〔フクシマ・NEWS〕 AP通信 「運命の24時間」を詳報
⇒ http://news.yahoo.com/first-24-hours-shaped-japans-nuclear-crisis-060035933.html
AP通信は2日、「フクシマ」の事故発生後の「24時間」を詳細に「再現」した調査報道レポート(APインパクト)を報じた。
数十人に及ぶ関係者と、数百ページに及ぶ発表資料にもとづくレポートだという。
主に「1号機」が破局に突き進む経過が報告されている。
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その日、3月11日、1・2号機を担当していたのは、訓練生を含む13人編成の「Aチーム」だった。「Aチーム」は、ひとつの制御室から、両機の監視を続けていた(3・4号機は9人のチームで制御)
地震が始まって1分以内に、運転中の3機に炉心に制御棒が挿入された。
最初の津波が来たのは、午後3時27分だった。13フィート(3.962メートル)の津波だった。海面から33フィート(10メートル)の高さの防波堤は、その第1波を容易にブロックすることができた。
しかし、8分後(3時35分)の第2波は大きなもので、防波堤を越えて構内に押し寄せた。高さ10メートルの「貯水タンク(water tank )」を水没させ、駐車中の車をあちらこちらへ押し流した。50フィート(15メートル)もの津波だったようだ。(大沼 繰り返すが、この15メートルは波高ではなく、遡上高)
第2波が来て2分後の3時37分、「1号機のディーゼル発電機」が止まった。(大沼 1号機のタービン建屋内のディーゼル発電機を指すものとみられる。AP電にはしかし、建屋の山側にあったディーゼル発電機についての言及はない)
発電所の電源が失われた。
4分後の3時41分、2号機の電源の失われた。その数分後、測定値の読み取りができない状態になった。
真っ暗闇の中で作業員たちは「メーンの配電盤が水没し、メーンのケーブル(電線)が泥で引きずり落ちているのを確認」した。「1号機」のタービン建屋の地下は水没していた。
In the dark, workers found a main power switchboard had been submerged and a main power line brought down by a mudslide. The basement of the Unit 1 turbine building was filled with water.
炉心で何が起きているか、正確なところはわからなかった。
3時50分の「Aチーム」の記録はこうだ。「(炉の)水位不明」。注水しないと、炉心の水は蒸発してしまう。燃料棒は溶けてしまう。
2分後(3時52分)の「Aチーム」の2号機に関する記録はより深刻だ。「ECCS=非常用炉心冷却装置の注水、不能(ECCS injection not possible)」
最後の頼みのECCSはダウンしていた。
The emergency core cooling system, the last-ditch backup to keep the core from going dry, was down.
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午後9時ごろ、首相官邸の当局者たちは東電に対して「ベント」するよう要求し出した。東電は躊躇した。
東電は知っていたのだ。放射性物質を「ベント」で放出することは、全国、全世界のの原発産業に対する疑惑を招くものだ、と。
翌12日未明の午前3時5分、海江田経産相は東電の小森常務に「1号機の格納容器のベント実施計画」を公表するよう求めた。
海江田経産相が最終的に東電に「ベント」を命令したのは、午前6時50分のことだった。
現場は放射線量が高く、作業員の手動によるバルブ開け作業を阻んだ。リモートコントロールで開けようとしたが、またも失敗に終わった。停電が原因だったかも知れないが、(「ベント」の)設計上の欠陥もありうることだった。なにしろ、実際の事故場面で、一度も使われたことのないシステムだったのだから。
Surging radiation forced workers to abort their attempt to open the valves manually. Then they tried to open them remotely and repeatedly failed, probably because of the power outage but possibly also a design flaw. The equipment had never been used in a real-world crisis.
(大沼 AP電もまた、GE社製の「ベント」の欠陥の可能性を指摘している。東電はGE社に賠償を請求できるのではないか!)
「1号機」はいまや時を刻む時限爆弾と化した。
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菅直人首相を乗せたヘリが現場に着陸したのは、午前7時11分のことだった。
気の短い首相は東電の武藤副社長、吉田所長らに、なぜベントと海水注入が実施されていないか、その理由を怒鳴り声で問いただした。
He yelled at TEPCO Vice President Sakae Muto and plant chief Masao Yoshida, his onsite escorts, demanding to know why the venting and seawater injection were not happening.
午後2時半、現場の作業員から拍手が上がった。1号機の排気筒から蒸気が立ち上がり、格納容器内の圧力が下がった――「ベント」が機能していることを確認するものだった。しかし、それから30分も経たないうちに、淡水の冷却水が失われる事態を迎えた。(大沼 動かなかったはずの「ベント」のバルブはなぜ開いていたか?……)
At 2:30 p.m., workers burst into applause. Vapor was rising from the Unit 1 stack and containment vessel pressures fell — confirmation that the venting was working. But within half an hour, they ran out of fresh water.
海水を注入するしかなかった。しかし、海水を注入すれば原子炉はもう使えなくなる。東電の当局者はここでも躊躇した。
午後3時36分、1号機で水素爆発が起きた。海水注入は最早避けられないものになった。
2、3、4号機の爆発が続いた。
日本の核の悪夢は、すでに始まっていた。
★ ドイツ気象局「フクシマ放射能雲拡散予報( 日本時間は9時間プラス)
⇒ http://www.dwd.de/wundk/spezial/Sonderbericht_loop.gif
★ 「フクイチ」風向きマップ
⇒ http://agora.ex.nii.ac.jp/earthquake/201103-eastjapan/weather/gpv/wind/
Posted by 大沼安史 at 07:21 午後 | Permalink