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2011-01-16

〔いんさいど世界〕 チュニジアでウィキリークス革命

 チュニジアの民衆革命について、ウィキリークスによる初めての革命だとする見方が出ている。

 たとえば、米国の外交誌、「フォリン・ポリシー」(電子版)。

 The First WikiLeaks Revolution?

  ――と、クエスチョン・マークつきながら、ウィキリークスによる米トリポリ大使館発電の暴露が、今回の、「ベンアリ国外脱出」に繋がったことを指摘している。⇒  http://wikileaks.foreignpolicy.com/posts/2011/01/13/wikileaks_and_the_tunisia_protests

 英紙、デイリー・メールは、クエスチョン・マークなしに、「最初のウィキリークス革命」と断定している。⇒ http://www.dailymail.co.uk/news/article-1347336/Tunisia-riots-blamed-cables-revealed-countrys-corruption-dubbed-First-Wikileaks-Revolution.html

 いずれにせよ、ウィキリークス自体がツイッターを通じて、そうした報道を紹介しており、今回の「チュニジア民衆革命」で、ウィキリークスによる「情報の開示」が大きな役割を果たしたことは、間違いのないところ。

 このまま情勢が安定し、言論・報道の自由が回復されれば、ウィキリークスの暴露を軸に、民衆の決起がどのような形で進んでいったか、よりハッキリすることだろう。

 (ただし、情勢は予断を許さない。マフィアと権力が武装反革命に出ている……)

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 ウィキリークスで、どんな腐敗が暴露されたか?

 ベンアリのレイラ夫人が私立学校の建設にからみ私財を肥やしたこと、ベンアリ政権がチュニジアの経済を支配するマフィアのボスと繋がっていることなどが明るみに出たが、ベンアリの娘婿のエル・マタリ(28歳)のやりたい放題には、チェニジア人でなくてもあきれ果てる。

 英紙ガーディアンが昨年(2010)12月7日に報じた、2009年7月27日、トリポリ大使館発の機密電によると、「チュニジアにマクドナルドを誘致したがっている」この男は妻のネスリン(ベンアリの娘)との、2週間にわたる、サントロペ(フランス南部の保養地)滞在から帰ってきたばかりだが、そのサントロペから自家用機でアイスクリームとフローズン・ヨーグルトを取り寄せ、ディナーを楽しんだ。

 この娘婿の邸宅には「パシャ」という名の虎がペットで飼われていて、1日4羽のチキンを食べる。

 この娘婿はまた、クルージングや製薬会社を持ち、ポルシェやルノーなど外車の独占販売権を持っている……。
 ⇒ http://www.guardian.co.uk/world/us-embassy-cables-documents/218324

 ベンアリは1987年の無血クーデターで政権に就いた男で、ブルギバ政権の進歩政策(宗教的な寛容、女性の地位など)を引き継いだ者だが、23年もの長期独裁の中で腐敗し、こうした馬鹿な「婿ど」のご乱行を許し、民衆の憎悪を呼んでいたわけだ。

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 ウィキリークスによる、こうした米国務省電の暴露を、チュニジアの民衆――とくに若者たちはネットを通じて知り、ブログやケイタイを通じて共有するようになった。

 ベンアリ政権は、偽のFacebookサイトに誘い込む手口などを使ったり、ベイルートのアラビア語紙のサイトへの接続をブロックしたりして対抗したが、民衆側は、ブラウザのファイアフォックスにアドオンをつけるなど対抗策を講じてコミュニケーションを確保。

 ウィキリークスを支援する世界的なハッカーグループ、「アノニマス」も、政府サイトへの攻撃を開始するなど、ベンアリ政権を追い詰めて行った。  
 ⇒ http://www.ft.com/cms/s/0/4a18b4d6-1da9-11e0-aa88-00144feab49a.html#axzz1BBLee2vI

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 しかし、チュニジアで、こうしたオンライン革命が起きたのは、むろん、そこに民衆の権力に対する怒りの蓄積があったからだ。

 昨年12月17日、チュニジア中部、シディ・ブージドで。モハマド・ビアジジさんという、26歳の失業中の男性(大卒だった)が抗議を焼身自殺を遂げた。

 許可なしに果物を売っていて、それを警察に妨害されたそうだ。
 ⇒ http://www.counterpunch.org/ridley01142011.html

 これが積年の不満に火をつけ、民衆デモの引き鉄を引いたと、英国人の女性ジャーナリストは書いている。

 今回の抗議行動で民衆の側に23人の死者が出ているが、実際はその3倍の66人が亡くなっている。

 独裁者はおのれの権力の維持を民衆の命より上位に置くから、チェニジアでの民衆の決起も、死を賭した抗議行動にならざるを得なかったわけだ。

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 英紙ガーディアンに、チュニジアの詩人、アブール・カシム・エチェビ(1909~1934)の「世界の独裁者に」という詩が紹介されていた。⇒ http://www.guardian.co.uk/world/2011/jan/15/tunisia-poet-tyrants-arab-world

 いま、それをウィキペデアに掲載された英訳( ⇒ http://en.wikipedia.org/wiki/Ela_Toghat_Al_Alaam )から重訳すれば、こうなる。

  そこの汚い暴君たちよ
  闇を愛する者たちよ
  命の敵よ
  罪もない人々の負傷をあざける
  血まみれの手の平
  存在の喜びを歪め、土の上に悲しみの種子を育てながら
  お前は闊歩し続ける

  ……(中略)
  気をつけろよ 灰の下では炎が燃えている

  棘を育てる者は傷を収穫する者
  ……
  血の海にお前たちは溺れ、嵐に焼き尽くされることだろう

 
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 今回のチュニジアでの民衆革命を最も深刻に受け止めているのは、北朝鮮をはじめとする世界の独裁者たちだろう。

 これに最も勇気づけられているのは、もちろん、権力の腐敗に苦しむ世界の民衆である。

 ウィキリークスなどオンラインのメディアの情報開示とリンクした民衆のプロテストは、こんごとも、世界の各地で続くに違いない。

 それは、格差=貧富の差の拡大が続くこの日本でも、十分、起こりうることである。

Posted by 大沼安史 at 07:30 午後 1.いんさいど世界 |

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