〔コラム 机の上の空〕 「エジプトの若い世代は数百万倍も賢い」
カイロ入りして取材を続ける、英インディペンデント紙のロバート・フィスク記者は言うまでもなく、中東報道の第一人者だ。
フィスク記者が「タイムズ」の記者として中東に赴任したのは、1976年のこと。
レバノンの停戦交渉取材でカイロ入りし、レストランで生野菜を食べて、腹痛と発熱に苦しんだ。
起き出して、街を歩いたら、バス停で倒れた。そのまま5時間、昏倒していた。
カイロはもうこりごり。「タイムズ」あての辞表もしたためた。
その時、辞めていたら、「中東問題の第一人者」は生まれず、今回の「カイロ報道」も生まれなかった。
⇒ http://www.independent.co.uk/opinion/commentators/fisk/robert-fisk-full-circle-on-tahrir-square-as-history-comes-in-gulps-2212531.html
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そのフィスク記者(65歳)が、エジプト・ジャーナリズム界の大御所ともいうべき、不屈の記者、モハメド・ヘイケル氏(87歳)の自宅を訪ね、インタビューした。
サダトに投獄され、ムバラクに釈放され、そのムバラクを批判し続け、エジプトの国内メディアから、これまで30年間も追放されていた。
その間、精力的な執筆活動を続け、中東の現代史のさまざまな事件を、英語の本にまとめて来た。
ムバラク体制はやがて「爆発」して崩壊する――ヘイケル氏は、こう言い続けて来た。
それに賛同できないフィスク氏は、シニカルに反応し続けて来た。
ヘイケル氏は、インタビューに訪れたフィスク氏に、こう聞いたそうだ。
「まだ、自分が正しいと思うかね?」
フィスク氏は言った。「いや、私は間違っていました」
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インタビューでヘイケル氏は言った。
「私は完璧に信じていた。体制は爆発するだろうと」
「今回のことで私が驚かされたのは、それが数百万人の運動だったということだ」
「私は自分の目で確かめられるとは信じていなかった。民衆の立ち上がりを見ることが出来るとは信じていなかった」
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フィスク氏のインタビューに対するヘイケル氏の答えで、僕が凄いなと思ったのは、エジプトの若い世代に対する氏の発言である。
「カオスになるかも知れないと心配していた。しかし、エジプトに新しい世代が生まれていた。私たちよるも数百万倍も賢い世代が登場した。彼らは穏健に、知的に行動した」
そしてヘイケル氏は、こう続けた。
「(カオスによる)真空は起きなかった。爆発は起きなかった」と……。
つまり、ヘイケル氏は、自分の予言は当たらなかったと言ったのだ。
いい意味で、当たらなかったと。
ムバラク体制は崩壊したが、エジプト社会の「爆発」は――大混乱は起きなかったと。
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若い世代による数百万倍も賢い革命――それが今回の「エジプト革命」だとヘイケル氏は言ったのだ。
「システムは変わらなければならない。そして人々は自分たちの求めるものを、(今回の決起で)知らしめた」
「世界も最も近代的なテクノロジーが、今回の決起に使われた」
「人々は何か違ったものを求めている」
ヘイケル氏の言わんとするところを、僕なりに解釈すればこうなる。
今回の「エジプト革命」は、これまでパターンを超えた、何か違ったものである、と。
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僕はこのヘイケル氏の見立てに共感を覚える。
「革命」というものが、「爆発」から、「コミュニケーション連帯」による「解体構築」へ様変わりしたのではないか、と言いたい気さえする。
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ヘイケル氏の「人々は何か違ったものを求めている」という指摘を聞いてインタビューを終えたフィスク氏を、ヘイケル氏はエレベーターのところまで見送ってくれたそうだ。
その時、フィスク氏は、ヘイケル氏にもう一度、こう言ったそうだ。
「あなたの言っていることは、正しい」
2人のベテラン・ジャーナリストの再会は、「エジプト革命」に対する見方の一致の確認で終わった。
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僕がカイロにいた20年前、ヘイケル氏はたしか、カイロ市内中心部のナイル河畔の橋のたもとにある、白いマンション(アパルトマン)に住んでいた。
フィスク氏との会見は、タハリール広場からそう離れていない、あのアパルトマンで行われたのだろうか?
フィスク氏に「もっと若かったら、あの若者たちと広場で一緒にいたのに」と語ったヘイケル氏。
これまでとは何か違った「エジプト革命」の行方を見守り、それをぜひ本に書いてもらいたいものだ。
来るべきその本は、「爆発」の連続だった、エジプト及び中東の近現代史を振り返り、それとは違った未来を指し示すものになるはずである。
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ヘイケル氏 Wiki
⇒ http://en.wikipedia.org/wiki/Mohamed_Hassanein_Heikal
Posted by 大沼安史 at 08:59 午後 3.コラム机の上の空 | Permalink

















