〔いんさいど世界〕 日本の政治家の言葉 アメリカのコメディアンの言葉
「あかんなほんとに政権」が最近、異常なほど「敬語」を連発し出した。
これはどうしたわけか?
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〔サンプル その1〕 「中国はお変わりになっていなかった」(仙谷官房長官)
サンケイによれば、仙谷官房長官は29日の記者会見で、尖閣列島周辺海域での中国漁船による「体当たり攻撃」事件にふれ、中国は……近代化され、随分変わってきていると認識していたが、あまりお変わりになっていなかった」と述べたそうだ。
同長官は28日の会見でも、東シナ海・ガス田付近を航行中の中国の海洋調査船について「周辺にいらっしゃることは確認している」とお述べになっていたそうだ。
⇒ http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100929/plc1009291808012-n1.htm
〔サンプル その2〕 「報告を仙谷官房長官からいただいている」(菅直人首相)
時事通信によると、30日の衆院予算委で、菅首相は、海上保安庁が撮影した衝突時のビデオ映像について「見ていない。報告を必要に応じて仙谷官房長官からいただいている」と答弁した。
⇒ http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&rel=j7&k=2010093000156
部下の官房長官から報告をいただいている内閣総理大臣、菅直人クン!
大事な「事件」なのに(もう半月にもなるのに)、「ビデオを見ていない」だと……!
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ついでに宮崎県の東国原知事の、29日の「再出馬せず」表明の際の発言も、ここで確認しておく。
「出馬をさせていただかない」――
共同通信は「独特の言い回し」と報じていたが、いくら「元コメディアン」でも、ずいぶんとひねくれた言い方ではある。
⇒ http://www.47news.jp/news/2010/09/post_20100930093152.html
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でも、この連中、どうしてこんなに「敬語もどき」を連発するのだろう?
僕の耳には、ずいぶんと日・中・宮崎=国・県民を「舐めた」物言いだな、としか聞こえないのだけれど……。
(そういえば、サルコジ政権の閣僚として一時、司法大臣をつとめたフランスのラチダ・ダティって保守の女性政治家〔バービーちゃんてあだ名の持ち主だそう!!!〕も、とんだ失言をしていたっけ。 ⇒ http://www.lexpress.fr/actualite/politique/rachida-dati-parle-un-peu-trop-vite-et-dit-fellation-au-lieu-d-inflation_922568.html
「早口で言ったから、つい舌が滑った」とか。どちらも語源的には根を同じくするらしいので、取り違えても、仕方ない面もあるが……。
ジャック・デリダによれば、cap(岬)は、キャピタリズム〔カプ・カピタリスム ともに男性名詞〕と語源的に通底するそうだ……。産業化・近代化の岬=ヨーロッパ半島! そこに生れた資本主義が、岬を超え、大洋を越えて、全世界に広がり、今、グローバルな規模で猛威を振るっている。最後の猛威!……)
この男バービーどもめが!…………
それに、「逃げ」もあるような気がする。政治家として真正面から取り組む姿勢がみられない。責任を取ろうとしない。
「政治」は(――そして「コメディー」もまた)、コトバが命のはず。国会も県議会も、真剣なコトバが語られる場所であるはず。なのに、このザマ。
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さて、ところ変わって、ワシントン――。アメリカの連邦議会・下院。
その下院の聴聞会に、人気コメディアンのステファン・コルバート氏が出席し、メキシコからの季節農業労働者を支援する証言を行った。
24日のこと。その証言をネットのビデオで視聴して、そのコトバの力に――圧倒された。⇒ http://www.indecisionforever.com/2010/09/24/stephen-colbert-testifies-before-congress/
⇒ http://news.yahoo.com/s/ap/20100924/ap_on_en_tv/us_congress_colbert
コルバート氏は、UFW(農業労働者連合)の呼びかけにこたえ、ニューヨーク州内の農場でまる一日、メキシコからの季節労働者に交じって、豆やコーンの収穫作業に従事したことがある。
その体験を踏まえ、議員らに向かって、氏は真正面からこう要求した。「腰を曲げ、かがみこんでの重労働。ほんとに辛かった。土が地面にあるなんて思いもしなかった。この国は人間を月の送り込んだ国だ。地面をせめて腰の高さに引き上げることくらいできるだろう。予算をつけなさい」と。
「アメリカの農場は、人手不足でどんどん閉鎖に追い込まれてる。メキシコからの季節労働者はアメリカ人のしたがらない労働をしてくれている。政府はもっとビザを発給し、季節労務者の人たちの労働条件を改善すべきだ。待遇をよくすれば、アメリカ人だった農地で働くようにようになる……」
「私は自由市場論者だが、市場の見えない手のおかげで、アメリカの農業はメキシコに出ていっている。市場の見えない手は、豆を摘み取りたくないらしい……」
「(遺伝子操作でGM農産物を開発している)科学者たちには、自分で収穫する植物をつくってもらいたい。GMの研究者には、(農作業の手間を省くため)人間と食物のアイノコをつくってもらいたい。その方が簡単だから……」
「アメリカの農場は人手不足にあえいでいるが、11月からは(中間選挙で破れ、失職した)民主党員がたくさん、働き出すはずだ……」
風刺の効いた、痛烈な批判パンチの雨あられ!
締めくくりの文句がすごかった。「私は、私の証言を受け、あなた方議員のみなさんが、与野党一緒になって、アメリカ人の最善の利益のために働いてくれるものと信じている。みなさんがこれまで、常にそうだったように(会場にわきあがる大爆笑!)」
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この下院聴聞会と日本の衆議院の予算委員会の、あまりにも明らかな違いは、何より「言葉」の差にあるような気がする。
聴聞会で発言したコルバート氏はたしかに超一流のコメディアンだが、アメリカの政治家だって(総じて)まだ、日本の政治家ほど言葉の力を失っていない(もちろん、あくまで相対的な話だが……。これはオバマと菅直人を比べれば、すぐにわかることだ。ミゾユウで、ウズ中な連中は、比較にもならない)。
仮に「米中」の艦船が東シナ海で「衝突」する事件が起きた時、アメリカの大統領が、「現場のビデオは(半月経ったいまなお)見ていません。(大統領首席補佐官から)報告をいただいている」と言い、その首席補佐官が「中国はお変わりになっていなかった」と、わけの分からない無責任な言い方をしたら、その政権はその時点でもう終わりである。補佐官は即刻「クビ」だし、大統領の「再選」もない。
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サンケイ新聞によれば、菅首相は30日の衆院予算委で、こう語った。
「今回の事案について、国民の皆さんにいろいろと心配をかけ、ご意見をいただいたことに対し、おわびを申し上げたい」
⇒ http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100930/plc1009300920007-n1.htm
「国民の皆さんに……心配をかけ、ご意見をいただいたことに対し、おわびを申し上げたい」????
また、だ。これまで常にそうだったように。
あかんなあ~、ほんとに!
Posted by 大沼安史 at 05:33 午後 1.いんさいど世界 | Permalink | トラックバック (0)