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2010-09-17

〔いんさいど世界〕 ティク・ナット・ハン師の言葉

 私が自転車で、仙台の荒浜海岸(深沼)に出かけ、遅い海水浴と日光浴を楽しんだのは、つい2日前、おととい15日のことだ。

 海に入って驚いた。9月半ばなのに、生温い。

 仙台の荒浜は、湾にあるのではなく、太平洋の外海に面した海岸。その名の通り、波の荒い浜なのに。

 打ち寄せる波が生温い。

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 ことしの夏を私は――軟弱な性格のくせに(弱虫なくせに)、変に意地っ張りな私は、一度もクーラーをつけずに過ごした。扇風機も回さず……。

 「地球温暖化」に対する、一匹のエイプ……老・人類の、ゼロに等しき、はかない抵抗である。

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 でも、正直なところ、夏はこたえた。自宅で、根をつめた翻訳の仕事をしていたものだから、それもあってくたびれ果てた。

 クーラーのスイッチを押そうと、(とくに夕方)何度、誘惑にかられたことか……。
 
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 そんな折のことだった。

 環境報道で世界をリードする英紙ガーディアン、8月26日付の電子版に、ベトナム出身の禅僧、ティク・ナット・ハン師(Thich Nhat Hanh 釈一行)に対するインタビュー記事、「気象変動と戦うジャーナリストと組織の役割」――が載っていた。

 そのタイトル(「ジャーナリストの……」)にひかれるまま、私は暑さを忘れ、その記事を読んだのだ。⇒ http://www.guardian.co.uk/sustainability/blog/sustainable-consumption-zen-buddhism-csr

 (私は25年、新聞記者をやった人間だから、61歳になった今でも、自分を「聞屋(ブンヤ)」の端くれだと思っている。だから、こういうタイトルの記事を目にすると、反射的に読んでしまうのだ)

 もちろん、私はティク・ナット・ハン師(短く、「サイ」師とも呼ばれる)に、かねてから関心があり、そのせいもあって、30度を超える猛暑の中、そのインタビュー記事と、関連する同紙の付属記事(⇒ http://www.guardian.co.uk/sustainability/blog/sustainable-consumption-zen-buddhism-csr )を読み通したのである。
 
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 「サイ師」こと、ティク・ナット・ハン(Thich Nhat Hanh 釈一行)は、来月、84歳を迎えられる、臨済宗の禅僧。

 出身地のベトナムで、ベトナム戦争に反対する平和運動に携わり、あのルーサー・キング牧師にも大きな影響を与えたことでも知られる人だ。(カトリックのトーマス・マートンとも親交があった)

 アメリカやドイツに仏教コミュニティーを広げ、フランス・ドルドーニュ地方に開いた「李(すもも)の村」(Le Village des Pruniers プラム・ヴィレッジ)を拠点に、活動を続けている。

 Wiki ⇒   http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%B3

 
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 そんな「サイ師」のインタビューが英紙ガーディアンに載ったのは、師が説教と修養会のため、訪英したからだが、ロンドンでの説教には数千人が、ノッティンガム大学での5日間の修養会には1000人近くが参加したというから驚きである。

 (師の訪英については、英紙インディペンデントも、大きく取り上げている。 ⇒   http://www.independent.co.uk/environment/green-living/zen-and-the-art-of-saving-the-planet-2048029.html )
 
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 サイ師の訪英に対し、なぜこれほど人々の関心が集まったか?

 それは先ほども少し触れたように、サイ師が世界の人々に対し(そして、ジャーナリストに対し)「気候変動」と戦うよう求めているからだ。

 ガーディアンのインタビュー記事は、サイ師の信じるところを、こう書いていた!
 「ジャーナリストは気候変動の問題について書くだけではいけない。自分が目にしたい〈変化〉に、自分がなることが大事なことだ」

 …… it is not enough for journalists just to write about the issue of climate change, but that it is important they become the change they want to see.

 このくだりを読んだ以上、変に意地っ張りな私としては、最早、クーラーをつけるわけに行かなかったわけだ。
 
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 それにしてもサイ師こと、ティク・ナット・ハン師の(ガーディアン紙、ジョ・コンフィーノ記者に対する)言葉は心に染み透る。そのいくつかを、同紙のインタビュー記事から紹介しよう。

 ○ それは(悟り、覚醒)は、「波」が「水」を自分の外側にあるものではないことを知ったときに起きるようなものなのです。
 It is like when the wave knows that water is not outside of her.

 このまま、その通り覚えてしまいたくなる、実にシンプルで、実に深い言葉だが、この前段でサイ師は、こうも指摘している。

 「西洋の精神的な危機こそ、私たちが今直面している多くの苦難の原因です。私たちの神、及び神の国を自分たちの外側に、さらには遠い先に置いてしまう二元論が原因なのです。だから、私たちは神というもののほんとうのあり方を知らない。神は、いま、ここに、私たち一人ひとりの中にいるのです。だから、私たちは、正しき場所へ、私たち自身へ戻らなければなりません……(それは(悟り、覚醒)は、波が水を自分の外側にあるものではないことを知ったときに起きるようなものなのです)」と。

 ○ 神の国を正しき場所に置けば、ここで、いま幸せに生きることをできることを示すことができます……もし私たちが絶望と怒りを産み出すことを止めれば、「大気」を再び健康なものにすることができるでしょう。

 ○ 地球を救う問題のもうひとつの側面を見る必要があります。環境を二酸化炭素の用語で語るだけでなく、私たちが生きている「有毒な大気」としても見る必要があります……私たちは精神的な汚染の問題についてもっと語らなければなりません。

 ○ 私たちは自分たちがコントロールできない(資本主義という)システムをつくってしまいました。それは私たちの上にのしかかり、おかげで私たちはその奴隷と犠牲者になってしまったのです。

 ○ 集団的な覚醒がない限り、破局は来ます……もし、心に平安を抱き、受け容れることができれば、何事かを静かになすことができるでしょう。絶望に囚われていては、そこに希望はないのです。

 ○ もし私たちが集団的な覚醒を生み出すことができれば、地球温暖化問題を解決することができます。私たちはともに、この種の悟りを呼び覚まさなければならないのです。
 
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 地球環境を守る仏教…………サイ師の言葉に(私もまた)ことさら大きな共感を覚えるのは、私が一人の日本人のせいなのか、それとも、クーラーなしの酷暑に耐え切ったせいなのか?――

 欧米では、サイ師こと、ティク・ナット・ハン師が書いた、The World We Have – A Buddhist approach to peace and ecology(私たちの世界――平和とエコロジーへの仏教徒としてのアプローチ)という本が評判を呼んでいる。で、私も早速、注文を出したところだ。
 
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 遂に「熱中症の夏」をやり過ごした、私の机の上の風鈴が、ようやく涼しげに鳴っている。

 間もなく、お彼岸。

 正気を取り戻したような、涼しい初秋の風を窓から通し、私たちもまた、サイ師の静かな言葉にひたることにしよう。

  It is like when the wave knows that water is not outside of her.

そう、たしかにその通り。水の分子である私もまた、集団的な覚醒――悟りの波の一粒でありたいと願う…………。
 
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 最後に、師の英語の詩をひとつ。

 Earth Touching Poem  (抜粋)

Here is the foot of a tree.
Here is an empty, quiet place.
Here is a small sitting cushion.
Here is the cool green of the grass.
My child, why don’t you sit down?

Sit upright.
Sit with solidity.
Sit in peace.
Don’t let your thoughts lift you up into the air.
Sit so that you can really touch the Earth
and be one with her.
You may like to smile, my child.
Earth will transmit to you her solidity,
her peace, and her joy.
With your mindful breathing,
and your peaceful smile,
you sustain the mudra of Earth Touching.

Your diligent awareness of your breathing
will keep you in touch with the Earth.
Walk as if you were kissing the Earth with your feet,
as if you were massaging the Earth.
The marks left by your feet
will be like the emperor’s seal
calling the Now to come back to the Here;
so that life will be present,
so that the blood will bring the colour of love to your face,
so that the wonders of life will be manifested,
and all afflictions will be transformed into
peace and joy.

 Thich Nhat Hanh

 from ‘Call me by my True Names’

 Read more:  ⇒ http://www.mindfulnessretreats.org.uk/blog/2010/08/earth-touching-poem-extract/#ixzz0z78p8ybz

〔参考〕

⇒ http://www.meditationfrance.com/enseigne/hanh.htm
          http://www.mindfulnessretreats.org.uk/index.php

    http://www.plumvillage.org/

Posted by 大沼安史 at 10:05 午前 1.いんさいど世界 |

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