒ http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2011072502000063.html

 読んで、涙が流れた。

 ベラルーシの話だった。チェルノブイリの風下に位置した北隣の国の話だった。

 ベラルーシ科学アカデミーのマルコ博士が、東大主催のシンポジウムで、ベラルーシは国土の23%がセシウム137で汚染された、と語った。23%――とは、国土の4分の1に達する。

 そこで何が起きたか?

 同じシンポジウムで、ベラルーシに5年半住んで治療にあたった菅谷昭・現長野県松本市長(信州大学医学部元助教授)が、こう報告した。

 ――古びた機材しかない病院で、甲状腺がんになった子どもたちが首に大きな傷あとを残す切開手術を受ける現場に立ち会った。「原発事故を知らされずに子どもを外で遊ばせた」「汚染された森のキノコをずっと食べさせてしまった」と嘆き悲しむ親たちの話を何度も聞いた。……

 涙があふれたのは、コラムの結びを読んだときだ。山本勇二・論説委員はこう書いていた。

 「福島第一原発事故の後、子どもたちの健康を守るために何をすべきか。チェルノブイリは多くのことを教えてくれる」

       ☆

 福島県が18歳以下の全県民36万人を対象に甲状せん癌を早期発見するため、生涯調査を実施すると発表した。

 現在、0歳から18歳の、フクシマの赤ちゃん、子どもたち、青少年らが「20歳までは2年ごと、その後も5年ごとに生涯にわたり検査」を受ける。 毎日新聞 ⇒ http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110725ddm001040065000c.html 

 いま18歳のフクシマの若者は2年後、新成人の年に、検査を受ける。0歳の赤ちゃんは新成人になるまで10回も受ける。

 フクシマの子は、フクシマの子どもたちは、フクシマの青少年は、いったいどんな気持ちで子ども時代を、青春を、人生を送ることになるのだろう。

 
 「甲状腺がんは早期手術で大部分が治癒するとされ、県は継続的な検査が必要と判断した。検査は無料」

 早期手術で大部分が治癒される……検査は無料……

 たわけが、何を言うか! 彼ら・彼女らの精神的苦痛はどうなるのだ! 手術代と治療費を本人に負担させるつもりか? 

      ☆

 風下の被爆者の甲状腺がん問題は、福島県内に限らない。

 放射能雲が流れ、「死の灰」が「黒い雨・黒い雪」で降り積もった、全ての汚染地域に共通する問題だ。

 本来、「絶対安全な夢のエネルギー」を推進して来た日本政府が、福島県内を含む全被爆地帯の被爆者に対して責任を取るべき問題だろう。

 ダイイチの事故でヨード剤さえ配らなかったことに頬っかぶりしている日本政府だが、甲状腺癌の問題は避けて通らない。

 これから起きるとわかっている「想定内」の問題だからだ。実際にチェルノブイリで起きたことだからだ。

 もちろん、ことは甲状腺がんに限らない。こんご、被曝によるさまざまな疾病が風下地域を中心に「発症」することになる。

 これほど深刻で悲惨な事態を引き起こした「原発村」の権力集団は、己の罪深さを知らねばならない。

      ☆

 現在、シカゴ大学の教授をしているジャポノロジストで、反核運動に携わっているノーマ・フィールドさんが、日本の映画監督、鎌仲ひとみさんにインタビューして書いた記事の前書きを読んでいて、こんな英単語と出会った。⇒ http://www.japanfocus.org/-Kamanaka-Hitomi/3524 

 downwinder downwinders 「風下のヒバクシャ」の意味だ。 

 ダウンウィンダー(ズ)、原子力災害で「風下」に立たされ、死の灰を浴びた犠牲者(たち)。

 甲状腺癌の手術を受けたベラルーシの子どもたちも、これから生涯にわたって甲状腺検査を受けるフクシマの子どもたちも、風下の子どもたちだ。

 フクイチの事故では放射能雲がうねるうように南下して千葉から東京都内を襲い、汚染は静岡方面にも達した。水を、土を、空気を汚し、内外部被曝で、私たちを――私たちの未来世代の危機にさらしている。

 風下の大地の産物は稲わらを含め各地に出回り、「基準内」の低被爆公害を全国に広げている。

 その意味で、いまや日本全国が「フクシマの風下」になっているのだ。

 日本政府や東電の「原発族」たちも、もう「風上」にはいられない。

      ☆

 「フクシマ」の放射能雲を運んだ「黒い風」は、この国の未来にも吹いて行く。

 フクシマの子どもたちが2年ごと、あるいは5年ごとに生涯にわたって刻むことになる「甲状腺検査の記録」は、時代の風下の未来史である。

 「フクシマ」はことほどさように、日本という国に対し、日本に生きる命に対し、破壊的な影響を及ぼしている(及ぼし続ける)のだ。

 空間的にも、時間的にも。未来を担う日本人の、歴史の可能性に対しても。

      ☆

 日本全国が少なくとも100年にわたって「風下の国」になり続けることが分かったからには、もはや覚悟を決めなければならない。

 「フクシマ」は、はるか太平洋を超えた北米西海岸にも「死の灰」を降らせている。「フクシマ」はいまや国内問題を超えた、地球環境全体の問題である。
 
 北半球全体の汚染は、以下の紹介する「ノルウェー研究所」の拡散動画をみれば分かる。
 ⇒ http://www.woweather.com/weather/news/fukushima?LANG=us&VAR=euradsfc

 汚染が南半球にも急激に拡大したのは、本ブログ既報の通りだ。
 ⇒ http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2011/06/post-029b.html

 責任転嫁して逃げ出せる「風上」はもうどこにもない。

 政府も東電も――そして私たちもまた、「フクシマの風」と向き合うしかないのである。

      ☆

 政府と東電は、甲状腺検査を受けることが決まったフクシマの18歳以下に謝罪すべきである。

 その謝罪からこの国の、「風下」にあって、「風」と向き合い、復活を目指す闘いが始まる。

  ★ ドイツ気象局「フクシマ放射能雲拡散予報( 日本時間は9時間プラス)
 ⇒ http://www.dwd.de/wundk/spezial/Sonderbericht_loop.gif

  ★ 「フクイチ」風向きマップ
 ⇒ http://agora.ex.nii.ac.jp/earthquake/201103-eastjapan/weather/gpv/wind/

Posted by 大沼安史 at 11:15 午前 |

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