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2011-01-14

〔コラム 机の上の空〕 オバマ 「雨上がりの水溜り(Rain Puddles)」 追悼演説

 雨上がりの水溜りは、子どもたちの遊び場だ。雨が止んで、遊びに出た子どもたちの前に用意された、雨が残した水の遊び場。
 
 水面は鏡になって青空を映し出す。

 その真ん中へ、ジャブジャブ、ハダシで、ゴム長で入り、水遊びをする喜び。写像を、グニャグニャにして、もう一度、戻す喜び。

 雨の少ない砂漠性気候のアリゾナであれば、そのうれしさはまた格別のものだろう。

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 アリゾナ州ツーソンで起きた銃乱射事件で、現地入りしたオバマ大統領が犠牲者の追悼式で演説した。

 演説の結びでオバマ大統領は最年少の犠牲者、9歳の少女、クリスチーナさんを追悼し、こう語った。

  If there are rain puddles in heaven, Christina is jumping in them today.

  もしも天国に雨上がりの水溜りがあるなら、クリスチーナはきょう、きっと飛び込んでいることでしょう。

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 クリスチーナさんは2001年9月11日に生れた子だ。その「9・11」に誕生した50人のアメリカの子どもたちの写真が、1冊の本になっている。『希望の顔(Faces of Hope )』という名の本だそうだ。

 クリスチーナさんはその本に写真が載った1人。

 そして、その本には、その子らのための、シンプルな大人たちの願いが――「雨上がりの水溜りに飛び込んでね(I hope you jump in rain puddles.)」が、記されているという

 オバマ大統領は、このことに触れ、クリスチーナさんに「天国の水溜り」で遊んでほしいと、願いを語ったのだ。

 (このユーチューブの最後の部分を観てください ⇒ http://www.youtube.com/watch?v=bXd4-9AkWL0 )

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 オバマ大統領の演説はたしかに、アメリカの渦巻く憎しみや苛立ちを洗い清める感動的なものだった。

 アメリカのメディアが、スペースシャトル「チャレンンジャー」空中爆発事故のあとのレーガン大統領の追悼演説に匹敵するものと讃えていたが、それ以上のものとも言えるくらい、心を揺さぶる感動的なものだった。心の傷を癒される思いをした人も多かったはずだ。

 歴史に残る悲劇的な事件は、歴史に残るオバマの名演説を生んだ――。

 「レイン・パドル演説」――アリゾナ大学でのオバマの追悼演説は、AFP通信や、その他、世界のメディアによって、早くもそう呼ばれている。
 (以下はホワイトハウスが発表した演説のテキスト。オバマ大統領は、この原稿をもとに、アドリブを交え演説した ⇒ http://www.nytimes.com/2011/01/13/us/politics/13obama-text.html?_r=2&sq=obama speech arizona&st=cse&scp=10&pagewanted=print)

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 この演説を聴いて私は、オバマ大統領がクリスチーナさんに言及したことで、アメリカの現代史の悲劇の本質が、明示的ではないにせよ、否定できない形で、そこに示された――と思った。

 「9・11」の子のクリスチーナさんは、アメリカの「希望の顔」の子どもだった。

 その彼女が、同じ土地に住む、22歳の青年のテロ行為によって命を奪われた。

 テロを乗り越えるはずのアメリカの希望は、テロによって失われた。

 この閉塞は、恐ろしい。

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 アメリカは9年前の「9・11」以降、憎悪に燃え上がる国になった。暴力的な言辞が飛び交う国になった。

 「9・11」の政治は――「9・11」後の「テロとの戦い」は、つまり、希望を、平和を、生み出さなかったのだ。

 「茶会」のサラ・ペイリンの、敵対者に「照準」を合わせる戦闘的な言辞に煽られるように、アリゾナのツーソンの地で引き鉄が引かれ、希望であるはずのクリスチーナさんの命が奪われた。

 22歳が9歳を殺す、呪われたアメリカ!

 9年後に最悪の国内テロを生み出した、「テロとの戦い」の、この運命のような悲劇的な結末!

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 オバマ大統領は演説で、クリスチーナさんが「この国の未来をつくる日を垣間見始めた矢先に」銃弾に斃れたことを語っていたが、しかし、それは、弱冠22歳でテロリストと化したアリゾナの青年についてもいえることだろう。

 この青年は、「9・11」のとき、13歳だったはずだ。

 アリゾナの少年は、そのとき、世界貿易センターの崩壊を、そしてそのあと、それに続いて起きたイラク戦争の残酷を、さらには今なお続くアフガン戦争の現実を、これまで9年間、目の当たりにし続けて来たはずだ。

 そういうテロとの戦いを戦い続けるアメリカに――マッチョでなければ生きられないアメリカに、夢見るはずの少年は、未来のない青年となって生きて来た。

 この青年にも、「雨上がりの水溜り」があったはずだし、なくてはならなかったことは言うまでもなかろう。

 しかし、この青年に、平和な青空のような心は宿らなかった。

 この現実を、オバマ大統領は(そして、私たちもまた)事実として想起しなければならない。

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 このオバマの「天国の水溜り」レトリックと、パキスタンで無人機を使い、「ヘル・ファイア(地獄の業火)」ミサイルを撃ち込んでいる、「地上の地獄の炎」の現実を重ね合わせ、批判する指摘が早くも現れている。
 ⇒ http://www.chris-floyd.com/component/content/article/1-latest-news/2076-speech-pathology-rain-puddles-in-heaven-hellfire-on-earth.html    

 それはそれで全く正しい。

 暗雲が去った、平和で希望の空を映し出す水溜りの鏡は、アメリカが――オバマのアメリカが、社会を引き裂きながらなおも続ける「テロとの戦い」の現実を映し出すものでなければならないはずだから。

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 クリスチーナさんの「雨上がりの水溜り」は、オバマが言うように「天国」に、ではなく、この「地上」にこそ、なければならないものだ。

 その「鏡」は、いま、オバマに――オバマを最高司令官とする「戦争の家=アメリカ」の軍事権力に、真っ直ぐ向けられている……。

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 オバマの名演説がこの先、語り継がれて行くことはたしかだ。しかし、アメリカの現状を映し出す「クリスチーナの水溜り」もまた、消えはしまい。

 アメリカの人々は――そして世界の人々は、「クリスチーナの水溜り」を、この地上における希望の在り処として語り継ぐことだろう。

 そうすることで……そうなることで、彼女は再び、アメリカの――世界の、「希望の顔」となるのである。

 (クリスチーナさんの映像は ⇒ http://www.youtube.com/watch?v=nEyKHe-ZRZk 母親のロクサーナさんが電話インタビューにこたえている……)

Posted by 大沼安史 at 06:53 午後 3.コラム机の上の空 |

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