〔いんさいど世界〕 アラスカを救う 大和なでしこ 榊原千絵さんガンバレ! フランク安田も応援してるよ!
「フランク安田」(さん)を、ご存知ですか?
明治元年(1968年)、石巻(宮城)の生まれ。渡米して捕鯨船でアラスカに行き、北米最北の地、バローで、最北の先住民(イヌイット)、「イヌピアト」の人々と暮らし始めて現地の女性と結婚、ついにはその指導者となり、人々を連れて疫病の広がるバローを脱出、600キロ離れた場所(のちのビーバー村)に新天地を切り拓いた人。
まるで「出エジプト記」を思わせるその偉業から「アラスカのモーゼ」と言われる日本人です。
新田次郎氏の小説、「アラスカ物語」のモデルで、映画にもなった偉人。
フランク安田こと安田恭輔さんは、アラスカの先住民とともに生き、先住民を守り抜いた、すごい人なんですね。
フランク安田 Wiki ⇒ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF%E5%AE%89%E7%94%B0
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「フランク安田」(さん)の乗り組んだアメリカの捕鯨船が北極の海で氷に囲まれ、身動きがとれなくなったのは、1893年(明治26年)、フランク安田(さん)、25歳のときでした。
救助を求め、フランク安田(さん)は独り、船を下り、バローに向かって歩き出します。
そしてバローの手前で倒れる。
そこにバローのイヌピアトが橇で通りかかって、フランク安田(さん)を助ける。そうやって、捕鯨船の乗組員たちも助け出される。
それがフランク安田(さん)と、バローのイヌピアトの人々の出会いでした。
フランク安田(さん)はそのままバローに留まり、ネビロさんという女性と結婚し、捕鯨などで活躍しながら、イヌピアトのリーダーになって行くのですが、やがイヌピアトの人々を麻疹が襲いかかります。
そのうえ、欧米の捕鯨船によるホッキョククジラの乱獲で、食糧危機にも追い込まれる……。
そこから、「アラスカのモーゼ」、フランク安田(さん)のイヌピアト集団移住という、もうひとつのドラマが始まるわけですが、いま、このバローの町を、「新たな脅威」が襲いかかろうとし、現地の人々を助けようと、ひとりの若い日本人が闘い始めている……。
それが、今日の話題です。
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で、いま、バローに住むイヌピアトの人々に襲いかかろうとしている脅威とは何か?
それはアラスカ沖の北極の海、「ボーフォート海」で近々、開始される(かも知れない)海底油田の開発プロジェクトです。
バロー沖の「ボーフォート海」から、その西側、「チュクチ海」の海底に石油が眠っていて、地震波を使った探査活動はすでに始まっている。
ほんとうは去年(2010年)の夏から、本格的な油田開発が始まるところでした。
もも4月にメキシコ湾で原油が噴出する事故が発生したせいで、オバマ政権の最終的なGOサインを出せないでいる。
どうなるか、分からない……というより、いつGOサインが出てもおかしくない状況のようです。
で、この海底油田開発が、なぜ、先住民のイヌピアトにとって死活問題かというと、この先住民たち、実は伝統的な「沿岸捕鯨」で生きている人たちだからです。
油田開発が始まれば北極の海は汚れ(氷に閉ざされた海なので、一度汚染されると、なかなか元に戻らないのだそうです)開発の影響で、音に敏感なホッキョククジラはどこかへ行ってしまう……。
そこで現地では反対運動が湧き上がり、これを放っておくにはいかないと、ひとりの若い日本人が運動の先頭に立っているわけですが、この、まるで「フランク安田」(さん)の生まれ変わりのような日本人――実は、ほんとにかわいらしい、大和なでしこなんです。
榊原千絵さん。
アメリカのアパラチア州立大学の准教授。
愛知県の出身、アメリカに留学し、先住民の研究でPHDを取得した方。
お見受けしたところ(年齢計算もしたところ)、まだ30歳前後のお若い方!
このチエ・サカキバラ博士が昨年暮れ、イヌピアトのピンチを訴えるアピール(以下のリンク参照)を発表して、世界の環境保護運動家などの目を、アラスカの北端に向けた!
⇒ http://www.climatestorytellers.org/stories/harvard-ayers-chie-sakakibara-inupiaq-people-ask/
チエさんのこの論文は、さまざまサイトに転載され、僕が毎日必ず覗いている、ネット誌「コモン・ドリームズ・オルグ」にも載り( ⇒ http://www.commondreams.org/view/2010/12/22-5 )、いまこうして、この記事を書いているわけですが、彼女のこのアピールで、イヌピアトの人々と連帯し、北極海底油田の開発を阻止しようとする世界的なネットワークが生れた!
フランク安田(さん)も、チエさん、よく書いてくれたね!――って喜んでいるのではないでしょうか?
〔フランク安田(さん)は、キョウコさんとサダさんという2人の娘さんを亡くしてますから、チエさんのことを、生まれ変わりと考えているかも知れませんね……〕
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で、このチエさんのことを、さらに調べてみると、ただ単にフィールド・ワークをこなし、論文を書いて、それで一丁あがり、って研究者じゃないんですね。
バローの現地の人の、ちゃんと「家族の一員」(?)になっちゃっている!
海底油田開発も反対するだけでなく、バローの人たちの伝統音楽、口承文学の復興運動にも力を注いでいる。
(バローでは1946年に、アメリカの女性学者によって、ドラム音楽や口承文学が録音されているそうです。チエさんはその録音の「里帰り」のお手伝いもしている)
チエさんって人は、イヌピアトの「環境」だけでなく「文化」を守ろうとしているわけですね!
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チエさんによると、アラスカ(北米)最北のバローの町にも地球温暖化の危機が忍び寄り、(フランク安田さんがいたころの)古い住まいの70%以上がすでに水没しているそうです。
1970年代には、海面上昇で、市街を3.2キロ、移動させることになったそうです。
⇒ http://www.udel.edu/udaily/2009/mar/inupiaq032409.html
そういう状況の中で、海底油田の開発が進められでもしたら、イヌピアトの人たちは生存の危機にさらされかねない。
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イヌピアトの人たちって、同じモンゴロイドですから、日本人そっくり。
タンバリンのような太鼓(クジラの胃袋を張った)を叩いている写真なんか見ると、まるで、日本のお坊さんたち!
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北極海底油田開発の当面の山場は、ことし夏に向けた、ワシントンでの春先の動き。
オバマがGOサインを出したら、本格的な戦いが始まります。
私たちもチエさんに負けず、アラスカの現地の人々に声援を送り、支援しなくちゃなりませんね。
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チエさんによると、イヌピアトの人たちのドラム(太鼓)音楽って、太鼓をたたくことでクジラの心の中に入り込むことなんだそうです。
ホッキョククジラたちも、北極の海が汚されることに、危機感を(本能的に)募らせているはず。
(さすがに、地球環境の危機がここまで深化し、気象パターンの崩壊がここまで進行すると――)僕らの耳にも、チエさんの導きで、クジラの心が、イヌピアトの人たちドラムの音になって聞こえてくるような気がします。
「チエさんガンバレ」って音になって響いて来るから、不思議ですね。