〔フクシマ・ノート〕 「相双連合」のクリーンナップ
原発災害の被曝地域にある双葉翔陽(大熊町)、富岡(富岡町)、相馬農業(南相馬市)の3つの高校の野球部員でつくる「相双連合」を、ニューヨーク・タイムズが取り上げ、報じた。⇒ http://www.nytimes.com/2011/07/13/sports/baseball/in-fukushima-japan-a-baseball-story-of-coming-together-and-carrying-on.html?pagewanted=2&_r=1
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ショートを守り、クリーンナップを打つ「コーヘイ」君のことを、お母さんの「トモコ」さんが、こう話していた。
コーヘイ君は、原発から10キロしか離れていない富岡高校の野球部員だった。チームメートは転校したり、野球をやめてしまったり。
「野球、どうするの?」とトモコさんが言うたび、コーヘイ君は言い返した。
「もう野球はやらない。チームがないんだから希望はない」
“I won’t play baseball. There’s no hope because there is no team.”
そんなコーヘイ君の野球への情熱を「相双連合」が呼び覚ました。「相双」で富岡高校出身はコーヘイ君ただひとりだ……。
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取材したタイムズ紙のケン・ベルソン記者は、「彼らは心温まる物語を求める日本の希望の象徴になった(They have become an emblem of hope in a country looking for heartwarming stories.)」と書いていたが、「希望の象徴」とは――まったくもって、その通りである。
確かにそうだ。新しいチームをつくって、プレーを再開したコーヘイ君ら「相双」の高校生たちこそ、この国が未来に託す希望の象徴ではないか。
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タイムズ紙によれば、夏の甲子園・福島大会の期間中、球場の5地点で放射能を測定し、毎時3.8マイクロシーベルトを超えたら順延することになっているそうだ。
雨が降り始めたらすぐに測定する。ダイアモンドにシートを敷く作業はゴム手袋でする……。
これはもう神聖なプレーであるべき野球に対する冒涜である。
日本政府と東電の「死の灰族」は、高校生たちが球春を奪い、いま、ホットスポットと化したグラウンドで、プレーを強いている。
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福島の高校野球まで被曝させた「東京電力福島第一原子力発電所」。
その被爆地から立ち上がり、プレーボールを再開した、「相双」の球児たち。
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タイムズ紙のベンソン記者は(おそらく意識的に)「クリーンナップ(cleanup)」という言葉を、記事の中でさりげなく2度、使っていた。
「クリーンナップ」……「一掃」
野球で育つこの国の未来世代のためにも、原発は一層しなければならない。
(参考) 時事電「合同チーム『思いは一つ』=夏の高校野球大会開会式へ-警戒区域などの福島3校」 ⇒ http://www.jiji.com/jc/c?g=spo_30&k=2011071200061
Posted by 大沼安史 at 10:13 午前 | Permalink