〔いんさいど世界〕 「ブラボー中隊」に捧ぐ
米軍の「星条旗」紙(電子版)に、アフガニスタンで自爆テロに遭い、瓦礫に埋まって圧死した6人の米兵の追悼式の記事が出ていた。⇒ http://www.stripes.com/bravo-company-bids-a-tearful-goodbye-to-fallen-friends-1.129117
あの「ブラボー中隊(Brabo Company)」の兵士だった。
記事に生き残った兵士が、仲間の死を悲しむ写真が添えられていた。
もうじき、クリスマスだというのに……。
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あの「ブラボー中隊」!
ウィキリークスが暴露した、2007年7月12日、ニューバグダッドでの、米軍ヘリによるイラク住民機関砲掃射ビデオのあの現場に、地上部隊として駆けつけたのが、この「ブラボー中隊」だった。
3年前、イラクの前線にいた「ブラボー中隊」は、アフガニスタンの前線にいた!
⇒ http://onuma.cocolog-ifty.com/blog1/2010/10/post-0722.html
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今月(12月)12日午前9時少し前、ストロング・ポイント・デワール前線基地――。
前夜遅く任務に就いていた中隊の半分がまだ寝ているときだった。
一台のヴァンが基地に向かって来た。90メートルまで近づいたところで、見張りの米兵が気付いた。
アクセルを踏み込み、突進して来たヴァンは、基地から20数メートルの距離で爆発した。
基地の建物は爆風で崩壊。
難を逃れた兵士が必死に瓦礫を掘り起こしたが、この6人だけは救い出せなかった。
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追悼式は17日にあった。
「星条旗」紙の記事は、こう書いている。
「6つのヘルメットと6足のブーツが一列に並んでいた」
そして、「すすり泣きが漏れた。続いて、つかの間の笑いが……」とも!
悲しさに耐え切れない誰かが、苦し紛れの冗談でも飛ばしたのだろうか?
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「ブラボー中隊」は11月半ばにも自爆テロ攻撃を受け、3人の仲間を失っている。
「星条旗」紙は、米軍の準機関紙的存在だが、これはいかにも「乾いた」記事だ。
亡くなった兵士の一人は「沈黙のプロ」だった、と書く、「星条旗」紙の従軍記者よ!
「ブラボー中隊」の兵士たちの神経は、イラク、アフガンの転戦の中で、引き裂かれ、ささくれ立ち、擦り切れ、麻痺してしまっているのではないか?
そうでなければ、「すすり泣き」のあとに「笑い」が弾けるわけがない……。
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イーサン・マッコードさんは、2007年7月の米軍ヘリ機関砲掃射現場に「ブラボー中隊」の一員として駆けつけ、蜂の巣になったヴァンから、男の子を救い出した人だ。
マッコードさんは退役後、「オペレーション・リカバリー(回復のための作戦)」という名の復員兵の団体を立ち上げている。 ⇒ http://www.ivaw.org/operation-recovery
イラク、アフガンの前線で傷ついた兵士の心を癒し、戦争に反対する、マッコードさんら「オペレーション・リカバリー」の復員兵たち。
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あのウィキリークスの暴露ビデオが何よりも明確に示したように、機関砲を撃ちまくるヘリの兵士も、無線で命令を発する指揮官も、常軌を逸しているのだ。
戦死した仲間の追悼式で笑い声を上げる兵士もそうだが、撃ちまくり続ける兵士もまた、癒されなければならない。
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「星条旗」紙の同じ紙面(電子版)に、同紙オンブズマンの、「苦言」が載っていた。
国防総省(ペンタゴン)が、同紙の記者に、ウィキリークスの「暴露」した記事がニューヨーク・タイムズなどに出ても、見てはならない、との「禁止令」を出したことに対する「苦言」だった。
米軍の兵士だけでなく、米軍を取材する準機関紙の記者までも「目隠し」するペンタゴン!
これまた、正気の沙汰ではない。
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「ブラボー中隊」!
ブラボーとはあのブラボー、いいぞ、素晴らしい、のブラボーだ。
「戦争の家=ペンタゴン」を本丸とする米軍事権力=軍産複合体が叫ぶ「ブラボー」の中に、兵士の心の痛みや苦しみ、悲しみに対する思いはカケラもない。
兵器の発注と受注、軍事予算、売上の絶えざる拡大――があるだけだ。
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生き残った現役の「ブラボー中隊」に、君たちの先輩の、マッコードさんの言葉を捧げたい。
マッコードさんは、「兵士たちにも癒されるという基本的人権がある」と言っているのだ。
自分たちが癒されるためになすべきはひとつ――それは「戦争」を止めることである。
そのために、事実を直視し、真実を発言することである。