〔コラム 机の上の空〕 「なんてきれいな世界!」
「エジプト革命」をリードした若者グループの連合体、「革命青年連盟」のメンバーのモハメド・アッバスさんが、英紙ガーディアンに、こう書いていた。
「目覚めたら、とても美しい朝だった。2月12日土曜日のエジプトの朝。生まれて初めて僕を含む数百万人のエジプト人は、ムバラクの支配なき国で目覚めた」
「勝利の夜(グラン・スワール)」から一夜明けた朝、エジプトは生まれ変わった……。
「革命」とは、世界が新しい価値を持つものとして生まれ変わることを言うのだろう。新しい価値の可能性の目覚めた人々が生み出す、新しい世界。
⇒ http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2011/feb/13/egypt-celebrate-struggle-not-over
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新しい価値(それは、新しい世界の意味といってもいいだろう)を生み出したのは、若者をはじめとするエジプトの人たちである。
その価値(意味)を、エジプトの人々は新しい言葉として獲得した。
「エジプト革命」はその時点ですでに、勝利していた――と言えるかもしれない。
新しい言葉、新しい主体が生まれていたのだ。
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たとえば、1月18日の時点で、「1月25日にタハリール広場へ集まれ」と呼びかけた、あの若いエジプト人女性、アスマー・マフフーズさん。
彼女は「コーラン」の一節、アッラーも「人が自らを変えない限り、人々を変えられない」(13章「雷電章」11)を引用、個人としての主体の変革を求めていた。
彼女にとっても――ほかの人々にとっても、「タハリール広場」に行くことは、自分が自ら変わることで、世界を変える試みであったわけだ。
新しい言葉を――新しい価値と意味を自ら、「広場」で語ることで、そこに新しい世界を生み出す……。
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どんな新しい言葉(価値・意味)が生まれ、語られていたか?
それは、「FACEBOOK」で「(エジプトで)最も勇敢な少女」として評判になった、次のビデオを見るだけで、分かる。
⇒ http://www.youtube.com/watch?v=jwIY6ivf70A&feature=related
少女は勇気を振り絞って、果敢にも、こう叫び続けたのだ。
わたしたちに何をさせたいんだ、ムバラク
エジプト人全員に、自分の足にキスさせたいのか
明日、こっちの靴で踏んでやる
私たちの金で何するつもり
出て行け!「拷問大臣」
ムバラク お前は終わった、用なしだ
少女の叫びを、周りの青年たちが唱和して繰り返す。
カイロの街頭に、単純明快な、新しい言葉・価値・意味がこだました。
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「エジプト革命」で民衆が(少なくとも第一段階で)勝利を収めたのは、こうした勇敢な声がカイロの石畳の上だけでなく、ネットを通じても(ムバラクがシャットダウンするまでに)響き渡ったためだ。
人々、それぞれの心の中で目覚めた新しい言葉が、一気に社会的に共有された。それが人々の新しい言葉となって、「広場」において表明された。
「うわさの伝播力」をはるかに上回る高速で――すなわち「速攻で」、新しい言葉は、日常会話の語彙になった。
もちろん、別に新しい語彙が発明されたわけではない。古い言葉が新しく、堂々と表明されたのだけのこと。自らの手で実現すべき価値として表明されたのだけのことだ。
「自由」「権利」――
しかし、そのことが――それだけのことが、「偉大な指導者・ムバラク」を、「最も勇敢な少女」の言う、「出て行け! 拷問大臣」に変えた。
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「革命」――つまりに「世直し」にとって、何が決定的に重要なのか?
それは、やはり新しい価値が、意味が、新しく語られることなのだ。
「広場」において!
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一足早く、「ジャスミン革命」に勝利したチュニジアでは、首都チュニスの夕方の座り込みで、アメル・マスルーチさんという若い女性歌手が、自分の持ち歌を歌っていた。
⇒ http://www.youtube.com/watch?v=xdny0FTBohg&feature=related
アメルさんは、パレスチナに連帯する歌などを歌って来た社会派の歌手。
一人立って歌った歌は、「私はまだ見ていない」という歌だった。
たぶん、これまで見ることのなかった、新しいチュニジアを自分たちでつかみとろうと歌った歌だ。
アメルさんは、キャンドルの炎を消すまいと手で覆いながら歌い続けていた。
ユーチューブで流れたアメルさんの歌が、言葉が、チュニジアの人々を勇気付けたことは間違いない。
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なんてきれいなカイロの朝、そして、なんてきれいなチュニスの夕べ!
世界には、人々の心に響き渡る言葉があることを、新しい世界を生み出す言葉があることを、チュニジア、エジプトと続いた革命の伝播の中で、(世界の――極東の)私たちは知った。
なんてきれいな日本の朝も、新しい言葉・価値・意味とともに、やがて必ず、来る。
Posted by 大沼安史 at 08:24 午後 3.コラム机の上の空 | Permalink

















