〔いんさいど世界〕 エルズバーグ博士 80歳の戦い
40年前の1971年、「ペンタゴン文書」を暴露したダニエル・エルズバーグ博士が、米国務省の機密電「開示」の「ウィキリークス」を擁護する戦いに立ち上がっている。
80歳の抵抗――
今月16日には、ホワイトハウスの柵に自らを鎖でつなぐ抗議行動に参加する予定だ。
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エルズバーグ博士が暴露した「ペンタゴン文書」(7000ページ)は、当時のジョンソン政権の、ベトナム戦争をめぐる「嘘」を暴き、戦争の終結へと流れを大きく変えたものだ。
当時、博士は、米空軍(陸軍航空隊)によってつくられた軍事シンクタンク、ランド研究所の研究員で、国防総省(ペンタゴン)でベトナム戦争を再検証する仕事を続けていた。
大統領が国民や議会に嘘を言っている。勝てない戦争なのに、勝てるようなことを言っている……。
内部告発を決意した博士はゼロックスで一枚一枚、機密文書をコピーし、ニューヨーク・タイムズなどに提供した……。
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博士の内部告発は、米最高裁が同年7月末、ニューヨーク・タイムズに対する記事差し止めを違法とする決定を下したことで、ついに戦いに勝利することになるが、その同じ月――1971年7月の3日、オーストラリアで生れたのが、「ウィキリークス」の代表のジュリアン・アサンジさんだった。
ホイッスル(警笛)は、こうして次の世代へと受け継がれたのである。
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「ペンタゴン文書」から40年が経った、ことし2010年は、イラクでの米軍ヘリ住民虐殺事件のビデオ公開など、「ウィキリークス」の1年だった。
以来、一貫して反戦運動を続けて来たエルズバーグ博士は、「ウィキリークス」による相次ぐ暴露に、「私は40年間、この日が来るのを待っていた」と、歓迎と連帯の意志を表明した。
⇒ http://www.democracynow.org/2010/10/22/wikileaks_prepares_largest_intel_leak_in
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そして、今回の「国務省文書(機密電)」の暴露――。
エルズバーグ氏はBBCのインタビューに答えてアサンジさんの立場を擁護し、ウィキリークスのサイトを追い出した「アマゾン」に対しては、抗議と決別の公開状を突きつけるなど、ウィキリークスと連帯する運動の先頭に立って動き回っている。
獅子奮迅――そんな表現がぴったりあてはまる、まるで命をかけたような、必死の戦い!
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何が博士を、そこまで駆り立てているのか?
それはたぶん、アメリカの軍事権力(軍産複合体)が、ベトナム戦争以降、さらに肥大化し、暴走し続けているからだ。
アサンジさんら若い世代と連帯し、ここでもう一度、ストップをかけねば、との思いが、博士を衝き動かしている……これに間違い、ない。
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16日、博士とともに、ホワイトハウスの柵に自らを鎖でつなぐのは、「コード・ピンク」の女性活動家、メディア・ベンジャミンさんや、元ニューヨーク・タイムズ記者のクリス・ヘッジさんら、反戦・平和運動のベテランたちだ。
⇒ http://www.truthdig.com/report/item/hope_in_the_21st_century_20101128/
逮捕覚悟の――少なくとも一晩、ブタ箱で過ごすことを覚悟した決起だ。
若い頃、ベトナム戦争を経験したベトナム世代の運動家たち。
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エルズバーグ博士は、ウィキリークスへ機密資料・文書を送付したをみられる、米陸軍特科兵、ブラドレー・マニングさん(22歳)に対しても、共感と連帯の意志を表明している。
だから博士の戦いは、ウィキリークスの擁護に終わるものではない。
孫の世代のブラドレー・マニングさんが釈放される日まで終わることはないだろう。
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エルズバーグ博士は、アサンジさんやマニングさんについて、こう語っている。
I think they’re being better citizens and showing their patriotism in a better way than when they keep their mouths shut.
彼らはよき市民であり、口を噤まないことで、よりよい愛国者となっている――と。
そう、彼らこそ、よりよき世界市民であり、よりよき愛国者である!
僕もまた、エルズバーグ博士の奮闘に敬意を表し、遠く仙台の地から、(彼らに対しても)、連帯の意志を表明する。
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エルズバーグ博士 公式HP ⇒ http://www.ellsberg.net/
Wiki ⇒ http://en.wikipedia.org/wiki/Daniel_Ellsberg