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2011-02-09

〔コラム 机の上の空〕 カイロ タハリール広場のマルチチュード

 エジプトの民衆プロテストが開始されて半月が過ぎた。
 エネルギーは衰えない。⇒ http://www.guardian.co.uk/world/2011/feb/08/egypt-protest-crowds-mubarak-power

 なぜ、だろう?

 エジプトの作家であり精神科医のナワル・サーダーウィ女史(79歳)は言った。⇒ http://www.democracynow.org/blog/2011/2/7/we_became_one_in_the_street_leading_egyptian_feminist_nawal_al_saadawi_says_egyptians_are_more_united_than_ever

 「私は医者だ。精神科医だ。そして作家だ。私は自分を観察できる。その私が疲れを感じない」

 女史は続けてこうも語った。「これがいつもの状況なら、私は疲れ果てているだろう。しかし、私は今、幸せだ」

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 サーダーウィー女史は、カイロのタハリール広場で、こんな場面を目撃した。

 「広場に血が流れた。しかし、負傷者を、医師たちは、医師たちの委員会は、広場のそばの病院に運びました。医師たちはみなボランティアです。そして民衆が――あっと言う間に、数分以内に、脱脂綿や包帯、薬品を持って来たのです。たったの数分で……信じられます?」

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 信じられないことが起きたのだ。信じられないことが今も起きている。

 英紙ガーディアン(電子版)の「スライド・ショー」の写真を見ていただきたい。

 ムバラク打倒を叫ぶ民衆に祝福される、結婚したてのカップルの笑み。⇒ http://www.guardian.co.uk/world/gallery/2011/feb/08/egypt-protest#/?picture=371549188&index=10

 国旗の小旗を振る少女の懸命な視線。⇒ http://www.guardian.co.uk/world/gallery/2011/feb/08/egypt-protest#/?picture=371538399&index=8

 最年少の犠牲者、8歳で命を奪われたモハメド・エーアブ・アルナガール君の写真入りポスターを掲げ、小さなロウソクを手に無言の抗議をする人々。⇒ http://www.guardian.co.uk/world/gallery/2011/feb/08/egypt-protest#/?picture=371561857&index=15

 エジプトは犠牲者の死を悼みながら、未来に向け、新しく生きようとているのだ。

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 タハリール広場は夜も眠らないと、ニューヨーク・タイムズのルポ記事に出ていた。歌が、演説が、詩の朗読が、朝まで続いているのだ。⇒ http://www.nytimes.com/2011/02/07/world/middleeast/07square.html?ref=egypt

 モハンマド・アリという男性が、タイムズ紙の記者にこう言った。

 「勝つか負けるか分からない。やつらには権力がある。しかし、われわれは弱くはない」

 そして、こう付け加えた。「民衆の言葉は銃よりも強い」

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 「エジプト革命」を点火したのは、26歳の女性だった。⇒ http://www.democracynow.org/2011/2/8/asmaa_mahfouz_the_youtube_video_that

 アスマー・マフフーズさん。

 タハリール広場に1月25日に集まれ! 腐敗したムバラク政権に抗議しよう!

 アスマーさんはユーチューブのビデオで、こう訴えたそうだ。

 「私はタハリール広場に行く。私は広場に一人で立つ。そして旗印を掲げる……私たちと一緒に行こう。あなたの権利を、私の権利を、あなたの家族の権利を要求しよう。私は1月25日に行く。そして言う。腐敗はもうたくさん、独裁はもうたくさん!――と」

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 今回の「エジプト革命」の主役は、若者たちだ。

 若者たちの奔放なエネルギーは、ムスリム同砲団のような反政府組織さえも超える勢いを示している。⇒ http://www.nytimes.com/2011/01/27/world/middleeast/27opposition.html?_r=1&ref=global-home

 しかし、若者だけが前に出ているわけではない。

 若者も老人も、子どもも親も、男も女も、宗教的な人も、世俗的な人も、富者も貧者も、あやゆるエジプト人が街頭に出ているのだ。 ⇒ http://www.independent.co.uk/opinion/commentators/fisk/robert-fisk-secular-and-devout-rich-and-poor-they-marched-together-with-one-goal-2201504.html

 それだけムバラクの独裁が社会全体を窒息させていたわけだが、それにしてもこの社会連帯の縦横無尽さは凄い。

 「ムバラク派(少数派)=旧体制」と「全エジプト(多数派)=新体制」の2重権力状態が出来ている。

 狭義の階級闘争を超えた、全民衆的な決起!

 タハリール広場は、新しいエジプトの、新しい首都だ。

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 ではなぜ、全民衆的な決起がエジプトで起きているか?

 それはムバラクという独裁権力が実は「アメリカ帝国」の傀儡に過ぎないことを――エジプトは実は「アメリカ帝国」によって支配された国であり、そうである以上、反ムバラクの戦いは全民衆的な規模にならざるを得ないからだ。

 そう、そうなのだ。アントニオ・ネグリの言う、「帝国」に抗するあの「マルチチュード」(群衆)が、エジプトに出現したわけだ。⇒ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%89

 しかし私は、この「マルチチュード」という言葉を聞くと、反射的に新約聖書を思い起こす。

 福音書に書かれたキリストに従う「群衆」を、英訳聖書ではどう表記しているか?

 そう、そうなのだ。multitudes と書かれているのだ。

 ローマ帝国支配下のパレスチナと、アメリカ帝国支配下ののエジプトと。

 そこに現れたマルチチュード!

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 エジプトはアメリカの全世界支配の要である。だから、オバマ政権は取り乱し、安定を取り戻そうと焦っているのだ。

 そこに現れたマルチチュード!

 しかし、そのマルチチュードは、ナイルの流域に限定されたものではない。チュニジアへ、シナイ半島へ、サウジへ、欧州へ、アメリカへ、アジアへつながるものだ。

 時代は――世界は変わろうとしているのだろう。

 カイロのタハリール広場は、世界民衆のマルチチュード連帯の輪の中心に息づくものとなった。

 新しい時代と世界は、タハリール広場の連帯から、新しい政治はタハリール広場の民衆委員会から生れつつあるのだろう。
 ⇒ http://www.independent.co.uk/opinion/commentators/fisk/robert-fisk-exhausted-scared-and-trapped-protesters-put-forward-plan-for-future-2205079.html

Posted by 大沼安史 at 08:40 午後 3.コラム机の上の空 |

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