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2010-09-23

〔いんさいど世界〕 エメラルドの海 波高し 

 菅直人が小沢一郎に勝利し、政権を獲得する政局の中で発生した、「尖閣諸島付近海域〝日中衝突〟事件」が、両国間の歴史の悲劇の記憶を呼び覚ますように、激しいうねりとなって渦巻いている。

 日本の海上保安庁の「巡視船」と、中国の「漁船」が尖閣諸島最南端、久場島沖で〝衝突〟したのは、民主党党首選(9月14日)のちょうど一週間前の同月7日のことだ。

 衝撃波は、政治的なツナミとなって、日本を襲った。第一の波は、「中国寄り」の小沢一郎に打撃を与え、第二の波は、「沖縄」の米海兵隊・辺野古移設問題から、本土の「国民」の目を逸らした。

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 中国の「漁船」と〝衝突した〟日本の海上保安庁の「巡視船」とは、もちろん普通の船ではない――貨物船でもなければ、釣り船でもない。

 「ジューン海軍年鑑」に掲載された、れっきとした「軍艦」である。実弾を発射する砲を装備している武装艦である。

 米国で言えば沿岸警備隊の艦艇。沿岸警備隊は海兵隊などとともに「米軍」の一部だが、日本の沿岸警備隊である海上保安庁は国土交通省の所管である。

 つまり、世界的な基準では「軍艦」である「巡視船」が、中国の漁船に〝衝突〟した!

 当時の状況はどうあれ、この点はまずもって確認しておかなければならない重要なポイントである。

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 次に問題なのは(検証されるべきは)、国土交通省(海上保安庁)は、現場の「巡視船」に対し、どんな指示を出していたか、という点である(遠くから監視するだけであれば、「衝突」はありえない)。

 国土交通省(海上保安庁)が巡視船に対し、体当たり行動をとるよう指示していたとは思われないが、接近して威嚇するよう命令していたなら、問題である。
 そういう事実は無いなら無いで、はっきりしておく必要がある。

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 そして、もうひとつ――。事件発生当時の国土交通大臣は、今回、岡田氏の後をついで外務大臣になった前原誠司氏である。

 日本の「巡視船」による、中国漁船との〝衝突〟事件は、前原(国土交通)大臣の下で起きたことであることも、確認しておかねばならないことだ。

 その前原氏が今、こんどは外務大臣として、この問題に対処している…………。

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 そんな前原氏を、仏紙ルモンドが、「中国との危機を仕切る、日本の〝トニー・ブレア〟」と紹介していた。
  ⇒ http://www.lemonde.fr/asie-pacifique/article/2010/09/21/seiji-maehara-un-ministre-au-c-ur-de-la-tempete_1413908_3216.html

 トニー・ブレアとはいうまでもなく、英国の元首相。

 前原氏に「日本のトニー・ブレア」というあだ名がついたのは、その政治家としての、とんとん拍子の出世(昇進)ぶりと、カメラの前に出ることを厭わない姿勢によるものだと、やや皮肉交じりに、ルモンド紙は書いている。

 もちろん、ここでいう「トニー・ブレア」とは、英国労働党の若き指導者として彗星のごとく現れ、ついには天下をとるに至った、あの目ざましいデビューを飾った当時のブレア氏のことである。

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 ルモンドの記事は、前原氏の生い立ちを含め、その個人的・政治的プロフィルを詳しく紹介してもいる。

 それは多分、この若き(48歳の)日本の民主党の政治家を、菅直人に代わる、日本の次のリーダーと見ているからだろう。

 「憲法9条改正に前向きな」「タカ派の」、ブレアのような輝きを持った前原誠司という政治家が、外務大臣として、どんな手腕を発揮するか、ルモンドは見ているのだ。

 いや、それは(言うまでもなく)ひとりルモンドだけの関心ではない。今や、世界が、マエハラの政治家としての力量に注目していると見ていい。

 首相の座にはついたもののの、ブッシュにたぶらかされ、せっかくの、英国に「第三の道」を根付かせるチャンスを棒に振り、恥辱にまみれて舞台を退かなければならなかったブレアの「二の舞い」を演じるのか――単なる「タカ(faucon フォコン)」として、扇動者としてだけ終わるのか、世界はマエハラを見ているのだ。

 (そしてもちろん、あの不幸な日中間の「歴史」もまた、今回の〝衝突〟の「行方」を見ている…………)

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 尖閣諸島での〝衝突〟に端を発する、日本の国内政局、および日中、日米関係の動きを見ていると、まるで、あの「オズの魔法使い」()のような(さらにそれを操るような)黒幕がどこか(カーテンの向こう)にいて、小沢をつぶし、菅直人でとりあえずつなぎ、最終的に「前原・反中国・親米タカ派政権」を樹立するシナリオを書き、その筋書きを「政治」という舞台の上で着々と進行させているような錯覚にとらわれる。

 そうであってはならない。

 東シナ海はたしかに、美しいエメラルドの海だが、あの「オズの魔法使い」の潜む、きらびやかな権力の都、エメラルド・シティー(ウォールストリートのアレゴリー)のような、欺瞞と操作の海にしてはならない。

 そういう美しく――しかし危険な、エメラルドの魔の海に船出したことを、前原氏は覚悟しなければならないのだ。

 トニー・ブレアのように、権力のセイレン(サイレン)に魅せられ、呼び込まれてはならない。 

 〔注〕 「オズの魔法使い」の政治的な(経済的な)「意味」については、以下を参照。

 ⇒ http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/magazine/7933175.stm
 

Posted by 大沼安史 at 10:00 午前 1.いんさいど世界 |

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