〔コラム 机の上の空〕 ゴールド 魔法使い 階級戦争
ロンドン市場で7日、「金(ゴールド)」の先物が、1360ドル(オンス)の「大台」に乗ったそうだ。
⇒ http://www.marketwatch.com/story/gold-futures-advance-past-1360-an-ounce-2010-10-07
日銀の「包括緩和」――「ゼロ金利」、および「QE(量的緩和)Ⅱ」――が、「黄金のバブル」をさらに膨らませている。
「実体経済」を再生させる(はずの)「建前」が音もなく崩れ、代わって、世界経済の荒地の上に、「黄金の蜃気楼」が虹のように立ち上がった。
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なに、金をもてあました世界の金満家たちが、そんなに気前よく「あぶく金」(QEフリー・マネー」)を使わせてくれるなら……と、しばらくは値上がりゲームを楽しめそうな、「ゴールドのアブク(バブル)」による「濡れ手に粟」を続けているだけのこと。
日本の資産家もきっと、トン単位で金買い・金売りの「金転がし」に励んでいることだろう。
なーに、大丈夫。そうかんたんにバブルは弾けやしない、とタカをくくって。
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それにしても、どこまでこうした不毛なやり方を続けるつもりか?
政府・中央銀行(と称する「贋金づくり」たち)のネオリベ経済・金融政策は、特権層を肥やすだけなのに。
権力者の懐だけを潤し、人間の大地を潤すものになっていないのに。
なぜ、そうか?
(これは、今回、訳出したダニエル・グリーンバーグ氏の主著の中の経済エッセイで教えていただいたことだが……)それは彼らが「発行」する「マネー」が、「新しい価値の創造」と結びついたものになっていないからだ。
芽を育てようとしていない。芽吹く力を育てようとしていない。
それをごまかすため、あの「オズの魔法使い」のように、ひたすら「幻想」をふりまくだけだ。
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「オズ(Oz)」とは何か?
それはもちろん、金(ゴールド)の重量単位、「オンス(ounce)」の略称。
アメリカで110年前に書かれた「魔法使い」の寓話の、経済権力批判が、21世紀の今、目の前で続く、現実世界の「悲劇」であることが哀しい。
日本のマスコミは、こんどの日銀の「包括緩和」について、「景気下支えの強い決意を示した」などと持ち上げているが、幻燈会の提灯をかかげているだけではないか?
「カーテン」の向こうに隠れている男を――そしてその男を操っている者の正体を暴くジャーナリズムが、ない。
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寓話の「カーテンに隠れていた男」はネブラスカからの文無し男だが、同じネブラスカのオマハに住む、世界トップの大資産家(大慈善家)、実在の「オマハの賢人」こと、ウォーレン・バフェット氏の、アイロニーをこめて語ったコトバが、いまアメリカで再び話題になっている。⇒ http://www.nytimes.com/2006/11/26/business/yourmoney/26every.html http://host.madison.com/ct/news/opinion/column/dave_zweifel/article_4741b42c-cfd9-5904-84ff-eac61f661fd4.html
“There’s class warfare, all right, but it’s my class, the rich class, that’s making war, and we’re winning.”
「そう、階級戦争が続いているんだ。私が属する階級がね――リッチな階級がね、戦争を仕掛けているのさ。そして、私たちが勝利を収めている」
「階級戦争(class warfare)」……穏やかな言い方ではない。しかし、実態を突いた正確な表現ではある。
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「オズ(Oz)の魔法」の呪縛を解き、「幻想」をふりはらって、バフェット氏の言う「階級戦争(class warfare)」の視点に立てば、今、進行しつつある事態の、真実の姿が鮮明に見えてこよう。
私たちが、「黄金の十字架」による磔刑(それは「黄金バブルの崩壊」によって現実化するだろう……)に処されないうちに、一方的な民衆の負け戦に終止符を打つ、新たな政治・経済・金融政策が登場しなければならない。
Posted by 大沼安史 at 09:11 午後 3.コラム机の上の空 | Permalink
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