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2011-02-26

〔いんさいど世界〕 世界はひとつ 痛みもひとつ One World, One Pain

 米ウィスコンシン州の州都、マディソンで19日、共和党のスコット・ウォーカー新知事が強行する「組合つぶし」に抗議する大規模なデモが行われた。

 労組員、学生ら8万人が結集した州議会議事堂の前で、カイロのタハリール広場で撮影された一枚の写真が、参加者の間で回覧された。

 若いエジプト人の男性が、英語でこんな連帯の言葉を掲げている写真だった。

 Egypt supports Wisconsin workers: One world, one pain.

 エジプトはウィスコンシンを支援する。世界はひとつ、痛みもひとつ。

 エジプトの民衆の決起と、ウィスコンシンの州政府職員らの抵抗を、ひとつにつないだ言葉だった。

(「デモクラシーNOW」、エイミー・グッドマンさんのコラム参照 ⇒ http://www.truthdig.com/report/item/uprisings_from_the_middle_east_to_the_midwest_20110222

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 経済学者のポール・クルーグマン教授もニューヨーク・タイムズのコラムで、共和党連邦下院議員の、こんな素朴な驚きの声を紹介していた。

 「まるでカイロがマディソンに移って来たみたい」だ。

 共和党を支えるアメリカの保守派のイデオローグたちは、エジプトの民衆革命を非難し、ムバラクを支援するようオバマに迫った。

 そんな保守派の「ネオ・リベ=コン」どもにとって、「カイロ」が「マディソン」にやって来たことは、おぞましい悪夢でしかないのだろう。

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 エイミー・グッドマンさんの上記コラムによると、19日のデモのプラカードには、「ウォーカー(州知事)は、ミッドウェストのムバラクだ」とも書かれていたという。

 アメリカのミッドウェスト(中西部)、ウィスコンシンのウォーカーと、中東(ミドル・イースト)のムバラクを、ひとつに繋いだ言葉だった。

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 なぜ、エジプトとウィスコンシが、ムバラクとウォーカーが、ひとつに結びつくのか?

 クルーグマン教授によれば、「オリガーキー(oligarchy 少数独裁、あるいは寡頭政治)」の問題が、両者に共通するものとしてある。

 「オリガーキー」、すなわち権力を握る少数の独裁者が、デモクラシーを空洞化させ、民衆の権利を踏みにじっている……

 これが、これまでのエジプトと、現在のウィスコンシンに共通するものなのだ。
 
 タハリール広場の若者は、アメリカの(そしてウィスコンシン)の権力の正体をちゃんと見抜いていたのだ。

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 それでは「アメリカの権力」の正体である、オリガーキーとは何か?

 クルーグマン教授によれば、ワシントンの政治屋どもに規制を外させ、自分らは大儲けした挙句、バブル崩壊でアメリカの経済を――ウィスコンシンの財政を――イッキに破局に追い込んだ「超リッチなプレーヤーたち(superwealthy players)」による少数独裁に他ならない。

 「組合つぶし」に狂奔する、スコット・ウォーカーなる共和党のウィスコンシン州知事は、アメリカのオリガーキーを構成する、そうした「超リッチなプレーヤーたち」の「手先」に過ぎないのだ。

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 先日、ウォーカー知事が、オリガーキーの「手先」であることを自ら証明し、広く天下に知らしめた「事件」があった。

 州知事選でウォーカー知事に多額な寄付をしたみられる、アメリカ有数の大富豪、「デイビッド・コーク」を名乗る男と、電話で親しく、こんな話を交わしたことが暴露されたのだ。

 アメリカの調査報道ジャーナリストのイアン・マーフィーさんが「デイビッド・コーク」氏になりすまし、「組合退治」に立ち上がった知事に電話を入れ、会話の全てをネットにアップしたのだ。

 「コーク」氏 野球のバット、持って行ったらいい。私なら、そうするね。

 ウォーカー知事 オフィスに一本、持ってますよ。(バットでガツンとやれたら)最高ですね。私の名前を書いたバットで一発、ドカンとやってもらいますか。

  ………………

 「コーク」氏 で、これ、私からの提案だが、連中をたたきのめしたらね、カリフォルニアに飛んでおいで。招待するから。いっぱい楽しませてあげよう。

 ウォーカー知事 いいですね。そいつは素晴らしい……いろいろご支援、ありがとうございます。私たちの自由を取り戻すことですから……

 「コーク」氏 全く、その通り。それにね、われわれはちょっとばかり既得権を持っているしね(笑い)

 ウォーカー知事 百万遍もサンクスです。

 「コーク」氏 バイバイ

 ウォーカー知事 バイ

  コモンドリームズ ⇒ http://www.commondreams.org/headline/2011/02/23-2
  ユーチューブ ⇒ http://www.youtube.com/watch?v=WBnSv3a6Nh4&feature=related
 
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 名前をかたられたデイビッド・コーク氏とは、兄のチャールズ氏とともに「コーク兄弟」として知られる、アメリカの実業家であり、超富豪だ。

 保守派NPO「アメリカのための繁栄」を通じるなどして、ウォーカー知事ら、とくに「茶会」系の共和党右派を資金面でバックアップ、「小さな政府」「地球温暖化デマ論」など保守派の政治運動を支えて来た人物だ。

 ことし1月、カリフォルニアのランチョ・ミラージュの別荘で、保守派の会議を主催した時には、環境団体の「グリーンピース」が飛行船を上空に浮かべて抗議。

 2月には、「コーク社は地球温暖化を否定する団体への資金提供を中止します」との、ニセのプレス・リリースがネットに乗る
 ――など、全米のリベラル・環境保護派から目の仇にされている人物だ。
  
 アメリカ株式会社ならぬ「アメリカ多国籍企業」の看板(ポスター・チャイルド)と呼ばれているほど。

 つまり、ウィスコンシンのウォーカー知事の「組合つぶし」の背後には、コーク氏に代表されるアメリカのオリガーキーが控えており、それを知っているから、(アメリカのオリガーキーの犬だったムバラクの専制下にあった)エジプトの若者も、あの連帯の言葉を書いたのだ。

 世界はひとつ、痛みはひとつ。
 エジプトとウィスコンシンの民衆の痛み、苦しみは同じだ――と言ったのだ。

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 英国のジャーナリスト、ニコラス・シャクソンさんが先ごろ刊行し、世界的な反響を呼んでいる『宝島(Treasure Islands)』という本がある。副題は「タックス・ヘイブンと世界を盗んだ男たち」。

 米欧の多国籍企業、及び超富裕層がタックスヘイブンを使って「合法的(?)な脱税」を続け、まるまると太り続けている実態を暴き出したレポートだが、そこに、こう書かれている。

 「アメリカのトップ0・1%の高額所得者に対する税率は1960年に60%だった。それが2007年には33%に下がった。所得が大幅に増えているにもかかわらず、だ。その0・1%が1960年の税率で所得税を払うだけで、連邦政府はその年、2810億ドルの増収となったはずだ」

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 世界はひとつ、痛みもひとつ――元凶もひとつ。

 オリガーキー、つまりは「金権少数独裁」。

 むろん、これはなにもエジプト、ウィスコンシンに限ったことではない。

 年金デモが起きたフランスにも、学生デモが起きた英国にも共通することなのだ。

 そしてそれは、大企業に減税し、庶民に増税する、この日本にも通じること……。

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 グローバル・オリガーキー。

 この支配を打ち破る闘いは、民衆の抵抗運動として始まる。それはどこでも、いつでも同じなのだ。

 世界はひとつ、痛みもひとつなら、闘いもひとつである。

 

Posted by 大沼安史 at 04:39 午後 1.いんさいど世界 |

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