〔コラム 机の上の空〕 荒野の正義 "Go in peace."
私が尊敬申し上げるジョン・ディア神父ら14人の「被告」に対して、米ネバダ州ラスベガスの連邦裁判所が「判決」を下した。
「有罪」の判決だった。
米軍クリーク基地への「不法侵入」事件。
ウィリアム・ジャンセン判事はしかし、14人の被告=「クリークの14人」に対して、同時に執行猶予を宣言した。
⇒ http://www.lasvegassun.com/news/2011/jan/27/creech-14-found-guilty-trespassing-judge-says-go-p/
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ディア神父ら14人は、どんな「不法」行為を仕出かしたか?
彼・女らは2009年4月9日、クリーク米軍基地に「不法」侵入して、抗議の座り込みを行ったのだ。
何に抗議して?
同基地からの無人偵察機(ドローン)を使った遠距離リモート殺戮に対する抗議行動に対して――!
まるでテレビ・ゲーム化した、米軍の無法に抗議したのだ。
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ディア神父ら14人に対する裁判は昨年9月に開かれた。
ジャンセン判事は即決での判決を避け、半年間、考えさせてくれ、と言って、判決を年明けに先延ばししていた。
⇒ http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2010/09/post-36ed.html
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その結果がこれだった。有罪――しかし執行猶予!
問題はこれをどう見るかだが、僕はディア神父らの「実質勝訴」と見る。
なぜか?
それはジャンセン判事が各被告に意見陳述を認めた、最後の訴訟指揮でも明らかだろう。
法の上では「有罪」だが、人道的には「無罪」――これがジャンセン裁判官の(判事としての判決ではなく)人間としての判断だった。
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ネバダのクリーク基地から、アフガン・パキスタン国境地帯は遠い。
クリーク基地のオペレーターにとって、戦場はまるでビデオゲームの画面でしかない。
ドローン搭載のヘルファイア(地獄の業火)・ミサイルの発射ボタンを押したとしても、目の前の人間に銃弾を撃ち込むほどの罪の意識はないだろう。
ディア神父ら「クリークの14人」は、そのことに――その非人間的なことに、異議を申し立てのだ。
距離は無限大かも知れない。しかし、いま、ここから、「組織的な殺意」が、「攻撃」が、人々に向かって発せらる、そのこと自体が問題なのだと。
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ジャンセン裁判官は判決言い渡しの最後に、14人の被告に対して、こう言ったそうだ。
"Go in peace." 「平和の中で、行きなされ!」
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「荒野」は、アメリカの今を象徴するメタファーだ。
そのネバダの荒野の裁判所で発せられた、この一言の持つ、意味は重いと思う。
"Go in peace."
「平和の中で、行きなされ!」
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平和運動を続けてください、と敢えて言った、ネバダの判事の訴えの意味は――日本の私たちたちにとっても、重すぎるほど重い。
Posted by 大沼安史 at 07:18 午後 3.コラム机の上の空 | Permalink