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2011-02-13

〔いんさいど世界〕 エジプト パンと怒りの革命

 もう20年も前のことだ。新聞社の特派員としてカイロに赴任した翌日、私は早朝、ホテルを出て、街を歩き回った。

 路上で「アイシュ」が売られていた。エジプトの平たいパンだ。買って立ち食いした。

 「アイシュ」――には「命」の意味もある。

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 「カイロ」は、アラビア語では――ということは地元の人は「アル・カーヘラ」と発音する。意味は「勝利」。

 今回のムバラク追放で、カイロは文字通り、勝利の街、アル・カーヘラになった。

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 なぜ、「エジプト革命」が民衆の勝利のうちに、その第一幕を終えることができたか?

 なぜ、圧倒的な反政府マルチチュードが全国的に生まれたか?

 理由のひとつは、「アイシュ」に代表される、食べものの価格の高騰である。

 エジプトでもまた、食料品の価格はこれまで3年間にわたり、上昇の一途をたどって来た。「食料インフレ」は年17%にも達している。

 貧困が蔓延し、全人口の4割が一日2ドル以下で暮らすエジプト。

 民衆の多くは、食べるものさえ買えず、「命」を維持することも難しい、切羽詰まった状況に追い込まれていた。

 ⇒ http://news.yahoo.com/s/ap/20110127/ap_on_bi_ge/ml_egypt_protests_economy

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 では、エジプトの「食料インフレ」を引き起こしたものは何か?

 ムバラク政権の無能もさることながら、もっと問題なのは、世界的な「フード・バブル」である。

 アメリカの在野のエコノミスト、エレン・ブラウンさんによれば、「フード・バブル」は、「ウォールストリートが「ドル・キャリ(ドル・キャリートレード)」で、怒涛の「買い投機」を続けて来たせいで発生した。

 ⇒ http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=23079

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 ムバラクはアメリカのディクテート(意)の通りに動く、傀儡ディクテーター(独裁者)として、中東・アラブ世界での「アメリカ=ワシントン」の権益を守る、(アメリカの政治権力にとっては何者にも代えがたい)死活的に重要な役割を果たして来た。

 それが皮肉なことに、アメリカ世界権力のもうひとつの源泉である「アメリカ=ウォールストリート」の金融権力の食料投機で体制的な危機に追い込まれ、総決起したエジプト民衆に石もて追われることに……。

 ウォールストリートの暴走は、アメリカの政治権力が長年にわたって築き上げて来た、「ムバラク」という中東の防波堤を、一気に決壊させてしまった形だ。

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 こうして見てくると、問題の根は、ムバラク政権の腐敗を超え、ウォールストリートをコントロールできない、オバマ政権の無能にあった、と言える。

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 アメリカとしてはエジプトを、今後とも「中東の防波堤」として使い続けたい考えだろう。

 オバマはだから、エジプト情勢を沈静化するため、「ムバラク斬り」を急いだのだ。

 今回の「ムバラク辞任」は、ムバラク・スレイマン禅譲路線に反発する、エジプト軍の将軍たちの「クーデター」だとする報道も出ているが( ⇒ http://www.nytimes.com/aponline/2011/02/11/world/middleeast/AP-ML-Egypt-The-Coup-Analysis.html?ref=aponline )、将軍たちの背後にアメリカの意志があったことは間違いない。

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 とりあえず全権を掌握したエジプト軍だが、最高軍事評議会の議長となった、タンタウイという元帥は高齢(75歳)の上、「ムバラクのプードル」と言われて来た人物。

 ムバラク子飼いの将軍たちが率いるエジプト軍に政治・経済危機を乗り切る能力を期待することはできない。

 となると、エジプトの経済危機は――食糧危機はさらに深化して行く。

 そして軍首脳がもし、自由選挙の実施を拒むようなことがあれば、「エジプト革命」は第2幕の本番に突入することになる。

 軍自体の統制が崩れ、パレスチナ=イスラエル問題が触媒になって、今のところは表面化していない「反米」が一気に噴出し、全アラブ世界を巻き込んだ動乱へと発展する可能性、なきにしもあらず、だ。  

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 カイロにいた頃、ある夜、ある場所で、エジプト人男性の歌を聴いたことがある。

 ホテルのバーで、ではなく、ごく内輪の、飲食の席でのことだ。

 歌った男性は、プロ歌手ではなかった。ふつうのエジプト人。

 腹の底から発せられた、うめきのような歌だった。

 私はアラビア語が分からないから、そこに誘ってくれた人に、歌の内容を聞いて驚いた。

 欧米の支配者に対する、激しい怒りに満ちた歌だった。 

 

     

Posted by 大沼安史 at 12:43 午前 1.いんさいど世界 |

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