« 〔いんさいど世界〕 「オズの魔法使い」考 | トップページ | 〔いんさいど日本〕 樺美智子さん 50年後の真実 »

2010-10-17

〔コラム 机の上の空〕 「未来」をわれらに――「68年世代」と「高校生」の連帯

 フランスで世代間の強固な連帯が生れているようだ。

 現地からの報道によると、サルコジのネオリベ路線に反発する抗議デモは、「年金」のことなどまだ考えなくてもよいはず(?)の高校生ら、若者たちが街頭に出たことで、さらに勢力を維持している。
 ⇒ http://www.lemonde.fr/politique/article/2010/10/16/retraites-la-mobilisation-ne-faiblit-pas_1427407_823448.html#ens_id=1305816

 サルコジは追い込まれている。全国の広がるストと封鎖で、たとえばパリのドゴール空港の航空燃料の備蓄は、このまま行くと来週半ばには底を突く。
 機動隊の「フラッシュ・ボール」を顔面に受けて、パリの病院に運び込まれた高校生(16歳)は、失明の危機に立たされているそうだ。

  ####

 それにしても、なぜ、こうまで、フランスは燃えているのか?

 直接の引き鉄を引いたのは、サルコジの「年金2年分ぼったくり」政策であることは間違いないが、「年金世代」になった――あるいは、なりかけの――または、これから、なって行く、「68年世代」および、当時を知る(記憶している)「ポスト68年世代」の「力」もまた、大きく作用しているように思われる。

 そして、その「力」とは、「パリの5月」への単なる「郷愁」ではない、もっと前向きの、何ものかではないか?

 僕が、そんなふうなことを勝手に考えたのは、ルモンドの上記記事についた写真(デモ隊に高齢者が混じっている)を見たのと、同紙のインタビューに対する、当年、60歳になるダニエルさんという女性の発言を読んだからだ。「未来の世代のために今、闘っている」という彼女の発言を読んだからだ。⇒ http://www.lemonde.fr/societe/article/2010/10/16/retraites-paroles-de-manifestants_1427390_3224.html

 「未来世代のために」……。
 たぶん、ダニエルさんは40年前と今とを重ね合わせて考えているのだ。

 68年以来の労働組合員というダニエルさんは、続けて、こうも語っていた。「私は希望を捨てない。ユートピア幻想かも知れないけれど、世界は変わり得ると信じている」

 ####

 ここで闘わないと――希望を捨てずに闘わないと、未来はない。

 「未来」を守る闘い――だから、高校生ら若者たちもデモに参加しているのだ。

 ビラ撒きの高校生は、こんな言い方をしていた。もう、こんな世の中に、ウンザリしている、と。

 そう、フランスもまた「ウザッタイ」国になっているのだ。
 
 ####

 13日朝、高校生が機動隊の「フラッシュ・ボール」の直撃を受けたパリ郊外、モントレイユ。

 取材に入ったルモンドの記者に、親たちの一人が、高校生のデモを機動隊から守るため、親たちがデモの末尾についたことがある、と話していた。
 ⇒ http://www.lemonde.fr/societe/article/2010/10/15/que-vient-faire-un-tir-au-flash-ball-lors-d-une-manifestation-lyceenne_1426648_3224.html

 デモの高校生らを、親たちが守るフランス!

 高校生を労働者たちが守ったことは聞いてもいたが、こんな(いい意味での)「父母同伴デモ」が行われているなんて、知らなかったなぁ! 
 
 ####

 世代間をつなぎ、家族の団結の中で続く、フランスの反サルコジ・マニフェスタシオン!

 だから、高校生に対して「フラッシュ・ボール」を射撃するよう命じた連中は、許されないのだ。裁かれねばならないのだ。

 上記のルモンドの記事によれば、モントレイユの高校生の親と女性市長(緑の党)が、それぞれ当局を訴えるそうだ。

 女性市長は、現場で高校生が拾った「フラッシュ・ボール」の破片を振りかざし、「子どもを撃つような政治権力とは、何なんだ?」と怒りをあらわにした。
 
 ####

 しかし、新聞記者出身の僕として、今回、最も感心させられたのは(しているのは)、「高校生フラッシュ・ボール事件」での、ルモンド紙の徹底した取材ぶりだ。(リベラシオンなども頑張っているはずだ……)

 一体、誰が現地の機動隊に命令したのだ? 現場にいた機動隊の実数を出せ?

 地元の県庁に情報開示を迫り、現場で証言を集め、真実に迫ろうとしている。

 同じモントレイユで昨年7月、文化センターの閉鎖に抗議するデモ隊の一人が、目に「フラッシュ・ボール」の直撃を受け、失明していた事実を暴き、今回の抗議デモでも、パリの東、ヴァルド・マルヌなどで、同じように高校生が「フラッシュ・ボール」の射撃を浴びていると報じている。
 
 ####

 東大生、樺美智子さんが殺されても動こうとしなかった、「60年安保」当時の日本の主流マスコミとの、この違い!

 日本の僕たちは、今回のフランス民衆の闘いを――世代間、ジャーナリズムが連帯して闘うありさまを、日本の今に通じる、あの「(19)60年」の視点からも見守り続けなければならない。

  「年金」を守るのも、「9条」を守るのも、単なる現状維持ではない。それは基本的な社会的な合意を――安心と平和を……すなわち、「未来の安心と平和」を守り抜こうとするものだ。 
 
 平和と安心の社会的合意を崩さない!

 あの時と今を重ね合わせ、未来の世代を守る! 

Posted by 大沼安史 at 01:54 午後 3.コラム机の上の空 |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/136311/49766731

この記事へのトラックバック一覧です: 〔コラム 机の上の空〕 「未来」をわれらに――「68年世代」と「高校生」の連帯: