〔いんさいど世界〕 あの尖閣の海は米海軍訓練海域だった!
雑誌「世界」の最新号(1月号)に掲載された、豊下楢彦氏の論文、「『尖閣問題』と日米安保」を読んで、中国漁船「衝突」事件の「謎」が解けた。
菅直人政権がビデオを「封印」しようとした、ほんとうの理由(のひとつ)が分かった。
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9月7日午前、第11管区海上保安本部の巡視船が中国トロール漁船を発見したのは、尖閣諸島の久場(くば)島の北西12キロの日本領海内でのことだが、豊下氏の論文によれば、久場島海域は、同じ尖閣諸島の大正島と並び、「米海軍訓練区域」になっているのだそうだ。
第11管区海上保安本部が「衝突」事件の2ヵ月前、2010年の7月に作成した「アメリカ合衆国軍海上訓練区域一覧表」に、そう明記されてある、という。
それも「久場島」ではなく、なぜか、中国名の「黄尾■(山ヘンに興)」と表記されているというからあきれる。(大正島も赤尾■と表記)
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まるで、尖閣諸島が中国領であると、日本政府側から申し立てているようなものだが、それはともかく、久場島海域が米海軍の訓練区域になっていることは、日本側にとって、どんな意味があるのか?
豊下論文によれば、社民党の照屋寛徳・衆議院議員(弁護士)の質問趣意書に対して、菅直人政権は、この10月22日付けの答弁書で、こう回答している。
久場島海域のような米軍訓練区域に「地方公共団体の職員等」が立ち入るためには「米軍の許可を得ることが必要である」!
(海保の巡視船の乗組員は、国家公務員だが、米海軍から許可をもらって、現場海域に立ち入り、中国漁船を「発見」したのだろうか?……)
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尖閣の久場島海域は、日本領海でありながら、事実上、「米(軍)領海」であったわけだ。
(これは、日本領空でありながら、米軍が専用のエアスペースを持っていて、気軽にジェット戦闘機をぶっ飛ばすことができている事態の、海バージョンだ!)
このとんでもない事実がバレるのを恐れ(海保撮影ビデオでは、たしか、現場の正確な位置を、東経と北緯でアナウンスしていた!)、菅直人政権は、ビデオの「封印」を図ろうとしたのではないか?!
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豊下論文から離れるが、「中国漁船」の問題で、菅政権と主流メディアは、巡視船と「衝突」したことばかりあげつらい、「ぶつかって来た」ことばかり強調していたが、これも問題の核心から目を逸らす、姑息な世論操作である。
私が1970年代の初め、北海道の根室で新聞記者をしていたころ、北方領土海域に出漁する日本漁船はソ連警備艇に発見され、拿捕されたら最後、色丹島に連行され、船長はハバロフスクの刑務所へ送られたものだ。
領海侵犯、不法操業!
今回の中国トロール漁船も、日本領海内で不法操業していたのだから、中国人船長はその容疑で逮捕すべきだった。
それが本筋ではないか!
なのに、「衝突」にばかり、日本国民の目を誘導し、挙句の果ては、船長を釈放した菅直人政権!
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尖閣問題は1978年から日中間で「棚上げ」されて来た非常に微妙な問題だ。
それなのになぜ、当時、海上保安庁を指揮していた前原・国土交通相は「逮捕」を命じたか?
中国漁船が「米海軍訓練区域」に「米国の許可を受けずに」入ったから、いきり立ったのか?
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菅直人政権がなすべきは、尖閣の海を、米海軍訓練区域のない、平和の海にすることである。