〔ほんとのコント〕 巣立て! 新卒浪人
北海道の標準的な某大学の学長 そろそろ卒業式じゃのぉ~! 式辞のスピーチ原稿、そろそろ考えてくれよな! 景気のいいのを、ひとつ、頼んだぞ!
事務長 そ、そういわれても……! こんな就職状況じゃあ……
学長 うちの大学の就職内定率、50パ、そこそこって話だろ?! 気にしない、気にしない! 大学は最高学府、高邁な理想を掲げる高等教育機関なんだから、ゴリッパなゴタク並べりゃいいんだよ!
事務長 はあ? でも、たとえば?
学長 そうさなあ、こういうのはどうだ?! 「諸君、新卒失業に怯えるなかれ! 諸君は永遠の高等遊民たれ!」
事務長 はあ?
学長 人間、ハダカ一貫、フンドシ一丁、パンツ一丁、下着一丁で生きなくちゃいかん! ボーイズ・ビー・アンダーシャツ!
事務長 そ、それ、アンビシャスじゃないですか?
学長 昔、そんなこと抜かしたアメ公がいたらしいが、ま、とにかく、超氷河期だからこそ、「熱い言葉」が必要なんじゃ。
事務長 たとえば?
学長 そうじゃな、「禍転じて福となす」とか「起死回生」とか「今に神風が吹く」とか、「野球と就職は9回裏から」とか、「宝くじもあるでよ」とか。
事務長 さ、さすが学長! と、とくに「宝くじもあるでよ」はすごい! た、たとえとはいえ、す、すばらしき、ご発想!
学長 たとえ……? たとえじゃなくて、わしゃ、マジで言っとるんじゃよ。卒業式ではの、新卒浪人諸君には卒業証書に「新春・人生バラ色・卒業おめでとう・あとくされなし宝くじ」を一枚つけて手渡すつもりじゃ!
事務長 で、でも3月の卒業式シーズンに、そんな宝くじ、ありましたっけ?!
学長 事務長のくせに、知らんのか? この前、文科省から通達、来ておったぞ。「天下り内定率」100パ維持のため、「新卒支援宝くじ」発売するそうじゃ。くじ会社つくって、の。天下りの指定席を10人分、ガッチリ確保するそうじゃ。なんでも、最低2000万円の年収は保障するそうじゃの。
事務長 す、すごい……(わたしの2倍もの年収……)
学長 この国はの、そういう国なんじゃ。だからの、わしは卒業式で新卒浪人諸君に対して、ことしはとくに、こうハナムケの言葉を言うつもりなんじゃ。
「君たちにお渡しした宝くじは、たぶん(外れて)紙くずになるだろう。しかし、君たちは間もなく、一枚の紙を手にする。投票用紙という一枚の紙を手にする。それは、くじではない。君たち自身が君たちの運命を決める、一枚の紙だ。その一枚に、君たちは自分の未来を託すのだ」
事務長 さ、さすが、学長!
学長 そうじゃ! リクルート・スーツを脱いで街に出よ! ハダカ一貫、ボーイズ・ビー・アンダーシャツで出発じゃ!
事務長 は、はい!!
学長 あっ、そうそう、君に通告するのを忘れとった!
事務長 はあ?
学長 君には3月いっぱいで辞めてもらう。
事務長 えーっ!!!
学長 文科省からごり押しがあっての。天下りを事務長で、引き取れ、って言うんだ。
事務長 そ、そんなあ~!
学長 大丈夫じゃ、安心せい! 君にも「宝くじ」、ちゃんとあげるから――!
事務長 卒業生とともに春からハローワーク通い! ああ、最低不幸国家!
☆ 北海道新聞に、内定率、北海道50.3%、沖縄に次いで2番目に低い――という記事が出ていた。⇒ http://www.hokkaido-np.co.jp/news/education/269060.html
Posted by 大沼安史 at 07:50 午後 | Permalink