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2010-11-12

〔いんさいど世界〕 ヴァンダナ・シヴァさん 頌        その2

 インドの環境運動家、ヴァンダナ・シヴァ女史(58歳)が「2010年 シドニー平和賞」に輝いた。

 元々は量子論で博士号を取得した理論物理学者。「核」を批判して環境を守るエコロジー運動にかかわり、有機農業を営む農業者でもある。

 「シドニー平和賞」は1998年以降、世界の社会運動家に対して贈られている、いわば「世直しのノーベル賞」。これまでバングラデュの「グラミン銀行」創始者、ムハマド・ユーナス氏や南アフリカのデズモンド・ツツ氏らに授与されている。

 本家の「ノーベル平和賞」は、かつて日本の総理大臣の白々しい「真っ赤な嘘」をまともに信じて授賞し、昨年は、アフガニスタンで戦争をエスカレートさせたオバマに贈るなど、ケチがついて輝きをやや失っているが、「南のノーベル平和賞」とも言うべき「シドニー平和賞」は、今回、シヴァ女史に授与したことで、その先見の明、人物鑑定眼の確かさを、自ら改めて実証したかたちだ。

 この夏、受賞が決定した際、本ブログで、〈ヴァンダナ・シヴァさん頌 祝・受賞で「動物三題噺」〉という記事(
 ⇒ http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2010/08/post-09be.html )を書いたが、これはそれに続く、シヴァ女史を讃える「頌 その2」――。

        ☆

 ヴァンダナ・シヴァ女史は、知る人ぞ知る、地球環境を守る運動の、世界的な第一人者である。

 女史が英文で書いた『地球デモクラシー』や『石油ではなく土地を』などの著作は各国語に翻訳されているが、その文章が実に素晴らしい。そのレトリックの切れのよさ!

 自在な英語力を駆使したその弁舌もまた素晴らしい。詩的で、なおかつ迫力がある。

 それは今回の「シドニー平和賞」受賞スピーチを見ても分かる(本ブログで全文を拙訳で紹介 ⇒ http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2010/11/post-0f34.html#more)。

 しかし、受賞スピーチもさることながら、授賞式の前、今月(11月)3日に豪ABCテレビが放映したインタンビューに対する受け応えには、ほんとうに感心させられた。
 ⇒ http://www.abc.net.au/lateline/content/2010/s3055446.htm
 (画面の右側の Video をクリックすると、映像を見ることができる)

 ABCテレビの女性キャスターの鋭い質問を、ものの見事に切り返し、本質に迫る議論を展開するシヴァ女史!

 やりとりの一部を再現すると、こうなる。

 Q(女性キャスター) あなたは「エコ・フェミニスト」と呼ばれています。どういう意味ですか?

 A(シヴァ女史) それはフェミニズムの運動とエコロシー運動をひとつのものとして考えることです。「女性」と「自然」に対する「抑圧」は同じ根から来るものなのです。「自然」を生きたものと見ず、「女性」を非生産的と見る世界観は、同じルーツを持ったものなのです。「自然」と「女性」の命、創造性、生産性を認める時が来ているのです……。

 なぜ、女史は「自然」と「女性」を守る「エコ・フェミニスト」であると自己規定しているのか?

 それは、彼女が若い頃に参加した、「チプコ運動」――インドの女性たちが樹にしがみついて、森を守り、それに支えられた村の生活を守り抜いている運動――を考えると、よく分かる。

 新自由主義(ネオリベ)に歴然とした、マッチョな男性原理による資本主義的な破壊に対抗し、シヴァ女史はインドの農業を営む女性たちと手を携え、地に足のついたエコ・フェミニズム運動を展開しているのだ。

 それが、あの世界に名高い「ナヴダンヤ(9つの種子)」という、インドの固有の作物の種子を守り、固有の農業を守る、女史らの運動。

 シヴァ女史は、遺伝子まで「商品化」する米国主導の「農業の産業化」に反対し、有機の伝統農法の再生と闘っているのだ。

 遺伝子操作した種子、化学肥料、農薬が、インドの農業を荒廃させている。(「シドニー平和賞」受賞スピーチで、彼女が怒りを込めて告発したように)1997年以降、実に20万人もの農民が「負債の罠」にはまって自殺を遂げている。それも売りつけられた殺虫剤を飲んで。

 女性キャスターと女史のやりとりを、もうひとつ――。

 Q 資本主義を採用している国々は経済成長を追及し、高い生活水準を実現しているではありませんか? それがどうして間違いなのですか?

 A 生活水準の高さのほとんどは、かつて植民地と呼ばれていた地域からの資源の移転によるものです。資本が奇跡を起こしたわけではないのです……資本とはそれ自体、創造的な力を持っていません。富の移転が続いていて、それがとどまるところを知らないのです。第三世界は1ドルの「援助」につき、3ドルもの元利の返済に迫られている。第三世界が「負債の罠」から抜け出ることができないのはそのためです……。

 (シヴァ女史は、あるところで、こう指摘していた。インドは英国によって、産業革命で機械化した繊維業の原料供給国にされたわけだが、もともとインドは植民地化される以前、繊維・衣料品の製品輸出国だったという)

 女史はインドの伝統農業を守る運動を続ける一方、地球環境を守る運動の世界的なリーダーとしても活躍している。

 なぜ、農業が地球温暖化を防ぐのか?

 女史によれば、作物(植物)を育てる農地は、二酸化炭素の「吸収材」でもある……。

 しかし、シヴァ女史のすごいところは、実践に裏付けられた、スケールの大きな、世界観・生命観の持ち主である、ということだ。

 たとえば女史は、「エネルギー」とは石油や石炭の中にあるのではなく、私たちの「生」に――「命」の中にあるもの……「生命」そのものがエネルギーなのだ、と指摘する。

 「自然」を産み出し、私たち生物を生み出したエネルギーは、私たちの中に、自然の中に存在する。私たちはそのエネルギーを生かして、生きなければならない、とも。

 このブログで以前、「オズの魔法使い」の物語が実は痛烈な体制批判であることを紹介したことがあるが(⇒ http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2010/10/post-8536.html )、「ドロシー」(という農家の少女で示される、人類の未来)を救う「南の正しい魔女」とは、もしかしたら、ヴァンダナ・シヴァ女史のことかも知れない。
 

Posted by 大沼安史 at 05:46 午後 1.いんさいど世界 |

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