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2010-09-26

〔いんさいど世界〕 「領土」キャンペーンに振り回されてはならない 中国の若手作家、ハン・ハン氏の「醒めた目」に学ぶ 

 サンケイ新聞の「主張―中国人船長釈放 どこまで国を貶(おとし)めるのか」(  ⇒ http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100925/plc1009250301005-n1.htm )を読んで、「戦時中」にタイム・スリップしたような違和感を感じた。

 「日本が中国の圧力に屈した。千載に禍根を残す致命的な誤りを犯したと言わざるを得ない」

 「……釈放したことは事実上、刑事訴追の断念を意味する。国際社会も日本が中国の圧力に屈したと判断する。これほどのあしき前例はなく、その影響は計り知れない」

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 「日本が中国の圧力に屈した……」――ほんとうにそうだろうか?

 そんな疑問が湧いたのはほかでもない。24日ニューヨーク発のAFP電を読んだせいだ。 ⇒ http://ca.news.yahoo.com/s/afp/100924/usa/china_japan_diplomacy_dispute_un_us_5

 米政府が、日本の中国人船長の釈放決定を「支持」したというニュース。

 その「支持表明」の言い回しが気になって、疑問につながったのだ。

 米国務省のスポークスマンのフィリップ・クロウイー氏が記者会見で、こう言った。

 "We think this is the right decision。"

 「正しき決断だと、われわれは考えている」

 同じAFPの北京電は、よりポイントを衝いた書き方をしていた。
 ⇒ http://news.yahoo.com/s/afp/20100924/wl_asia_afp/japanchinadiplomacydispute

 Reaction in Washington was more positive, with State Department spokesman Philip Crowley welcoming the move as "the right decision".
 
 「ワシントンの反応はより肯定的なものだった。国務省スポークスマンは(釈放を)『正しい決断』と言って歓迎した」

 「正しき決断」をした、と米政府から歓迎された日本!

 ならば日本は結局(正しき決断をせよと迫る)米国の圧力に屈した、ということではないのか?

 例によって、千載に禍根を残さない?、致命的な誤りを犯したとは言えない?、いつものポチぶりを発揮しただけのことではないのか?

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 AFP北京電には、「釈放決定」を、"It was an extremely foolish decision.(非常に愚かな決定)" とする、タカ派の安倍晋三元首相のコメントも紹介されていた。
 (この安倍発言、日本の新聞には出ていただろうか?!……

 これと米国務省スポークスマンのコメントを対比させることで、「三角関係」がひとつ、際立つ。

 日本のタカ派が中国の圧力に屈した「愚かな決定」だとする「釈放」を、タカ派が「従属」するアメリカは「正しい決断」と褒めそやしているのだ。

 安倍氏もサンケイの「主張」子も、「領土問題は内政問題である。日本の内政に干渉するな」と、米側に抗議すべきだと思うが、いかがなものか。

 アメリカに対しても、対中国に負けない、圧力に屈しない態度をとってもらいたいものだが、いかがなものか。

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 さて、「圧力に屈してはならない」だとか――「愚かな決定だった」とか、なんとも勇ましい、大言壮語にあふれ返った昨今の日本のマスコミの論調だが、フランスのルモンド紙のブログで、中国のある若い作家の発言を読んで、久しぶりに清涼な読後感にひたることができた。(⇒ http://www.lemonde.fr/asie-pacifique/article/2010/09/22/crise-sino-japonaise-le-blogueur-han-han-raille-le-nationalisme-de-facade-de-pekin_1414438_3216.html#ens_id=1412262 )

 ルモンドの「日中危機:ブロガー、ハン・ハン、ペキンのナショナリズムの鎧を嗤う」で紹介されたハン・ハン(韓寒)氏(28歳)は、人気作家でありレーサーでもある、中国新世代の旗手だ。

 上海での中学生の頃、作家デビューを果たした人で、そのブログへのアクセス数は4億5千万件にも達している。Wiki ⇒http://en.wikipedia.org/wiki/Han_Han

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 ハン・ハン氏の発言(英訳されたものや、発禁となった中国語ブログがネットに転載され出回っている)を読んで感心したのは、国家権力のキャンペーンに踊らされない、その確かな「醒めた目」である。

 ハン・ハン氏は、中国の権力者専用の迎賓館、北京の「釣魚台」で半日でも過ごそうものなら、人は誰でも(釣魚島=日本名・尖閣諸島は中国領だというキャンペーンを奉じる)別人となって出て来るものだ――などと皮肉をきかせながら、領土問題は国家権力の問題であり、われわれ個人の問題とは関係のない問題だ(なにしろ中国では土地はすべて国家有だから)と指摘し、国家権力による操つられた「集団舞踊」を批判。

 返す刀で、「私たちは遠く離れた領土ではなく、私たち自信の問題を考えるべきである。釣魚島問題でデモに参加せよ。というなら、よろしい、参加しようではないか。しかし、そのとき一緒に、家の強制撤去に抗議して焼身自殺した女性や、当局を批判して拘束された作家のために私がデモするのでなければ意味はない(以上、意訳)」とさえ言い放っているのだ。

 国家権力と対峙する、この断固たる姿勢は凄い。

 ここには「国家権力」を超えた「個」がある!
 国が貶められたと言って騒ぎまくる、どこかの国には(それほど)
いない、毅然たる「人」がいる。

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 ハン・ハン氏は13日のブログで、日本は中国人船長を「10日」拘束し、「9日」間にわたる中国側の抗議のあと釈放されるだろう、などと、覚めた目で見通しを書いていたが、それに違わない展開の末、事件は一応の決着を見た。

 国家権力による動員、キャンペーン、世論操作から超然としてある、ハン・ハン氏に示されたような、個人としての冷静な批判的態度。

 これこそ、私たち日本人が今回の尖閣列島事件から学ばなければならない、最も大事なポイントかも知れない。

 ハン・ハン氏のいうように、「領土」問題は国家権力の問題であって、私たちが今、生きる場の問題ではない。

 日本には日本の――学校や職場のいじめ地獄、貧富の拡大、弱者の切り捨てといった深刻な問題が、目の前に山積しているのだ。

 その現実の問題から目を逸らすナショナリステッィクな「領土」キャンペーンに対し、私たちもまた、ハン・ハン氏のような「醒めた目」で対抗する必要があるだろう。 

Posted by 大沼安史 at 03:35 午後 1.いんさいど世界 |

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