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2011-07-08

〔★ フクシマ・NEWS〕 日本原子力学会の政府・東電批判「声明」 全世界に拡散中 「情報開示の遅れ・不十分さ」が「一般住民の被爆を拡大させた可能性」 いち早く海外へ報告 国内では情報を封印

 日本政府・東電の「情報開示の遅れと不十分さ」が「一般住民の被ばく被害の拡大を招いた可能性がある」などと厳しく批判した「日本原子力学会」の4日付の「声明」が、ジャパン・タイムズによる詳しい報道で、全世界に拡散中だ。

 ジョパン・タイムズが指摘するように、日本原子力学会は日本の「原発エスタブリッシュメント」と近いとみなされていた学界団体。それが日本政府、関係機関、東電の対応に対する批判を公表した意味は大きい。 

 国内ではごくかんたんに報じられただけだったが、「声明」の付属文書には「不適切な事例」が具体的に書き込まれており、住民の被曝問題さえ無視した日本政府・東電の情報隠しの姿勢に、国内はもとより国際社会からも批判が強まりそうだ。
 ⇒ http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/ed20110708a1.html

 日本原子力学会が4日、「原子力安全」調査専門委員会名でプレス・リリースし、ホームページで公表した「情報開示姿勢の改善要請に関する声明」は、政府(機関)・東電の「情報開示の遅れ、不十分さ」を「実例」つきで取り上げ、「強く遺憾の意を表明し、早急な改善を求め」たものだが、具体的には次の2点を挙げている。

 ひとつは、それによる「住民被曝」問題。

 「声明」は「事故の状況や、放射性物質による環境汚染の状況について、開示するべき情報を保持していたにも関わらず適切に開示してこなかった結果、一般住民の被ばく被害の拡大を招いた可能性があるということは、情報に対する信頼性を揺るがす大きな問題である」と述べ、おかげで一般住民の被曝被害が拡大した可能性がある、と指摘している。

 「声明」は「放射性物質による環境汚染の状況について、開示するべき情報を保持していたにも関わらず適切に開示してこなかった」実例を付属文書に、こう記している。

 特に、現地対策本部及び福島県がOFC(原子力防災センター=オフサイトセンター)に残置したとするデータの中には、3月12日の時点で福島第一原子力発電所の炉心が損傷し、かつ原子炉の閉じ込め機能が完全でないという重大な事実を疑わせる、大気ダスト中のTe-132(テルル132),Y-91(イットリウム91) 等の測定値、また、3 月15 日の時点で北西方向での沈着による高い汚染を示す雑草中のI-131(ヨウ素131)、Cs-137(セシウム137)濃度等が含まれている。さらに、対IAEA 報告書では、官邸緊急参集チームは3月15日採取表土及び雑草の高濃度放射性ヨウ素及びセシウムを把握した旨の記述があるが、データをOFCに残置したとする説明と矛盾し、15日採取表土データは公表されていない。(カッコ内は大沼の補足)

 つまり、福島県を含め日本の当局と東電は、3月12日の時点で(当然ながら)リアルタイムで放射性物質の大気放出の事実をつかんでおり、住民被曝の恐れがあることを知りながら発表を怠っていたわけだ。また、IAEAに対する報告書には、3月15日に採取した表土及び雑草から高濃度放射性ヨウ素及びセシウムを把握した旨の記述があるが、その採取表土データも公表されなかった。

 2点目は、国内では情報を封印し、海外から報告があってようやく事実が公表される状態が続いたことに対する批判である。

 この点について「声明」はこう記している。

 「また、原子炉の状況や、サイト内外の放射線強度について、海外での報告を受けて、国内に発表される場面もあり、情報開示プロセスに問題があると言わざるを得ない。このような状況下において、専門家による事故の解明や収束に向けた提言作業に支障を生じさせた責任は重い」

 日本政府・関係機関・東電は日本原子力学会に対してさえも、情報を隠蔽し、海外で明らかになってから渋々、公表する、日本国民をないがしろにする態度をとっていたわけだ。

 「声明」の付属文書はその実例として、4号機の使用済み核燃料プールの「燃料配置」の問題を挙げる。

 付属文書の記述を見てみよう。

 福島第一原子力発電所4号機の使用済燃料貯蔵プールの燃料配置についてである。米国エネルギー省の5月26日付の公開資料には国内で公開されていない福島第一原子力発電所4号機の使用済燃料貯蔵プールの詳細な燃料配置図が掲載され、米国エネルギー省の解析結果が示されており、東京電力から提供されたデータに基づいての解析であることが明記されている。4号機の使用済燃料貯蔵プールの詳細な燃料配置情報は国内ではこれまで開示されてこなかったものであり、4号機の建屋損壊の原因推定に役立つデータである。学術的ニーズがある場合には、国内からの情報提供要求に対しても的確に対応するよう要請する。

 4号機の核燃プールの危険性は、米政府が「80キロ避難圏」を設定した根拠のひとつになった(いまも、なっている)大問題である。

 その問題を検討する基礎情報である、本邦未公開の「核燃配置図」が米エネルギー省の公開文書にはちゃんと載っている!

 これはあまりにも人を(日本人を)舐めきった態度である。日本原子力学会が「遺憾」という言葉で怒りをぶつけるのも当然のことだろう。

 日本原子力学会は7日のプレスリリースで、「『事故調査・検討委員会』の調査における
個人の責任追及に偏らない調査を求める声明」を発表し、真相究明のためには関与した個人に
たいする責任追及」はするな、と釘を刺した。⇒ http://www.aesj.or.jp/info/pressrelease/pr20110707.pdf

 しかし、学会が上記の「声明」で指摘したのは、「ダイイチ」の事故原因に直接関わることではない。
 事故後の住民被曝にかかわる重大な隠蔽工作である。

 事故原因に直接かかわる問題なら、あるいは「免責」も認められようが、住民被曝を「拡大」させた責任は免れないだろう。

 それは、隠蔽を隠蔽する究極の隠蔽につながることだ。
 

 声明 ⇒ http://www.aesj.or.jp/info/pressrelease/pr20110704.pdf
 
 不適切な情報開示の例 ⇒http://www.aesj.or.jp/information/fnpp201103/chousacom/inaeg20110704.pdf

  朝日新聞 「原子力学会、国と東電に改善を要求 情報開示遅れ指摘」
 ⇒ http://www.asahi.com/national/update/0704/TKY201107040499.html

 時事 「情報開示遅れ、不十分」=政府・東電に改善要請-原子力学会
 ⇒ http://www.jiji.com/jc/zc?k=201107/2011070400708

Posted by 大沼安史 at 11:31 午前 |

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