« 空から歌が聴こえる 渡良瀬橋 | トップページ | 空から歌が聴こえる Bring 'Em Home »

2010-11-26

〔いんさいど世界〕 「星の王子さま」、アフガンへ

 「星の王子さま=Le Petit Prince」がアフガニスタンに降り立った。
 公用語のひとつ、ダリ語に訳されて。

 5000部が――「5000の王子さま」が、アフガン北西部、バードギース州の子どもたちと語らい始めた………。

 アフガンからのニュースは、破壊や虐殺など、殺伐としたことばかり。そんな中、こんなほっとする話を、英紙インディペンデントで読んだ。
 ⇒   http://www.independent.co.uk/news/world/europe/spain-enlists-little-prince-for-charm-offensive-in-afghanistan-2139128.htm

 ☆☆☆☆

 ダリ語訳「星の王子」さまをアフガンの子どもたちに贈ったのは、スペインのフエンシスタ・ゴザロさんというご婦人。

 世界各国語に翻訳された、フランスのサンテグジュペリの名作、「星の王子さま」の各国語版の蒐集家だ。
 (スペインのニュース・ビデオを見たら、ちゃんと日本語版も集めていらした!)

 ダリ語への翻訳者は、現在、カブールで学校の校長をつとめるグーラン・サキ・ガイラートさん。

 ガイラートさんは今から33年前(の1977年に)翻訳を了え、自費出版していた。しかし(2年後のソ連軍アフガン侵攻に至る混乱した状況下)書い手はあらわれず、やむなく自宅に保管――。ところが、その自宅がこんどは米軍の侵攻により、爆撃で破壊されてしまった。

 ☆☆☆☆

 アフガン戦争の戦火によって失われていた、ガイラートさん訳、ダリ語版、「星の王子さま」!

 フエンシスタさんが今回、アフガンの子どもたちの贈ったものは、このガイラートさんの「幻のダリ語訳」を出版し直したものだ。

 ガイラートさんのせっかくの努力の結晶が爆弾でもって破壊されたことを人づてに聞いたフエンシスタさん、友人たちに寄付を呼びかけて出版経費を捻出、再版に漕ぎ着けた。

 ☆☆☆☆

 しかし再版はしたものの、アフガンは今、戦争のまっただ中、女手ひとつで配布するのは土台、不可能。

 困ってしまったフエンシスタさん、NATO軍に参加して軍隊をアフガンに送り込んでいるスペインの国防省の大臣に手紙を書いたところ、スペイン軍が駐留するバードギース州での配本を引き受けてくれた。

 5000部はすでに現地に到着、学校のテキストにも使われたいる。⇒ http://www.rtve.es/mediateca/videos/20101119/fuencisla-gozalo-reparte-principito-por-las-calles-kabul/936159.shtml

 ☆☆☆☆

 5000の「星の王子さま」たちが降り立ったバードギース(州)とは、現地語で「風が生れる場所」という意味だそうだ。

 アフリカの砂漠ならぬ、アフガンの山岳部で子どもたちに出会った「王子さま」たちは、そこでどんな会話を交わすことだろう。

 バードギースはきっと、星空がきれいなところだから、そこの子どもたちは、「王子さま」たちとずんずん話を弾ませ、夢をぐんぐん広げることだろう。

 「たった一本の薔薇の花や、ほんのちょっとの水の中に、たいせつなものを見つけることができるんだよ……」

  Et cependant ce qu'ils cherchent pourrait être trouvé dans une seule rose ou un peu d'eau...

 ―― といった「王子さま」の言葉も、バードギースのアフガンの子どもたちなら、かんたんに理解してしまうに違いない。

 ☆☆☆☆

 星空に近い山国、アフガニスタンはいま、「戦争」の閃光で目のくらんだ者どもが、空から爆弾と、ミサイルを降り注ぐ、狂乱の戦場と化している。 

 「王子」の有名な言葉、「たいせつなものが見えなくなった(Ce qui est important, ça ne se voit pas... )」帰結としてのアフガン戦争。

 アフガンに舞い下りた5000の「王子さま」たちは、その惨状を目にして、すでに悲しんでいることだろう。

Posted by 大沼安史 at 06:09 午後 1.いんさいど世界 |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/136311/50137289

この記事へのトラックバック一覧です: 〔いんさいど世界〕 「星の王子さま」、アフガンへ: